【13.12.03】外交防衛委員会 障害者権利条約批准について
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
今日は、障害当事者また関係者の皆さんが七十名以上この議場で傍聴に来られました。障害者権利条約の批准が、皆さんが本当に直面している障壁を具体的に取り除く力になると、このことを願ってのことだと思います。私もその立場で以下質問をいたします。
まず、条約の第三十三条、国内における実施及び監視についてですが、先ほど民主党の福山委員の質問に、障害者権利条約の実施状況について監視をする枠組みというのは障害者政策委員会のことだということが明確に御答弁がされました。この条約は第三十三条の二項で、自国の法律上及び行政上の制度に従って枠組みを置くということを求めています。それでは、障害者基本法の中で、障害者政策委員会の役割として障害者権利条約の実施の促進、保護、監視というような内容を今後加えるということが求められてくるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(岩渕豊君) 障害者権利条約第三十三条の二に言う条約の実施を監視するための枠組みとしては、内閣府に設置された障害者政策委員会がこれに当たるものと考えております。
障害者、障害者基本法第三十二条第二項第三号におきまして、障害者政策委員会は、障害者基本計画の実施状況を監視し、内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告することを事務とすることとされております。
これは、我が国における障害者権利条約の実施については、国内の障害者施策をもって行われることとなるところ、同条約の国内実施状況の監視は、我が国の障害者施策の方針の根本を成す障害者基本計画について、それが同条約の趣旨に沿って実施されているかを監視することによって行われることになるという考え方に基づき規定されたものでございます。
障害者基本計画は、障害者施策全般にわたる事項について、総合的かつ包括的に定めるものであることから、障害者政策委員会は障害者基本計画の監視を通じて障害者権利条約の実施状況を幅広く監視することが可能であると考えております。
○田村智子君 端的にちょっとお聞きをしたいんですけれども、法解釈として障害者権利条約の実施状況を監視し、必要な意見を総理大臣や関係大臣に述べることができると、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。
○政府参考人(岩渕豊君) はい。現在ある法律に沿って、その解釈に従ってそのようにできると考えております。
○田村智子君 障害者政策委員会がその意見を述べるというのが大臣止まりということにはならないと思うんです。
そこで、これも確認なんですけれども、そうした意見は行政各部、支部局など、支分局などに対しても必要な調査を行い、意見を述べることができるというふうに解釈できると考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(岩渕豊君) 障害者基本法第三十二条第二項第三号において、障害者政策委員会は、障害者基本計画の実施状況を監視し、内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告することを事務とするとされております。
御指摘の行政機関の部局や地方支分部局については、最終的な指揮監督権限は各行政機関の長たる関係各大臣にあることから、法制上は関係各大臣に対する勧告権限を規定すれば足りるものと考えております。
また、障害者政策委員会には、関係行政機関の職員から成る幹事が置かれておりまして、適宜、関係行政機関にも説明や質疑応答に対応いただくなど審議の状況を逐次共有しているところでございます。
また、いわゆる審議会等につきましては、一般的に審議会等は各省庁の施策の実施に当たって意見を述べるということがその役割であることから、計画の実施状況に対する勧告については、その施策の実施に責任を負う関係各大臣に直接行うこととされており、法制上は個別の審議会等に対して意見を言うことは想定しておりません。その一方で、障害者政策委員会での議論をほかの審議会等で事務局が報告するなどして双方の議論を互いに把握し合うことについては運用として可能であると考えております。
いずれにいたしましても、障害者政策委員会による監視が実効的に施策に反映されるように、適切な事務局運営に努めてまいりたいと存じます。
