【13.03.28】厚生労働委員会−ヒブ、小児用肺炎球菌、子宮頸がんウィルスワクチンを定期接種化する予防接種法改正案の質疑、国立感染症研究所の充実を求める
○田村智子君 これまでの委員会審議の中で各党の委員の皆さんが求められたように、私も、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会が提案をしている四ワクチン、また、これに加えてロタの予防ワクチンについて定期接種化に早期に踏み切ることを求めたいと思いますし、そのためにも、医薬品メーカーの言い値になっている高過ぎるワクチン価格への対応も冒頭要望いたしまして、今日は予防接種に伴う健康被害の救済のことについてまずお聞きをいたします。
子宮頸がん予防ワクチンの接種で健康被害が生じたと、しかし、PMDA、医薬品医療機器総合機構の副作用救済の対象にも、また市町村が加入する民間保険の救済対象にもならないという事例があったことを、二十一日の自民党、三原委員の質問の中で大臣は認められておられます。
このPMDAの医薬品副作用被害救済制度は、医薬品、予防接種でいえばワクチンとの因果関係が認められる副作用被害が救済の対象だと。これに対して予防接種法による被害救済制度は、ワクチンによる副作用だけでなくて、予防接種によって生じた疾病や後遺障害を広く救済の対象としています。
予防接種による健康被害というのは起きないのが一番いいんですけれども、実際には、基礎疾患が見逃されたとか、あるいは注射針を刺したことが原因と見られるものなど、これ、いろいろなケースがあり得ます。今回の法改正によって新たに加わる三ワクチンについても、今後は、ワクチンとの因果関係は必ずしも肯定されないけれども、例えば接種の直後から急性症状が見られるなど、予防接種との因果関係が肯定できれば広く救済の対象となると思うんですけれども、確認したいと思います。大臣、お願いします。
○国務大臣(田村憲久君) 予防接種法では、健康被害が予防接種を受けたことによるものであると厚生労働大臣が認定した場合に対して救済を行うこととされております。そして、今委員がおっしゃられましたとおり、ワクチンによるものにかかわらず、接種行為によるもの、これに関しましても救済の対象となるということでございます。
○田村智子君 報道を見てみますと、杉並区の中学生の方の事例など、子宮頸がんワクチンの接種に伴って、複合性局所疼痛症候群など重篤な健康被害が生じていると、にもかかわらず救済対象とならないということに、これは私も問題を感じています。
この間、Hib、小児用肺炎球菌、子宮頸がん予防ワクチンの接種事業は国と自治体が費用負担をする公的接種で、実質的には定期接種と同様に接種が促進されてきたものですね。そうであれば、定期接種と同等の公的な救済が何かできないものなのかと。自治体独自の救済に委ねるのではなく、救済対象が拡大できるような仕組みを是非検討してほしいと思いますし、あわせて、被害者の方が強く求めておられる原因の解明、丁寧な調査と検証、これは是非進めていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) 予防接種法に基づく予防接種は法律に基づいた非常に公的な制度である、公的性の強い制度であるということでございます。特にA類疾病の予防接種に関しましては、これは接種の勧奨でありますとか、さらには接種を受ける努力義務があるわけでございますから、そのような意味からすると非常に公的関与の度合いが強いということでございますので、非常に高いそういう意味では給付水準の補償制度がある、救済制度があるということでございます。
ということを鑑みますと、基金事業のときに行われていた予防接種に関しては、これはこの法律の対象ではないわけでありまして、救済の対象にはならないということでございます。
○田村智子君 是非そこを何とか検討の余地がないかなということを要望としてお伝えしたいのと、もう一つ、今回の杉並区のような事例のやはり丁寧な調査と検証、これは是非被害者の方に対しても、大臣、お約束をいただきたいなと思うんですが。
○国務大臣(田村憲久君) これからのではなくて、今回の杉並の事例に関してですか。
○田村智子君 それも含めて。
○国務大臣(田村憲久君) 含めて。
これ、必要なものはやはりちゃんと対応していかなきゃならぬというふうに思っております。
