日本共産党 田村智子
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【12.08.27】決算委員会――電機産業の大規模リストラ問題

NえCの退職強要を告発 「調査する」と厚労大臣が約束

○田村智子 日本共産党の田村智子です。
 我が国の財政危機の大きな要因に国内経済の長期低迷、縮小があり、国民所得の急激な落ち込みがあると思います。やはり景気の回復には内需の拡大が不可欠で、そのためには、雇用の安定、個人所得の回復が待ったなしで求められていると考えます。
 ところが、今、パナソニック、ソニー、NEC、シャープなど大手電機メーカーでのリストラ計画が相次いで発表されています。産業別労働組合である電機・情報ユニオンの集計では、二〇一一年以降、公表された計画だけでも実に十二万人を超える人員削減の計画となっており、これは当該企業の社員数の一割を大きく超える、そういう規模です。労働者の生活はもちろんのこと、日本社会全体に大きな影響を及ぼすこの大規模リストラ、政府として、日本経団連や電機産業界、あるいは計画を発表した大企業に対して計画の見直し、これ求めることも必要だと思うんですけれども、そのような計画見直しを求める、要請するというようなことを行ったことがあるのかどうか、確認をいたします。

○小宮山洋子厚生労働大臣 御指摘の、企業のリストラなどに伴う雇用調整の情報を得た場合には、管轄する労働局やハローワークから本社などを速やかに訪問しています。そこで、情報収集に加えまして、雇用の維持とか労働組合などとの話合い、企業自身による再就職援助などについて要請を行ってきています。また、地域経済、雇用への影響が懸念される場合には、関係自治体、地域経済団体などと連携協力をして、離職者の受皿確保などに取り組んできました。
 これからも企業についてはできるだけ速やかに情報提供を求めまして、雇用の維持、再就職に取り組むようにしたいというふうに思っています。

○田村智子 これは、再就職支援をどんなにやっても、どんどんリストラされたら、これはやっぱりもとを何とかしなくちゃいけないという事態だと思うんです。
 私、日立、東芝、パナソニックなどが相次いで撤退をした千葉県茂原市の状況を視察いたしました。茂原市は、今、人口も税収も急激に減少していて、離職による国民健康保険の加入届出数が急増すると。市内の三つの商店会がなくなる。ハローワーク茂原は求職相談者が狭いスペースにあふれていて、個人情報保護どころか、ボード一枚で仕切った窓口で相談せざるを得ないという状態です。有効求人倍率は現在〇・四、今後〇・二程度まで下がる可能性があると、そういう話も聞きました。
 これだけ深刻な影響がありながら、撤退をした各企業、千葉県や茂原市とリストラ計画決定過程での協議はもちろんやっていないと。それどころか、いつどれくらいの離職者が出るのかという情報開示さえ県などが求めても行わなかったといいます。これ、大変地域経済や社会に対して無責任なやり方だと思いますけれども、大臣の見解をお聞きいたします。

○小宮山洋子大臣 先ほども申し上げましたように、今御指摘のように、地域経済に対してもいろいろな大きな影響がありますので、なるべく早くその情報の提供ということは求めてきています。
 この大手電機企業のリストラなどはその地域の個々の事業所ごとに行われてきていて、また事業部制なども取っているため、雇用確保の要請など労働局ごとに行ってきていまして、本省としましては、全国的に影響を与えることが懸念される場合に必要に応じてまたやっていきたいというふうに考えています。