○田村智子君 今、各行政機関の末端のところまでの意見が届くということは大臣通じてそうなんだというふうにお認めになったんですけれども、審議会についてはちょっと違うような御答弁だったように思うんですね。
ちょっと具体にお聞きをしたいんです。
十一月十一日の第八回障害者政策委員会では、政府から障害者差別解消法の基本方針策定に向けた報告が行われました。この中で、労働政策審議会雇用促進部会での議論が障害者政策委員会に報告をされて、その内容に委員から危惧の声や意見が相次ぎました。そして、その議論を労政審に報告をしてほしいということも求められたやに聞いていますが、内閣府からはそれについての明確なお答えがなかったというふうにも聞いています。
この労政審、労働者政策審議会は障害当事者が入っていないんです。それだけに、障害者の雇用について政策委員会の意見が報告をされるというこの仕組みはとても大切なことだと思うんですね。これ、雇用問題にとどまりません。やはり当事者参加で権利条約に沿って法制度や基本方針が検討されるということは必要ですから、大臣に同じようにこの報告書を上げる審議会の中で、言わば法律の母体になるようなことを審議する審議会の中で、政策委員会の意見が必要に応じて報告されることは必要だと考えますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(岩渕豊君) 御指摘の件につきましては、障害者政策委員会の状況を労働政策審議会に報告する予定はないとまでの発言はなかったものと承知しておりますけれども、先ほど申し上げましたように、例えば障害者政策委員会での議論をほかの審議会等で事務局が報告するなどして双方の議論を互いに把握し合うということについては、運用として可能であると考えております。
いずれにいたしましても、現時点においても、労働政策審議会の事務局と連絡を密にしておりまして、今後とも必要に応じまして、先方とも相談いたしまして、適切な対応を取りたいと考えております。
○田村智子君 これ雇用の問題というのは障害者差別の一つの焦点にもなるようなことですから、是非労政審にちゃんと意見を伝えていただきたいということを求めておきます。
もう一点、政策委員会についてのことですけれども、これ、条約が国内で効力を持ってから二年以内、その後は少なくとも四年ごとに国連の委員会に報告書を提出することになりますが、その報告書は、障害者政策委員会の意見を聴取するだけでなく、監視機関として政策委員会の意見が記述されるものと考えますが、いかがでしょうか。
○副大臣(岸信夫君) 障害者政策委員会がどのようにこの政府報告の作成にかかわってくるかということの御質問だと思います。
本条約の取り扱う問題は多くの省庁にわたるものでございます。報告書の作成に当たっては、事実関係の把握と、また政策指針の両面で、政府部内の十分な連絡調整が必要でございます。その上で、関係省庁の有する資料や見解を政府報告として取りまとめ、障害者権利委員会に提出する役割を外務省が負っておるということでございますけれども、我が国では、この障害者政策委員会が、障害者基本計画の実施状況を監視し、政府に報告いたします。外務省として、この同基本計画を通じて条約の実施に資する意見を同委員会から聴取し、そして政府報告にも最大限反映をしていくということでございます。
○田村智子君 これは、政府の報告書の言わば案が政策委員会に提出をされて、そこで練られるというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
○副大臣(岸信夫君) そういうことではなくて、政策委員会として意見を反映させるのは同基本計画に対する意見でございますけれども、そこを通じまして、条約の実施に関しては、その政府報告にも最大限反映させるということです。ですから、直接的にその報告を受けて、それを委員会に報告するということではないということでございます。
○田村智子君 これ、そうすると、条約の実施状況がどうかということをやっぱりちゃんと監視している機関としての意見は私は報告書の中に書くべきだというふうに思うんですけれども、そうはならないんでしょうか。
○副大臣(岸信夫君) 繰り返しになりますけれども、今おっしゃったその意見につきましてはその報告の中に最大限反映をさせると、こういうことでございます。
○田村智子君 反映させると。ちゃんと基本計画についてだけじゃなくて、法の解釈で、権利条約の実施の監視というのが法解釈で政策委員会の役割だというふうに先ほど御答弁いただいたわけですから、これ是非よろしくお願いしたいと思います。子どもの権利条約などを見ると、もう報告書って各行政機関の施策の寄せ集めみたいな報告書になってしまっている実態を見ても、きっちり実施がどうかという、こういう観点が報告書に入ることを強く求めたいと思います。
