【12.03.28】厚生労働委員会――介護報酬の見直しについて
ホームヘルプサービス「45分基本」の撤回を
○田村智子 日本共産党の田村智子です。
今日は介護保険の問題で質問をいたします。
第5期介護保険事業計画では、65歳以上の高齢者の介護保険料が全国平均で約2割の大幅引上げになる見込みです。これは年金支給額の減額と併せて大変な負担増になってしまいます。
高齢者人口の増加に伴ってこの保険料の上昇というのは避けられないだろうと、こう想定されていたわけですね。その上、これまで介護保険とは別建てで措置をしていた介護職員処遇改善を保険料財源に移してしまって、これが一層の引上げにつながってしまった。これ、私、大変問題の多い政策判断だったと思います。しかも、このことが介護報酬の実質マイナス改定を見えなくさせていると思うんですね。
今回の改定で介護報酬はプラス1・2%と、こう説明されていますが、処遇改善分が2%ですから、これ実質0・8%のマイナス、物価下落を主な理由にしたマイナス改定ではないかと考えます。このことは22日の委員会で福島議員が質問をされて、その答弁を議事録で確認しましたら、大臣は改定内容の説明にとどまっておられたんですね。
同じ説明はもう議事録を私確認しましたのでいいです。現場から指摘されているように、処遇改善交付金分を考慮すれば実質マイナス改定であると認めるのかどうか、この点に絞って御答弁ください。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 今回、介護職員の処遇改善を介護報酬に取り込んだのは、毎年毎年つなぎつなぎでは先の見通しがなくてなかなか職員を雇えないというような現場からの声も踏まえて、恒久的なものとしてちゃんとやるために介護報酬に取り込みました。
平成24年度の介護報酬改定の改定率、これは厳しい財政状況の中プラス1・2%と決定をされましたが、これは介護職員処遇改善交付金分、介護報酬の二%を取り込んだ上で、過去三年間の物価下落傾向マイナス2・2%を反映したものですので、これはマイナス改定だとは考えておりません。
○田村智子 現場が実際どうなるかということだと思うんですね。実際、訪問介護や通所介護の事業所の試算を見てみますと、これもう2%から5%もの減収と、こういう試算が示されています。また、報酬そのものが減額となる入所系の施設ではもっと減収幅が大きくなるだろうと、こういうことが考えられるわけです。
減収分の経費をどこで抑えるか、これは人件費で抑えるというふうにならざるを得なくなってしまうと思うんですね。これでは、先ほど恒久的なものにしたいというその思いとは裏腹に、処遇改善の取組が継続できるという水準にならないんじゃないかと、現に減収になっちゃう、そういう問題が起こると思うんですが、いかがでしょうか。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 このプラス1・2%の改定率、先ほど申し上げたように物価の下落傾向は反映しています。一方で、賃金も過去3年でマイナス1・7%なんですが、賃金の下落傾向は反映していません。また、介護事業者の経営状況が黒字傾向にあることなども踏まえまして、これは平均の収支差率がプラス7・5%ということですので、これも踏まえて決定をいたしました。したがいまして、プラス1・2%の改定率は、介護職員の処遇改善の取組を継続できる水準で必要な財源を確保できたと考えています。
今後、社会保障・税一体改革の中で更なる処遇改善に取り組んでいきたいと考えています。
○田村智子 これ、現場とは相当な乖離のある御答弁じゃないかなというふうに思わざるを得ないんですね。
この処遇改善分が介護報酬に移される、恒久的な措置としてだというふうにおっしゃったんですけれども、これは当然利用料に影響が出てくるわけですね。そうすると、利用者の負担を増やすわけにはいかないと、処遇改善の届出をやめるという事業所が出てくることも考えられるわけです。介護職員の皆さんも、自分たちの低賃金、これは何とかしてほしい、しかし利用者の負担ももう限界だと、この矛盾を本当に抱えて働いていらっしゃると思うんですね。
こうした介護の現場の問題を解決するには、やはりこれまでの処遇改善交付金のように実質国庫負担率を引き上げると、こういう政策に向かっていかなければ、私はこれはもう介護保険の制度って本当に破綻しかねないようなことになってしまうんじゃないかと。国庫負担率を引き上げるということを改めてこの場で要望しておきたいと思います。