○田村智子 私、今もうこういう事態ですから、リストラ計画そのものが妥当なものなのかどうかということを、労働行政の側からも物を言うときだと思うんです。
 パナソニックの茂原工場は、県と市から合わせて三十三億八千万円にも及ぶ補助金を受けていた企業です。こういう補助金は、当然地元の経済や雇用の活性化をやってほしいというための補助金であって、それなのに撤退ということを考えるのであれば、そういう結論を出す前に県や市と協議するというのは、こうした経緯に照らして当たり前のことだというふうに私思うんですね。
 これフランス見てみますと、自動車メーカーのプジョー社、八千人のリストラ計画に対して、政府が、経営難といいながら株主への配当を行っているのはなぜなんだと経営上の問題について説明を求めて、企業への支援は行うと、その代わり、その条件としてリストラ計画を見直しなさいと、こういうふうに物を言っているんです。
 それからオランダ。三菱自動車のオランダ工場の合理化計画、オランダ政府や地元自治体との協議が実際に計画段階で行われています。その結果、この工場をたった一ユーロで地元のバスメーカーに譲渡をする、そしてそのバスメーカーで地域の雇用の維持を図るんだと、こういう手だてが取られているわけです。
 一方、パナソニック茂原どうかと。撤退するパナソニックが多額の補助金を受けていたというだけじゃないんです。その工場を買い取って新たに起業するジャパンディスプレイ、これは国策で産業革新機構から二千億円規模の出資を受けると、こういうことになっているんです。ところが、パナソニックからの雇用継続も地元の新規雇用の規模なども何の条件も求めていない。私、これでいいのかというふうに思いますね。
 せめて、行政が関与する、補助金受ける、出資を受けると、こういう場合、その条件として、もしも人員削減とか工場の譲渡や撤退と、こういうことがある場合には、計画の段階で地元自治体との協議を約束させる、こういうことも必要ではないかと思うんです。これ是非、厚生労働大臣から政府全体に問題提起していただきたい、そう思いますが、いかがですか。

○小宮山洋子大臣 現在の制度の中でも経済産業省の企業立地補助金などは雇用要件を設定をしていまして、企業再生支援機構の支援に当たっても、労使協議を要件とするなど、雇用への配慮を要件とする立地支援制度ですとか公的な再生支援制度というのは現在もあります。ただ、御指摘のようないろんな状況の中で関係機関といろいろと連携をして取り組んでいきたいと思いますが、今委員からも御提案があったようなことも含めて、どういうことが可能なのかは検討させていただきたいと思います。

○田村智子 これは、立地するときには様々な条件付けていると思うんですね。ところが、撤退のときには本当にもう好き勝手なんですよ。これはこのままでは私いけないと思います。
 この大規模リストラの中で起きている具体的な問題を取り上げます。
 この人員削減の多くは希望退職という形で進められていますが、実際には希望とは名ばかりの過酷な退職強要が行われています。NEC、正社員二千人、非正規雇用五千人、海外で三千人、合計一万人の削減の方針を打ち出して、このうち正社員については、幾つかの部署で、四十歳を超えた労働者を対象にして、七月に希望退職を募って九月末に退職をさせるという計画、これが今進行中なんです。
 具体的に何が起きているかと。これ、五月末から個別の面談始まりました。労働者は希望退職に応じないと明確に表明をしても、業務命令だといって二か月間で六回、七回、中には十回以上も面談が繰り返されているんです。六回目の面談が終わりました、残ろうなんて絶対考えるなと毎回言われています、もう死にたいです、今座席で手を切ろうかなと考えていますと。これ、電機・情報ユニオンにこうした声がメールなどで数十人から寄せられています。
 中には、入院中の労働者のその入院先の病院に行って希望退職の説明をするとか、うつ病で自宅で療養中の労働者を二度にわたって喫茶店に呼び出して一時間にわたって希望退職の説明をする、説得をすると。本人が断っているのに、今度は自宅に一時間に及ぶ電話を掛けて説得をすると。それでも断れば、その後も繰り返し電話をして面談に応じなさいと求めると。うつ病の人に対してこんなことまでやられているんです。私、これ聞いたとき、背筋凍りましたよ。この方、何起きるか分からないですよ、こんなことやられたら。
 大臣、これは常識的に考えて、希望を募るという範囲を超えているんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○小宮山洋子大臣 退職勧奨につきましては、全体として被勧奨者の自由な意思決定が妨げられる状況だった場合には違法な権利侵害となると述べました最高裁判例があります。この判例では、被勧奨者の家庭の状況、名誉感情等に十分配慮すべきとも述べられています。こうした観点から見まして、行き過ぎた勧奨が行われた場合は違法な退職の強要と判断される場合もあるというふうに考えています。