次に、この条約実施の監視機関としての政策委員会が機能を果たすための事務局の体制、これはどの部署が担当して、どのような人員体制になっているのか、お答えください。
○政府参考人(岩渕豊君) 障害者政策委員会の事務局は、内閣府政策統括官共生社会政策担当付参事官障害者施策担当及び障がい者制度改革担当室において行っており、関係省庁の併任職員及び非常勤職員を含め十五人体制となっております。
○田村智子君 これ非常勤の方も含めて十五人ということで、障害の多様性ということを考えても、また施策の範囲も広いということを考えても、条約に位置付けられた役割の大きさを考えても、更に機能強化ということを検討すべきだというふうに思います。専門的な人材確保を今後努めていただきたい、弱体化することのないようにと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(岩渕豊君) 障害者政策委員会は、昨年七月に第一回開催して以降、部会や小委員会を含めて十八回開催しておりまして、精力的に御議論をいただいているものと認識しております。今後、障害者差別解消法に基づく基本方針案の作成に向けての議論や障害者基本計画の実施状況の監視を行っていただく予定であり、障害者基本計画においても、障害者政策委員会の円滑かつ適切な運営のために事務局機能の充実を図ることとされたところでございます。障害者政策委員会がその任務を全うできるように、適切な事務局運営に努めてまいりたいと存じます。
○田村智子君 お願いします。
次に、条約二十七条、労働及び雇用についてお聞きをいたします。
ここには、障害者が他の者と平等に労働についての権利を有することを認める、この権利には、障害者が自由に選択し、又は承諾する労働によって生計を立てる機会を有する権利を含むとあります。
障害者の雇用に関しては、ILO第百五十九号、職業リハビリテーション及び雇用(障害者)に関する条約及びその母体となった身体障害者の職業更生に関する勧告、第九十九号の遵守が日本政府にこれまでも求められてきました。しかし、これまで障害者関係団体からは、こうしたILO条約違反の疑いがあるというような指摘が何度も行われてきて、二〇〇七年には、障害者自立支援法の制定も受けて、全国福祉保育労働組合がILO条約違反の申立書も提出をしています。
問題の一つは、自立支援法によって応益負担が導入されたことで、本来無料であるべき職業訓練、職業リハビリテーションに利用料が制度化されてしまった。これは、総合福祉法の下でも仕組みは残されています。ILO第九十九号勧告は、職業訓練や職業リハの期間の経済上の援助を規定して、無料の職業更生施設の提供、生活費の支給、必要な交通費などの支援を行うこととしています。
現に、独立行政法人の高齢・障害・求職者雇用促進機構が行う障害者への職業訓練、これは無料です。ところが、総合福祉法の枠組みでは利用料負担が制度上課されていると。これはおかしいと思うんです。見直しが必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(蒲原基道君) お答え申し上げます。
先生御指摘の高齢・障害・求職者雇用支援機構等の行う公共職業訓練につきましては、職業能力開発促進法に基づきまして、失業者であることに伴う経済的事情を考慮し、その負担を軽くしようとする社会政策的配慮等から、教材等を除きましてその費用が無料となっているということでございます。
一方、ただいまお話ございました総合支援法の関係でございますけれども、この法律に基づきます就労移行支援事業あるいは就労継続支援事業というのは、障害者に対しまして、生産活動の機会を通じて、就労に関する知識及び能力の向上のための必要な訓練、それに加えて、その他生活面のいろんな支援を、サービスを提供するというものでございます。
また、総合支援法の中におきましては幅広く障害福祉サービスが入っておりまして、そうした障害福祉サービスの一環として実施されているということでございますので、そこは他の障害福祉サービスの利用と同様に、利用者も含めて費用の負担をしてもらうということでございまして、そうしたことから、障害者の方々に一定の負担を求めているということでございます。
ただ、実態をこれ見ますと、先生御案内のとおり、障害者の家計の負担能力をよくしんしゃくして負担額を設定するということになってございますし、平成二十二年の四月から、ここの負担額というのは低所得世帯に対してとりわけ引き下げまして、現在、低所得者世帯に属する障害者につきましては負担が無料ということになってございます。現実にも、約九三%と大部分の利用者について負担がゼロという実態になっているということでございます。
