日本共産党 田村智子
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【14.04.03】文教科学委員会 学校でのアスベスト問題について

○田村智子君 学校でのアスベストの問題についてお聞きいたします。
 大阪府立高校の理科、化学の授業を担当していた教員が中皮腫で死亡したのは学校での理科実験によるアスベスト暴露が原因であるとして、今年一月、地方公務員災害補償基金大阪府支部審査会は公務上災害と認定をしました。公立学校の教員で理科実験によるアスベスト被害が公務災害と認められたのはこれが初めてのことです。
 それだけでなく、教員でアスベスト起因の公務災害認定は、二〇一〇年に一件、今年に入って二件、現在まで僅か三名となっています。公務員全体で見ますと、最初のアスベストの公務災害認定というのは一九九一年だったと。このことを考えても、最初の認定も非常に遅いと感じます。
 では、アスベストによる健康被害は教員の中ではほとんどないのかということを見なければなりません。公務災害ではなくて石綿救済法によって救済を受けた教員は何名いるのか、そのうち中皮腫は何名か、環境省、お答えください。

○政府参考人(清水康弘君) お答え申し上げます。
 今の御質問でございますが、石綿健康被害救済制度で平成二十三年度末までに認定され給付を受けることになった六千二百四十五人を対象に、職業歴なども含めたアンケート調査を行っております。その結果によりますと、対象者六千二百四十五人中五千四百七十六人から回答が寄せられ、そのうち百三十九名の方が職業分類で教員と回答されております。その百三十九人中、中皮腫で認定された方が百三十七名ということでございます。

○田村智子君 アンケート調査ですから、これは少なくとも六年間で百三十九人がアスベストによる健康被害だとして救済認定をされたということになります。
 総務省に確認をします。
 公立学校の教員で、アスベスト起因の疾病だとして公務災害の申請が行われた件数及び認定がされた件数はどうなっているでしょうか。

○政府参考人(三輪和夫君) お答え申し上げます。
 公立学校教員のうち、アスベストによる中皮腫を発症いたしましての公務災害の認定の申請ということでございます。平成十七年度から二十五年度の請求件数は十八件でございます。また、この間、公務災害が認定をされたのは三件という数字でございます。
 以上でございます。

○田村智子君 これ、石綿救済法による救済認定というのは百三十九名と、これ実は二〇〇六年から二〇一一年度の六年間なんですね。この六年間で見ると、中皮腫を公務災害として申請した件数は先ほどの十八件のうち僅か十件、これだけの乖離があります。認定されたのも三件ですが、実は本省協議ではいずれも公務外とされて、審査請求、再審査請求を経ての公務災害が認められたというものなんです。
 中皮腫というのは基本的に石綿暴露が原因で、その大半が職業性暴露によるものと考えられています。このことは環境省のパンフレットでも、石綿に暴露される機会は職業性のものが最も多い、職業性石綿暴露には直接的な暴露もあれば間接的な暴露もある、中皮腫の場合には間接的な暴露を受けた者でも発症が見られることがあるなど、環境省のパンフレットでも書かれているところなんです。これはつまり、家族で石綿を扱う人がいて、そしてその人が持ち込んだ衣服に付いていた石綿などで暴露してしまった家庭内暴露とか、あの尼崎のクボタの事案のようにアスベスト飛散が地域的に生じていたと、こういうことが否定されるならば業務起因性があると判断すべきだというふうに私は捉えています。
 学校では一九七五年に吹き付けアスベストを原則禁止としましたが、五%程度のアスベストが含まれたロックウールは一九八〇年頃まで使用されていたことが分かっています。学校のアスベストが大きな問題となったのは一九八七年で、当時、文部省は実態調査を行いましたが、最も石綿が使われていた給食室や廊下、放送室などは調査の対象とはせず、対策も、吹き付けアスベストの飛散防止を求めたという程度だったんです。
 文部科学省による本格的な調査や学校設置者に吹き付けアスベストの除去が義務付けられたのはつい最近、二〇〇五年のことになります。理科の実験で使う石綿付金網の販売取りやめも一九八八年四月頃とされていて、一体いつまで使用されていたかというそういう実態調査、分からないんですね。
 こうした実態を考えれば、教員の中皮腫のほとんどが公災申請すら、公務災害申請すらされていない、申請がされてもほぼ全てが公務外とされている、これが現状です。それは、その大半が職業暴露によるものと言われる中皮腫の取り扱われ方としては私は極めて不自然なものだと思いますが、大臣の見解をお聞かせください。

○国務大臣(下村博文君) 私も、二〇〇五年、義務化された直後、当時文部科学大臣政務官をしておりまして、北区の小学校のアスベスト除去、そしてアスベストでない、これは天井板でしたが、設置するという現場を見に行ったことがございます。
 そもそも、この石綿健康被害救済法でありますが、これは、石綿による健康被害の特殊性に鑑み、石綿による健康被害を受けた者及びその遺族に対し、医療費等を支給するための措置を講ずることにより、石綿による健康被害の迅速な救済を図ることを目的としたものであると環境省から聞いております。一方、公務災害の認定は、公務により発症した被害者を救済することを目的としたものであり、その救済する目的が異なっているという部分がございます。
 教職員を含めた地方公務員全体の公務災害の認定については、地方公務災害補償基金が運用しているところであり、文科省としては答える立場ではありませんが、教員が安全な環境で勤務ができるよう、公務災害の認定が適切に行われることは重要なことであるというふうに考えております。