○田村智子 これ、NECは、こうした多数回の面談を繰り返すに当たって、こういうやり方は退職強要に当たらないと当局に確認をしていると労働者に説明までしていると。
 労働基準局長に確認をしたいのですが、労働局や労働基準監督署がNECからの問合せを受けて、多数回の面談が退職強要には当たらないと、こういうお墨付きを与えた事実があるのかどうか、お答えください。

○金子順一労働基準局長 一般的なことで答弁をさせていただきますが、労働局や労働基準監督署で、今言ったような退職勧奨の面接を何度も行うことが問題かどうかというようなことを企業などから相談があった場合には、通常、裁判例等の紹介を行うことにとどめまして、それで問題がないなどという断定的な回答を行うことはないものと考えております。

○田村智子君 これ、私も厚生労働省に問い合わせたんですけれども、NEC本社のある三田労働基準監督署にも東京労働局にも、そもそもNECからの問合せはなかったという回答なんですね。先ほど最高裁判例を示していただきました。労働局や監督署が六回、七回にも及ぶような面談にお墨付きを与えるはずがないんですね。
 厚生労働省は、先ほど大臣が紹介いただいた最高裁判例も示して、二〇〇九年四月には企業向けに、厳しい経済情勢下での労務管理のポイントというパンフレットを出していて、その中でも、違法な権利侵害に当たる場合があるんだと、自由な意思決定妨げてはならないということを注意喚起しています。
 実は、この最高裁の判例を周知徹底するという意味で、二〇〇〇年二月には、神奈川労働基準局長が日本鋼管京浜製鉄所に対して助言文書も出しております。今日、資料でも配付をしましたので見ていただきたいんです。
 この中では、具体的には次のような場合には退職勧奨の許容される限界を超えるものと判断しているとして、これは私の方で番号を振りますけれども、一つには、出頭を命ずる職務命令が繰り返される場合。二つに、被勧奨者がはっきりと退職する意思がないことを表明した場合に、新たな退職条件を提示するなどの特段の事情がないのに執拗に勧奨を続ける場合。三つ目、勧奨の回数及び期間などが退職を求める事情の説明及び優遇措置などの退職条件の交渉に通常必要な限度にとどまらず、多数回、長期間にわたる場合。四つ目、被勧奨者に精神的苦痛を与えるなど、自由な意思決定を妨げるような言動がある場合。五つ目、被勧奨者が希望する立会人を認めたか否か、勧奨者の数、優遇措置の有無などについて問題がある場合。具体的に、数えれば五つの場合を示して、これ実際に二〇〇〇年のときには日本鋼管に対して助言を行っているんですね。
 これ、こういう事実があったと思いますけど、労働基準局長に確認をいたします。

○金子順一労働基準局長 お示しいただきました文書は、退職勧奨に関する裁判例の考え方につきましては下関商業高校事件と呼ばれる最高裁の判例がございます。これに基づいて助言をしたものでございます。

○田村智子 これ、労働基準監督署が具体にこういう助言を出しているという事実があるわけですね。私、こういう中身をいま一度ちゃんと企業に徹底するべきだと思います。
 これに照らせば、先ほど私が挙げたNECでの事例は明らかに退職強要です。勧奨ではありません。NECでは、今、希望退職の募集期間過ぎた、退職に応じなかった労働者を今度は別室に移してこれまでの仕事を取り上げるなど、見せしめ、パワハラとも言えるやり方まで始まっています。退職強要に当たらないと労働局がお墨付きを与えたかのような虚偽の説明までして、辞めると言うまで労働者に圧力を掛け続ける、こうしたNECの退職強要の実態は直ちに調査をしてやめさせるべきだと思いますが、いかがですか。