時間がありませんので、次に、生活援助の時間制限の問題について取り上げます。
昨年、この委員会で、生活援助、在宅介護の生活援助ですね、この時間区分の基本が45分に見直されると、この問題を取り上げました。その根拠とされた調査が、そもそも目的も違う、時間を計測したものでもない、2か月以上前の作業を記録と記憶に頼って記載させたものだと、こういうふうに指摘をしました。大臣は、この私の指摘に対して、調査方法が適切であったかどうかを検証したいというふうに答弁をされました。
今、非常に現場の方から、一体あの検証はどうなったんでしょうかと私のところに問合せが来ています。どのような検証が行われたのか、お聞かせください。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 平成23年12月5日の社会保障審議会介護給付費分科会で、このEBPの調査に関する調査方法と結果概要、また平成19年度に行ったタイムスタディー調査の結果を併せて報告をし、議論を行いました。
EBPの調査につきましては、訪問介護事業所がサービス提供記録等を基に掃除、洗濯などの行為ごとの提供時間について記載したものですが、訪問介護で行うサービス内容は継続性を持っているので、数か月前の記録を基に回答することは可能で、一定の信頼性は確保されていると考えています。また、EBPの調査結果については、平成19年度に調査員が行ったタイムスタディー調査とほぼ同様の結果となっています。
介護給付費分科会で、こうした調査結果とともに、利用者のニーズに応じた適切なアセスメントとケアマネジメントの必要性、訪問介護員の関係団体からの比較的短時間の生活援助のニーズも多いという指摘、こうしたことも踏まえまして、総合的な観点から御議論いただき、結論を出していただいています。
○田村智子 今指摘のあった12月5日の介護給付費分科会、議事録読みました。
これは、指摘した調査とは別の2007年の調査を確かに資料として後ろに付けて配付をして、老人保健課長がその概要を説明しただけなんですね。議論ってやられていないんですよ。一人の委員が、いや、これはおかしいと、検討すべきじゃないかと発言したけれども、それ以外の発言もなく終わっているんですよ。こういう調査でした、報告して終わり、これで検討したなんて言うのは、これはヘルパーの皆さんや事業所の皆さんはあきれて物が言えないような、そういう事態だと私思いますよ。
しかも、この変更というのは現場に大変な混乱をもたらしています。45分以上の生活援助はできないとか、60分の生活援助を求めるならば15分については自費でお願いしたいとか、こういうことを言っている事業者まであるんだ、そういう報告が私たちのところに寄せられています。
先日、やはり福島議員、このことも取り上げて、時間区分の変更を利用者に強いることのないように徹底していると、まるで人ごとのような答弁を局長されていましたけれども、この混乱の原因は、そもそも時間区分を短縮したと、これで見直せと求めたことだと思うんですけど、いかがでしょうか、局長。
○宮島俊彦 労健局長 確かに、今委員御指摘のように、一部に、全てのサービスを45分未満でやらなければならないということで誤解されている面があるのではないかと考えております。
厚生労働省としても、こういう誤解は正さなきゃならないと思っておりまして、適切なアセスメントとケアマネジメントに基づいて、現在行われている60分程度のサービスも行うことは可能というようなことで、全国の高齢者の担当課長会議でもそういう指示を出しましたし、それから疑義照会でも今言ったようなことで誤解を解くように努めているところでございます。
○田村智子君 そもそも、その45分を打ち出した調査、その検証というのもとてもずさんとしか言いようがないものですし、現場では大変な混乱が起きているし、一番危惧されているのは利用者さんの生活の質が著しく低下しかねないと、45分を基本にして見直せって求めているわけですからね。ヘルパーさんやケアマネの皆さん、次々に今要請に来ていますよ。
例えば、厚労省は、買物は、今までは利用者さんの家にまず行ってそれから買物だったと、これは45分を基本にして見直して、例えば利用者さんの家に行く途中で買物してもいいよと、こういうことまで説明されていますけれどもね。ヘルパーさんが言われるのは、利用者さんのお宅に行って、その方の顔色を見て、生活の状態、お部屋の様子を見て、そして食事が全部食べられたの、どうかということも見て、それじゃこれからどんな食事を用意するのかな、どんな買物が必要かな、これが当たり前のことだと言うんですね。そして、利用者さんと一緒に冷蔵庫の中を見たりしてどんなものが足りないかなってやる。これは、利用者さんの生活の質や体の、何というんですか、機能の向上とか、そういうことにも役立っているんだと。
