【12.02.24】参議院本会議−−2010年度決算に対する質問
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
民主党政権が自ら作り執行した初めての決算である二〇一〇年度決算。この審議では、政権交代に託した国民の期待は何だったのか、それにこたえる政治は行われたのかが問われなければなりません。
二〇一〇年度から始まった高校授業料の無償化は、期待にこたえる最初の一歩でした。ここから更に教育費負担の軽減をさせることが求められていました。ところが、やっと踏み出した高校無償化さえ、民主、自民、公明の三党によって見直されようとしている。子供や教育にかかわる政策の行方が一部政党間の協議に左右されるなど、断じて許されません。
昨年十二月、遺児と母親の全国大会に藤村官房長官が出席し、野田首相のメッセージを代読されました。父親や母親を亡くし、経済的な困難に直面する若者たちに、未来に確かな希望が持てるよう、全力で取組を進めていくと明言された。ならば、この大会でも強く要求された給付制奨学金の創設、私立高校授業料の無償化、そして、国連人権規約に基づいて、大学を含めた段階的な教育費の無償化に踏み出すべきではありませんか。総理の答弁を求めます。
少子化の下で社会保障をどう支えていくか、今国会の焦点の一つです。私は、少子化なればこそ、若者たちが安定して働き、社会の担い手となることが切迫して求められていると考えます。
現状はどうか。先日発表された労働力調査では、政権交代以降、正規雇用の労働者は五十万人減り、一方、非正規は八十三万人も増え、働く若者の半数以上が非正規雇用となってしまいました。非正規雇用の労働者、その七割以上は年収二百万円以下、三か月や半年という雇用契約でいつ仕事を失うか分からない。これでどうして税や社会保障、経済、産業の担い手となれるのか、結婚や出産に希望が持てるのか。このままでは日本社会の基盤が崩れかねません。
総理、この現状をどう考えますか。税と社会保障の改革というならば、この問題にこそメスを入れるべきではないでしょうか。一体、この二年半、非正規雇用の増大に歯止めを掛けるために民主党政権は何をやってきたのか。日本経団連や大企業に足を運び、リストラをやめ、内部留保を生かして正規雇用を拡大するよう求めたことがあったのか、明確にお答えください。
今国会では労働契約法の改定が行われようとしています。これは、事実上、有期雇用の上限を五年とし、五年を超えれば強制力をもって期限の定めのない雇用にするというものですが、大企業の現状を見れば、五年を前にして雇い止めが横行することは火を見るよりも明らかです。これで正規雇用が増える保障がどこにあるのか。やるべきは、使い捨て雇用に歯止めを掛けること、そのために合理的な理由のない有期雇用を厳しく規制する法改正ではありませんか。総理の見解をお聞きします。
最低賃金の引上げも待ったなしです。国民所得の底上げこそ、景気も税収も健全に回復する確かな道です。民主党は全国平均千円の最低賃金を目指すとしていますが、いまだ七百円に達しない都道府県は三十二県もあります。また、賃金引上げのための中小企業支援策は余りに不十分。来年度はその予算さえ減らそうとしています。なぜ中小企業支援の予算を減らすのか。賃金の底上げを図るために全国一律千円の最低賃金に踏み出すべきではないのか、お答えください。
人間らしい雇用を保障してこそ、若者たちは自分たちの力を社会の中で遺憾なく発揮でき、それこそが日本社会発展の力となるでしょう。そのための政策に全力を尽くす決意を述べ、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣野田佳彦君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(野田佳彦君) 日本共産党の田村議員の御質問にお答えをいたします。
まず最初に、給付型奨学金、高校授業料など教育費の無償化についての御質問をいただきました。
全ての意思ある若者が教育を受けられる仕組みを構築することは大変重要であると考えております。このため、奨学金については、所得連動返済型の無利子奨学金制度の創設や高校生修学支援基金の三年間の延長など、高校、大学における実効性のある奨学金制度の充実、授業料負担の軽減については、公立高校生は授業料不徴収、私立高校生等は低所得世帯に手厚い高等学校等就学支援金制度による高校実質無償化、また、都道府県や大学による授業料減免への支援などの施策を進めているところであります。
政府としては、国際人権規約の趣旨も踏まえつつ、今後とも全ての意思ある若者が教育を受けられるよう努めてまいります。
次に、非正規雇用問題への認識と対応、有期雇用についてのお尋ねがございました。
非正規労働者は、正規労働者と比べ、雇用調整の対象となりやすい、相対的に低賃金であり有配偶率も低いなど、雇用や生活が不安定であると認識をしています。
このため、ハローワークにおける就職支援や各種助成金の支給により正社員としての就職や処遇の改善を支援するとともに、労働者派遣法改正案を国会に提出しているところであります。また、急激な円高の下、昨年十月には厚生労働大臣から主要経済団体等に非正規労働者への配慮を要請をしております。さらに、社会保障と税の一体改革でも、就労促進やディーセントワークの観点から、非正規雇用問題に横断的に取り組むことが重要と認識をしており、そのための総合的ビジョンを年度内に策定をし、政労使の社会的合意を進めつつ取り組んでまいります。
次に、有期雇用の問題については、有期労働契約が五年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより無期労働契約に転換させる仕組みなどを柱とする労働契約法改正案を今国会に提出をする予定であります。
五年手前での雇い止めへの懸念については、雇い止めを制限する判例法理である雇い止め法理も併せて法制化する等により、五年手前での雇い止めに一定の歯止めを掛けつつ、無期労働契約への円滑な転換を促してまいります。
最低賃金について、最後にお尋ねがございました。
最低賃金の引上げについては、平成二十二年六月に策定した新成長戦略において、二〇二〇年までの目標として全国最低八百円、全国平均千円を掲げており、この目標を達成するためにも中小企業への配慮は欠かせないものと考えています。
今後とも、最低賃金の引上げにより最も影響を受ける中小企業に対してはしっかりと配慮しながら、最低賃金の引上げに着実に取り組んでまいります。(拍手)