○小宮山洋子大臣 先ほど御紹介したような最高裁の判例もございます。都道府県労働局や労働基準監督署では、退職強要を疑われる事案についての情報の把握に努めまして、企業の方に出向いたりして、事実関係を確認した上で関係法令や裁判例を説明するなどの啓発、指導を実施をしていくことにしていますので、このNECの例につきましても、出向いて、どのようなことがあるか調査をして必要な指導をするということが必要かというふうに思います。

○田村智子 是非お願いしたいと思います。
 私が今回NECの事例で取り上げましたけれども、これ、一企業の問題ではありません。例えば、一万四千人のリストラを計画しているルネサス、この九月に希望退職を募ろうとして、今まさに面談が始まっています。これ、これまで私、厚生労働省にお聞きしたら、個別に相談があったら個別に応じますということを言っているんですけど、個別じゃないんですよ、組織的に行われているんです。組織的に行われていることに対しては、やはり労働行政が組織的に対応する、これ必要なことだと思います。これはNECだけでなく、例えば複数の労働者から退職強要が疑われるような事例が相談があった場合、直ちにこれは組織的にやられているということを疑い、同じように調査し指導すべきだというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

○小宮山洋子大臣 今委員が御指摘のように、例えば一つの企業の複数の労働者から相談が寄せられたような場合は、やはりこちらから企業に出向いて事実関係を確認をして、必要な指導をする必要があるというふうに思います。

○田村智子 是非ともその旨を各県の労働局とそれから各労働基準監督署にも徹底をしていただきたいというふうに思います。中には、NECの労働者が労働基準監督署に相談に行ったのに、うちでは受け付けられませんといって労働局にたらい回しをするという事例まであったんですね。これでは駄目です。労働基準監督署でワンストップでちゃんと相談を受けて、そして組織的な対応ができるようにということを是非やっていただきたいと思いますけれども、これは労基署でもワンストップでちゃんと相談応じる、確認したいと思いますが、いかがですか。

○小宮山洋子大臣 これまでも労働紛争に関する相談、全国の都道府県労働局とか労働基準監督署などの総合労働相談コーナーで相談を受け付けています。それで、受け付けた場合には、案件ごとに必要な対応部署を紹介をして、きちんとたらい回しにするようなことなく対応するようにしているんですが、今委員から御指摘のあったようなことがないようにしっかりと徹底をしていきたいというふうに思います。

○田村智子 これは事が起こる前に、私は、先ほど示した五つのような場合というのをできれば分かりやすいパンフレットにして、相談のあった労働者にも示すし、企業に対しても具体的に示す、具体的に示すということが今本当に求められていると思うんです。
 ルネサスやパナソニックのこの大規模リストラを見てみますと、海外の企業に負けたからだと、仕方がないんだと、倒産させないためにやむを得ないことであるかのような報道もされています。しかし、現場でいろいろお話をお聞きすると、これまで企業が時間も掛けて技術者も育てて、日本の中で開発をした技術を目先の利益で大企業がどんどん海外に流出をさせてしまう。自ら大企業が、経営判断の言わば誤りで日本の中の工場を潰さなければならないような事態というのを自らつくり出しているんですよ。その経営者の責任というのが何にも問われずに、労働者にだけそれがしわ寄せが行くと。一生懸命技術開発やってきた、一生懸命いい製品作ってきた、その労働者をいとも簡単に切り捨てていく、精神的に追い詰めて辞めると言わせる。これは、私は日本の中の物づくり、あるいは日本の経済、企業の在り方を根底から駄目にする重大な事態だと思っています。
 是非労働行政の積極的な助言や指導を求めて、質問を終わります。