それらを無視するような45分を基本に、これは私は非常に問題が多いと思います。60分でもいいとか、90分程度のサービスを細切れにとか、こんなのはまさに利用者にも事業所にも大変な負担を強いることになる。これはやっぱり45分を基本にというのは今からでも私は撤回すべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。短く、済みません。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 これまでのサービスの提供の実態とか、限られた人材をどういうふうに働いてもらうかとか、そうした観点から時間区分の見直しを図り、45分で済むところは60分でやっていたよりも費用の負担も少なくて済むわけですので、これを基本に見直しをいたしました。
ただ、先ほど御指摘あったように、混乱があるのは非常にそれは申し訳ないことなので、そこは徹底をしたいと思いますが、見直し後もその利用者のニーズに応じて適切なアセスメントとケアマネジメントがあれば、今行われている60分程度のサービスも受けられますし、90分程度のサービスをより利用者の生活リズムに応じて複数回の訪問に組み替えたり、いろいろなことができるということを先ほど局長からも申し上げました全国担当課長会議でまた徹底をいたしましたし、3月16日にはQアンドAもつくりまして、とにかく現場が混乱することのないように、そこのところは徹底をしていきたいと考えています。
○田村智子 利用者さんの生活の質が決して下がることのないように強く要望したいと思います。
次に、お泊まりデイにかかわることです。
今度の介護報酬改定で、デイサービスの利用が終わったその後、同一建物に宿泊をして翌日またデイサービスを受けると、こういう場合には報酬に減算が行われるようになりました。
まず確認したいんですが、この同一建物への宿泊というのはどのようなことを指していますか。
○宮島俊彦 労健局長 今回の改定で、デイサービスと同一の建物に居住する者、あるいは同一建物からデイサービスに通う者、これについては送迎の手間がないから、真に送迎が必要な場合を除いて、評価の適正化を行うこととしています。
具体的には、いわゆる宿泊付デイサービス、お泊まりデイですが、これの利用者、そこは通いがないということ、送迎がないということですね。それから、同一建物の中でショートステイがあって、その利用者がデイサービスを利用するといったような場合でも送迎がないので、こういうところについては減算するということを行ったところでございます。
○田村智子 これは、事実上お泊まりデイを介護報酬の中に組み込むような、そんなふうにも見えるわけですね。
このお泊まりデイについては、一部の都道府県で実態調査を行われています。例えば、神奈川県の最近の調査では、宿泊サービスを行っている122事業のうち17事業で1年以上連泊をしている人がいると。男女同室というところは5割を超える。その他、夜勤職員に無資格者がいる、これ65%。緊急時の協力医療機関がない、7割強。千葉の調査でも、過半数の施設で11日以上の連泊者がいると。火災報知機やスプリンクラーのない施設が2割。スプリンクラーがない、これだけ見れば8割超です。
こうした実態がありながら、なし崩し的にお泊まりデイを容認するということにこれならないのかどうか、局長、お答えください。
○宮島俊彦 労健局長 宿泊付デイサービスについては、22年11月の介護保険部会の意見でも、緊急時に迅速に対応できるような仕組みを含めてショートステイの活用、こっちを図る必要があるだろうと。それから、利用者の処遇や安全面に配慮をする必要があるということから、これは慎重に検討を行うべきであるというふうにされております。
今年度はこの宿泊付デイサービスについて、夜勤体制とプライバシー、そういった課題があるということで、全国15の市区町村で調査事業、これを実施しております。これの調査の最終報告を現在受けているところでありまして、厚生労働省としては、その内容を精査して今後の取扱いを検討してまいりたいと考えております。
