日本共産党 田村智子
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【11.12.20】ファミリー・サポート・センター事業の安全性確保に関する質問主意書

ファミリー・サポート・センター事業の安全性確保に関する質問主意書

質問第六一号

ファミリー・サポート・センター事業の安全性確保に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十三年十二月九日

田 村 智 子   


       参議院議長 平 田 健 二 殿




ファミリー・サポート・センター事業の安全性確保に関する質問主意書

 ファミリー・サポート・センター事業は「乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を会員として、児童の預かり等の援助を受けることを希望する者と当該援助を行うことを希望する者との相互援助活動に関する連絡、調整を行う」(厚生労働省ホームページより)事業であり、市町村が直接実施、又は、市町村の補助の下で民間が実施するものである。このように住民相互の助け合いを行政が仲介・調整し、又は、後見的に関わる事業である。援助を希望する方は市町村が行っている事業であるため安心して援助のお願いをするという方も多く、事業の安全性の確保は極めて重要である。
 ところが、昨年十一月十六日、当時五か月だった藤井夫妻の娘のさつきさんが、大阪府八尾市のやおファミリー・サポート・センター事業での一時保育を提供していた援助会員宅で、うつぶせ寝による心肺停止状態で発見され、その後、臨床的脳死状態となり現在入院中となっている。
 藤井さんによれば、何が起こったのかについて、当会員の藤井夫妻が事故後に実施主体である八尾市や援助会員等と話合いを数回行ったがうまく進展せず、いまだに何も明らかになっていない。しかも、事故の真相を明らかにしてほしいと八尾市にお願いしても、八尾市は「依頼会員と援助会員の間で解決してください」、「保険会社による事実認定等の手続きを進めてください」と、自ら原因を調査する姿勢をとっていないとのことである。
 藤井さつきさんの事例のように、市町村の制度だから安心と思い活用したにもかかわらず、いざ事故が起これば、当事者間のみでの解決が迫られ、事故の原因究明すら行わないということになれば、この制度を安心して活用することはできない。
 八尾市では生後間もない乳児を預かる援助会員に対しての研修がわずか十二時間だけで、保育士などの資格の有無は問わない中で運用されていることが明らかになっている。短時間の預かりとはいえ、ファミリー・サポート・センター事業という市町村が行う事業(補助事業)において十分な研修が行われず援助会員が預かりを行えるという現状では、安全な預かりが提供されているとは言い難い。
 ファミリー・サポート・センター事業は六百を超える自治体で実施されており、多くの方に利用されている制度であるため、安全で安心して活用できる制度とすることが求められる。
 その観点から以下質問する。

一 ファミリー・サポート・センター事業における過去五年間の死亡を含む重篤な傷病を伴う事故の発生状況はどうなっているのか。
 国の補助事業であるファミリー・サポート・センター事業の相互調整の上で行われた一時保育で、藤井さつきさんのように心肺停止状態で発見され臨床的脳死状態に至るという重大事故が発生しているが、子どもの健全育成のための同事業においてはあってはならないことと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 ファミリー・サポート・センター事業について「平成二十三年度子育て支援交付金の交付対象事業等について」(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長、平成二十三年九月三十日、雇児発〇九三〇第一号)の「次世代育成支援対策推進事業評価基準」(以下「基準」という。)で、国の補助事業の要件が定められている。この中で会員への講習の実施について、「預かり中の子どもの安全対策等のため、参考として別に示す項目、時間を概ね満たした講習を実施し、これを終了した会員が活動を行うことが望ましい。」としている。この参考に示す講習とは「ファミリー・サポート・センター事業における講習の実施について」(厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課長、平成二十三年九月三十日、雇児職発〇九三〇第一号)で総計二十四時間のカリキュラムが示されている。

1 ここで示されたカリキュラムの時間数以上の講習の受講を相互援助活動の条件としているセンターの数を明らかにされたい。また、ここで示された時間数以上の時間数の講習を実施しているセンターの数及びここで示された時間数未満の時間数の講習を行っているセンターの数、講習を実施していないセンターの数を明らかにされたい。
2 国は本年九月三十日に二十四時間のカリキュラムを示し、この項目と時間を概ね満たした講習の終了が望ましいということを自治体に示した。このこと自体は改善と考えるが、「終了が望ましい」という助言にとどまっており、ここで示されたカリキュラムの講習の実施や、講習を終了した会員による援助の実効性の確保について懸念がある。実効性の確保のために国としてどのような努力を行うつもりか。

三 「ファミリー・サポート・センター事業における事故防止対策の徹底について」(厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課長、平成二十三年十月二十一日、雇児職発一〇二一第一号)の「事故防止のための留意事項について」(以下「留意事項」という。)において、自治体に対して事故防止対策について技術的助言を行っている。