○田村智子君 是非お願いをしたいと思います。
今日は、先ほども、今度の法改正で国立感染症研究所がワクチンの安全性やらいろんな情報収集も、大臣いわく、研究員挙げて取り組むというふうなことも言われておりましたので、その国立感染症研究所についてお聞きをしたいんです。
この感染研は、今問題となっている風疹の流行について既に二〇〇四年に警告を出していて、発生抑制についての緊急提言も行っています。その後も感染状況などを定期的に発表も行っています。また、マダニからの感染が疑われる疾病についても、国際交流で感染研が中国から取得していたウイルスの株が早期に同定されたということで、原因解明や国民への注意喚起が進んだと聞いています。感染症の基礎・応用研究、ワクチンの開発から検査、国家検定、国内外における感染症の流行状況の調査、監視など、我が国の感染症研究や危機管理の中核としての役割を担っているのがこの国立感染症研究所なんですね。
また、感染症が流行ということになりますと、これは地方自治体の衛生研究所と一緒になって実動部隊としても行動することになります。これはアメリカでいえばCDC、疾病予防管理センター、NIH、国立衛生研究所、FDA、食品医薬品局の三つの役割を全て担っているに等しいということです。
大臣、この国立感染研が果たしている役割、大変大きいと思いますけれども、見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(田村憲久君) 国民の生命、健康を守るという意味からいたしまして、感染症に係る国の健康管理に直結する、そういう業務をやっていただいておる中心的な機関だというふうな認識でございます。感染症の診断から、また、治療、検査の方法、こういうものの開発でありますとか、また、重篤感染症発生時においては疫学調査等々もやっていただいておるということでございますから、このような強力な組織に今回事務局機能としてお助けをいただけるということで、大変心強く思っております。
○田村智子君 ところが、この国立感染症研究所は今大変な困難に直面をしております。
二〇一一年八月、国立感染症研究所機関評価報告書では次のような指摘があるんです。
現在の体制が多くの点で問題を含んでいると考えざるを得ない。これは、決して研究所側に原因のある問題ではなく、研究所を管理する国の責任にかかわる問題である。研究所では、限られた人材、資源で非常に多くの業務、研究を行っているが、これは研究所職員の努力によって維持されているものと考えられる。人員や経費が削減される中、研究所の業務や研究の範囲は拡大し続けており、個々の職員の努力に依存した運営には限界が来ていると。
具体的に指摘されている問題の一つは、基礎的研究費の不十分さなんです。これ、報告書にこうあるんですね。
基礎的研究費、研究事業費の額が研究所の規模から見るとかなり少なく、かつ次第に減少しているのは本末転倒であり、これは研究所側の問題ということではなく、国の感染症に対する姿勢の問題で、今後の課題と考える。国の研究機関、日本版CDCとしての基礎経費を競争的外部資金に依存するのはおかしく、内部予算として確保されるべきであると。
ところが、この基礎的研究費、実は来年度は前年度比一割カットの、今まで二十億を何とか保っていたんですけれども、何と十八億一千七百八十万円まで減額されるんです。五年前と比べれば二割以上の減額です。
大臣、これは、我が国の感染症対策、後退しかねないと思うんですけど、いかがでしょうか。
○国務大臣(田村憲久君) 今、基礎的研究費が二十億から十八億、一一%削減されるというお話がございました。そのとおりであります。
一方で、競争的研究費が二十四億というような形で二十四年度は計上されておるわけでありまして、ほかからも全くもってお金が入ってこないというわけではないんですが、そうは言いつつも、このような形で基礎的研究費が削減されているということはゆゆしきことだという御指摘に対して、我々も、できればこういうものに対してしっかりとした予算付けをしていきたいという思いはあるんですが、一方で、やはりこれ、国の行政機関でございますから、一定の枠組みの中でシーリングが掛かってくるということもございます。