○田村智子君 そうしたことも含めて、ILOでは専門委員会が検討して見直しを求めるような意見をまとめているわけですから、権利条約批准は何のためにやるのかということを是非考えていただきたいと思います。
もう一つ、先ほど指摘をしました二〇〇七年の申立て、これを審査したILOの専門委員会は、二〇〇九年に報告書を出しています。その中では、授産施設や小規模作業所で余りに低い賃金、工賃の問題についても検討していて、政府の五年間で倍増という政府計画に注目はしつつも、こう述べているんです。授産施設における障害者が行う作業を妥当な範囲で労働法の範囲内に収めることは極めて重要であろうと思われると結論すると。
さらに、今年五月十七日には、国際社会権規約委員会から、保護施設で働いている障害者に労働基準を適用することを要求すると、こういう勧告も出されています。
こうしたことを受け止めて、権利条約の実施のために検討が必要だと思うんですが、いかがでしょうか。短くお願いします。
○政府参考人(蒲原基道君) 障害者総合支援法の中で、就労継続支援A型という事業所がございます。ここの利用者の方々につきましては、雇用契約に基づいて就労を行っているため、原則として労働基準法等が適用されるということでございます。
一方、就労継続支援B型事業、こちらにつきましては、事業所での出欠、あるいは作業時間、作業量等の自由があり、指揮監督を受けることなく就労することとされていることから、基本的には労働基準法等は適用されませんが、一方で、使用者の指揮監督下にあるか否か等の実態というのをきちっと確認した上で、そこは総合的に判断していくという仕組みになってございます。
○田村智子君 ここで一番求められているのは、やっぱり最低賃金をどう、そこに向かっていくかということだと思うんですよ。工賃倍増計画といいますけれども、さっきの就労継続支援事業B型の平均工賃は月額一万二千円で、倍増しても二万四千円と。まして、こういう就労の場というところに利用料負担の仕組みが残されていると。こういうことを権利条約の批准に当たって、批准をした以降も、やっぱりちゃんと検討していくということを改めて求めておきたいと思います。
時間がないので、次に行きます。
第三十一条の統計及び資料の収集についてお聞きをいたします。
障害者差別解消法の制定に当たって、六月の内閣委員会で私は、基礎的なデータ、生活実態調査というようなものが障害者に特化したものがないということを取り上げまして、森担当大臣は、関係省庁とも相談しつつ、前向きに検討してまいりたいというふうに御答弁をいただきました。
これ、検討状況をお聞きしたいのと、是非私やっていただきたいのは、障害者の方のその就労の所得についての調査なんです。これ、ないんですよ、そういうものが。
きょうされんの調査によりますと、これ、約一万人の作業所などで働いている方の調査なんですけれども、年収百万円以下という方が五六%を超えていると。これは、やっぱりこういう貧困の問題をどうするのかということは、今後焦点となる課題だと思います。是非この調査、していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(岩渕豊君) 本年九月に新しい障害者基本計画を閣議決定いたしました。そこで、障害者の実態調査等を通じて、障害者の状況や障害者施策等の情報、データの収集、分析を行うこと、その際には、障害者の性別、年齢、障害種別等の観点に留意する旨を盛り込んだところでございます。
引き続き、この計画に基づきまして、個別施策を実施する関係省庁と連携し、必要な情報、データの収集、分析、充実を図ってまいりたいと存じます。
○政府参考人(蒲原基道君) 先ほど障害者の収入の関係の調査の話がございました。
厚生労働省では、原則五年ごとに在宅の障害者の生活実態等を把握するための調査を実施しておりまして、直近では平成二十三年度の調査が実施されたところでございます。この調査によりますと、一月当たりの平均収入を把握しておりまして、調査結果では、これは十八歳以上六十五歳未満の障害者等の一月当たりの平均収入でございますけれども、六万円以上九万円未満という回答をされた方が二四・三%と最も多くて、次いで九万円以上十二万円未満が一一・二%となっているところでございます。
引き続き、所得も含めて生活実態の把握にきちっと努めてまいりたいというふうに考えております。
○田村智子君 終わります。