○田村智子君 もうちょっと一歩踏み込んで御答弁いただきたかったんですけれども、石綿救済法での救済というのは、これは、労災では救えない方々、公務災害でも救えない方々が出ちゃうわけですよね。雇われていないような一人親方とかこういう方は労災にも入れない。で、どうするんだと。で、石綿救済法というのができたわけですよ。だから、労務が原因、公務が原因であるものは当然、労災や公務災害によって救済するのは当然のことだと思うんです。教員についてそれがなされているのかということをやっぱりよく見なければいけないと思います。
 先ほど紹介した三件も、中を見てみると、滋賀県の中学教員は、これ最初申請をして支部段階での判断は石綿環境下で勤務していたことを認めながら、業務起因性を否定しているんです。大阪の理科教員も、石綿を用いた実験による暴露を認めながら、業務起因性を否定したんです。そしてもう一件も、石綿含有石材などを使用して増築を行っていた小学校に勤務していたと、このことを認めつつも、その状況が明らかではないからということで公務災害とは認めなかった。これら全てが審査会で判断が覆ったということなんです。
 支部段階で石綿暴露についての判断は、これ審査会の中では完全に否定しています。業務起因性あるんだということで認めています。公務災害補償基金では、実際に審査に当たる専門医も含めて、中皮腫は石綿の職業性暴露によるものが大半であるということ、あるいは低濃度暴露でも中皮腫に発症する場合があるということ、これについての認識が余りに不十分であるがためにこのような結果になっているのではないかと思うんですが、総務省の見解をお聞きします。

○政府参考人(三輪和夫君) お答え申し上げます。
 地方公務員災害補償制度におきましては、石綿による疾病の公務上外の認定に当たりましては、労働者災害補償保険制度におきます厚生労働省の専門家検討会の結果に基づきまして同省から発出をされました「石綿による疾病の認定基準について」と、この基準に準じて判断をしているところでございます。
 また、認定に当たりましては、各地方公務員災害補償基金のそれぞれの支部におきまして、今申しました基準に基づきまして個別事案ごとに被災職員のアスベスト暴露作業への従事の有無、あるいは従事の状況、期間、作業の環境、時間、そしてまた被災職員の既往歴や家族歴、勤務歴等々、こういったことにつきまして調査を行いました上で、医学的な所見を踏まえた上での公務上外を判断をするということにいたしているところでございます。

○田村智子君 これ、私は、石綿救済法での救済の件数と見ても余りに乖離があるということは、是非総務省の中でも厳しく検討していただきたいというふうに思うんです。
 これ、欧米では、教員はアスベスト暴露の危険職種とされていて、実際に教員の中皮腫発生増加というのが報告をされています。この中皮腫というのは、アスベスト吸っちゃってから、その潜伏期間二十年、五十年と言われているんですよ。二十年から五十年。だから、日本でも、教員についてもこれから中皮腫など石綿による疾病が増加する可能性が否定ができないわけです。そのときにちゃんとその原因がどこにあるのかということが認定されなければいけない。
 これ、建築の働いている皆さんもそうなんですけど、どこで暴露したのかという証明がなかなか難しい。だから、建築で働いている方でいえば、一年建築関係で働いていたことが認められれば、もうどこではいいんですよ、中皮腫を認定するんです、それによるものだということで認定するんです。教員も異動があります。その時々で、いつ学校が改築されて、石綿使っているボードが破壊されて飛散していた可能性があったりするわけですよ。その学校がどれほどの老朽化だったかなんということは、一人一人の教員がその資料を持つなんということはまず難しいわけです。
 それだけに、私は、是非大臣に文科省として検討をお願いしたいことがあるんです。環境省では、既に百三十九名の方を石綿が原因だということでの救済を行っています。ならば、その事例を文科省としても検証をするなど、学校での石綿暴露についての実態の調査、これを進めることが必要になってくると思うのですが、大臣の見解をお聞かせください。

○国務大臣(下村博文君) 教育委員会は所管の学校の教職員の健康を保護する必要があり、文科省では、平成十七年度から、学校施設等における吹き付けアスベスト等の使用実態調査を毎年実施するとともに、アスベスト対策に関する留意事項を周知し、学校施設等における適切なアスベスト対策、要請しているところでございます。
 公立学校の教職員の石綿による健康被害の実態については、石綿健康被害救済法を所管する環境省、厚労省、地方公務員災害補償法を所管する総務省から情報提供を受けて、引き続き把握に努力してまいりたいと思います。

○田村智子君 最後、一言だけ。

○委員長(丸山和也君) 田村君、時間です。

○田村智子君 はい、一言だけ。
 これは、その場合に子供たちもいたということなんですよね。だから、教員がどういう石綿暴露の実態があったかということを調べることは、今後、子供たちに対しての健康被害が出るのかどうかということを考える上でも非常に重要になってきます。
 また今後もこのアスベストの問題を取り上げたいと思います。
 終わります。