そういうこともある中において、より効率的に研究等々が行われるように我々も最大限の努力はしてまいりたいというふうに思いますし、いろんな知恵を出しながら、これが進められるように、特に今回、事務局的な機能をお助けいただくわけでありますから、我々も支援できるところは支援してまいりたいというふうに思っております。
○田村智子君 これ、予算の減額のシーリングから外すことに反対する国民いないと思うんですよ、感染症に対する対策の研究やっているようなところが。
もう一点、深刻な問題として指摘をしたいのは定員削減なんです。
評価報告書では、全ての感染症に対応するには研究者が圧倒的に足りない、日本の感染症対策の中枢機関であるにもかかわらず、毎年定員合理化、削減が掛かっていることは問題であり、研究所の国民に対する使命の質と大きさに鑑み、定員合理化計画からの除外対象とすべきであると、こう明確に指摘されています。
これだけ厳しい報告が出されたのは二〇一一年なんですね。ところが、その後も人員削減は続いて、二〇一一年度三百二十三人だったのが、翌年は三百十八人、来年度は三百十二人と、限界だと指摘されて以降、十人以上の削減になってしまうわけです。
強毒性鳥インフルエンザなど新しい感染症やウイルスへの備え、麻疹や風疹など新たな流行が問題となっている感染症への対応も求められて、業務は拡大の一途だと。しかも、それぞれの調査研究は非常に専門性が高くて、人手が足りないから隣の部署から借りてくるというわけにはいかないわけですね。結局、個々の職員の過重負担が慢性化していて、これでは研究所の機能維持さえも危うい状況だと言われています。
大臣、国立感染研は言わば危機管理を担う研究機関です。定員削減の枠から外すということを早急に検討すべきではないでしょうか。
○大臣政務官(とかしきなおみ君) 現状についてちょっと説明しつつ、お答えさせていただきたいと思います。
平成二十五年度末の定員ですけれども、現在三百六十六人ということでございます。委員御指摘のとおり、人数の方、徐々に減ってきておりまして、非常に仕事の範囲も広がりつつ人数が減ってくるという厳しい環境にあります。
二十六年度の国家公務員の新規採用につきましては上限値を定める方式をやめるということで、今月の二十六日に閣議決定をいたしました。この流れを受けまして、今後とも必要な定員の確保には十分に努めていきたいと、このように考えております。
○田村智子君 定員削減の枠から外すことの検討は、大臣、どうですか。
○国務大臣(田村憲久君) なかなか厚生労働大臣一人で決められることではないのはもう御理解いただいているというふうに思います。
問題意識は我々もあります。めり張りのある、ここだけじゃありません、ほかにも本来人員が必要な組織あると思います。ただ、一方で、厳しい財政状況の中でなかなか一律にシーリングというものを外せないという、そういう部分もございます。
とにかく、景気をよくする中で、そういうことをめり張りが付けられるような状況がつくれるようにしっかりと頑張ってまいりたいというふうに思います。
○田村智子君 これは新規採用の抑制というのも今大問題になっていまして、今年度の十一人の新規採用に対して、来年度、僅か六人なんですね。定員削減で人が減る、しかも任期付きでしか採用ができないと。安定して働けない、予算も不十分、こうなりますと、優秀な人材が集まらなくなるという危険性も出てくるわけです。
先ほどから挙げている評価報告書ではこう言っているんです。
国は、国としての感染症対策の全体像を明示し、国の感染症対策の中枢機関としての研究所の位置付けと役割をもっと明確にし、予算、人員の裏付けを付けることが重要であり、研究所は、その国民に対する使命の質と大きさに鑑み、国家公務員削減計画からの除外対象とすべきであると。まさに危機感を持って体制と予算の充実を提言をしているわけです。
この国立感染症研究所を含む四つの国立研究機関の所長、厚生労働行政にかかわる研究機関ですね、これ、昨年三月、連名で定員削減の見直しを求める要望書というのも提出しているんですね。このような定員削減は、科学技術の高度化への対応はもとより、行政施策に必要な試験研究や情報提供等の適正な遂行をも危うくするものとなっていると。
是非、ここまで事態は逼迫しているんだと、その認識で来年度の定員削減や予算削減を早急に見直すこと、これを重ねて求めまして、質問を終わります。
○委員長(武内則男君) 時間ですので、お答えは簡潔に願います。
○田村智子君 いや、いいです。