○田村智子 やっぱり劣悪な施設を含めて、何でこんなにお泊まりデイが広がってしまっているのか、これ本当によく見ないといけないです。ショートステイが必要なときに使えないと、入居施設が圧倒的に不足していると、多くの認知症の方がどうしたらいいかという状態になっていると思うんですね。特養ホームもショートステイも、これ抜本的に増やしていくという方策が本当に必要だと思うんです。
ところが、冒頭でも私質問したとおり、特に今回の介護報酬の改定では、施設系の報酬、これ削られると、実態として。在宅に重きを置いて、将来的には更なる削減になるんだということが透けて見えるようなやり方というのが取られているんですよ。これでは利用者の人権にかかわるような事態が野放しになりかねないと思うんです。大臣、いかがでしょうか。
○小宮山洋子 厚生労働大臣 ショートステイの充実につきましては、今回の介護報酬改定で、デイサービス等に付設するショートステイの医師配置ですとか面積基準を緩和するとともに、緊急時にショートステイ利用者を受け入れるための加算を創設をしています。また、入所施設の整備については、この度、特別養護老人ホームの整備などを支援するための基金、介護基盤緊急整備等臨時特例基金の実施期限を1年延長して24年度までの支援といたしました。
厚労省としては、引き続き、必要な介護が受けられるようにショートステイなど介護基盤の整備を進めていきたいと考えています。
○田村智子 先日、中村委員からも、本当に特養などを軽んじているんじゃないかという質問ありましたけれども、私もそういう政策では絶対駄目だというふうに思いますので、改めて要望したいと思います。
最後に、喀たん吸引についてお聞きをいたします。
昨年、介護保険等の改定によって、4月から介護事業としての喀たん吸引が行われることになります。これは、医師がまず事業所に対して指示を出して、研修及び認定、これを受けた介護施設や障害者施設の職員が医療的ケアとして喀たん吸引を行うと。この中には、特別支援学校の教員や児童デイなど障害児施設で働く介護職員も含まれています。
また、これに伴って診療報酬にも喀たん吸引の指示料が創設をされて、介護保険法や障害者自立支援法に基づく事業所あてに医師が指示書を書くと。この場合には診療報酬に指示料を算定できるんです。しかし、特別支援学校への指示書についてはこれは診療報酬の外にされてしまいました。何でこういう差がつくられてしまったのか、お答えください。
○辻泰弘 副大臣 今回の診療報酬改定において新設をいたしました、介護職員等が喀たん吸引等を行う場合の介護職員等への医師の指示料につきましては、基本的に、訪問介護事業所などの医師の配置のない事業所に対する外部の医師の指示について診療報酬上の評価を行ったものでございます。この指示料につきましては、複数の事業所に対して指示を行った場合であっても患者一人につき一回算定するものでございまして、特別支援学校に通っている方が指示料の対象となる他のホームヘルプサービスなどのサービスを併せて受けておられる場合には、指示料が算定されることとなっているところでございます。
いずれにいたしましても、御指摘の指示料は今回の改定で新たに新設をしたものでございまして、今後の動向を見てまいりたいと考えております。
○田村智子 文科省に一点お聞きします。
こういう改定に伴って、文科省の方には、診療報酬に入れるべきかどうか、こういうようなことの検討がされたのかどうか、あるいは厚労省からそういう問合せがあったのかどうか、お答えください。
○関靖直 文部科学省大臣官房審議官 本年3月5日に、厚生労働省の告示におきまして診療報酬の改定が行われ、診療報酬の対象となる事業者が示されたところでございますが、告示の制定に当たりまして、当省に対する事前の意見照会や協議はなかったところでございます。
○田村智子 これ大変私は無責任だなって思うんですね。先ほど、先生が配置されているようなところ、医師が配置されているような施設はと言いました、そこは診療報酬の外に置いたと。特養なんかは確かに診療報酬の外に置かれているんですけれども、しかし、特養なんかは日常的に、日常的というか、医療的ケアというのが、やっぱり医療の提供というのが前提とされているわけですよね。特別支援学校というのがそれと横並びというのは、これは余りに乱暴だなというふうに思うんです。
実際に、医療的ケア、特別支援学校での医療的ケアに協力してきた医師からは、法整備をつくりながら穴を置いておく、これはおかしいじゃないかという声が上がっているわけですから、ちょっと時間がなくなってしまいましたので、是非今後検討してふさわしい手当て、体制が取れるようにやっていただきたい、このことを要望して、質問を終わります。