1 「留意事項」で「事故発生に備えた対応等」として、「預かり中の子どもに予想される事故の防止に万全を尽くすことが一番であるが、万一事故が発生した場合の対処方法(応急措置を含む。)について事前に十分な相談・計画・準備をしておくこと。また、事故が発生した場合には、円滑な解決に向け、会員間の連絡、調整を行うこと」を求めているが、「計画・準備」とは、どのような事項を計画に定め、またどのような準備を行うことを求めたものなのか、具体的に明らかにされたい。
2 前記1の「対応等」で「事故が発生した場合には、円滑な解決に向け、会員間の連絡、調整を行うこと」を自治体に求めている。
 会員間のトラブルがあった場合に、ファミリー・サポート・センター事業の実施主体が市町村である場合、司法的解決も含めてトラブルが解決するまで当事者間の調整などに関して当事者双方に寄り添って必要な支援を行うべきと考えるが、政府の見解及び指導方針を明らかにされたい。市町村の補助事業として行う場合においても同様に、トラブルが解決するまで当事者双方の支援を行うよう、実施主体に対して市町村は指導を行うべきと考えるが、政府の見解及び指導方針を明らかにされたい。

四 「基準」においてファミリー・サポート・センター事業は「相互援助活動事業の調整等」を行うものとされている。「留意事項」にある「事故が発生した場合には、円滑な解決に向け、会員間の連絡、調整」が当然含まれるものと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。また、「相互援助活動事業の調整等」や「基準」で配置が義務づけられているアドバイザーの業務に、「事故が発生した場合には、円滑な解決に向け、会員間の連絡、調整」が含まれることが明確になるよう「基準」を改正すべきではないか。

五 「留意事項」で「事故事例及びヒヤリ・ハット事例の検証」を求めている。「基準」において、相互援助活動は請負又は準委任契約によるものとされている。「基準」のとおり相互援助活動の契約を締結した場合、本質的にファミリー・サポート・センターは相互援助活動に対して資料の提出や検証への参加を求める法的根拠を有していないが、この事故事例及びヒヤリ・ハット事例の検証は、事案が深刻かつ重大なほど難しいのではないか。そのような重大事案の検証の実効性を確保するための具体的方策について明らかにされたい。

六 「基準」において相互援助活動は請負又は準委任契約によるものとされている。市町村が実施し又は補助する事業において援助の申込みとファミリー・サポート・センターによる援助の打診を経て会員間の相互援助契約に至るということを考えれば、多くの援助を求める会員がその契約が適正に実施されることを市町村が公的に担保していると考えるのは当然である。現行のように相互援助契約が純然たる民間の契約であって、ファミリー・サポート・センターが法的な監督権限を有せず事業が行われているのは問題と考えないか。何らかの関与の仕組みを設けるべきではないか。

七 前文で述べた藤井さつきさんの事例について、厚生労働省が「基準」や「留意事項」で述べていることに照らして、八尾市の対応は適切とは言い難い。事案の「円滑な解決に向け、会員間の連絡、調整」に努めるとともに、事故防止対策のため自ら原因を検証するよう八尾市に対して指導・助言を行うべきではないか。また、厚生労働省も今後の事故対策のため同事案の情報収集や原因解明の努力を行うべきではないか。

  右質問する。

ファミリー・サポート・センター事業の安全性確保に関する質問に対する答弁書

答弁書第六一号

内閣参質一七九第六一号
  平成二十三年十二月二十日
内閣総理大臣 野 田 佳 彦   


       参議院議長 平 田 健 二 殿

参議院議員田村智子君提出ファミリー・サポート・センター事業の安全性確保に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。




参議院議員田村智子君提出ファミリー・サポート・センター事業の安全性確保に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねのファミリー・サポート・センター事業(以下「事業」という。)において預かられた児童について、平成十八年四月一日から平成二十三年六月二十一日までの間に、治療に要する期間が三十日以上である負傷又は疾病を伴う事故(以下「重篤な事故」という。)が十五件発生したと承知している。
 御指摘の事故が発生したことは誠に遺憾である。

二の1について

 事業の実施主体(以下単に「実施主体」という。)の全てにおいて講習を実施していると承知しているが、お尋ねの「ここで示されたカリキュラムの時間数以上の講習の受講を相互援助活動の条件としているセンターの数」、「ここで示された時間数以上の時間数の講習を実施しているセンターの数」及び「ここで示された時間数未満の時間数の講習を行っているセンターの数」については、把握していない。

二の2について

 厚生労働省としては、平成二十三年度から実施主体における講習時間の実績について報告を求めることとしたところであり、お尋ねについては、当該報告の結果を踏まえて検討してまいりたい。

三の1について

 お尋ねについては、例えば、事故が発生した場合における事故の状況の確認の方法、関係者間の調整の手順等について、事前に計画し、事故が発生した場合に備えること等を求めるものである。

三の2について

 厚生労働省としては、事業において発生した事故に関して会員間のトラブルが生じた場合、実施主体は御指摘の「留意事項」に沿って、その円滑な解決に向け、会員間の連絡及び調整(以下「連絡等」という。)を行うことが必要と考えており、また、市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、当該市町村による補助を受けている実施主体に対して、御指摘の「基準」及び「留意事項」に沿って適切な対応を行うよう、必要に応じて、助言をすべきものと考えている。

四について

 御指摘の「基準」における「相互援助活動の調整等」及びアドバイザーの業務には、事業において事故が発生した場合に、円滑な解決に向け、会員間の連絡等を行うことが含まれており、今後、御指摘の「基準」を改正し、その旨を明確化してまいりたい。

五について

 御指摘の事故事例及びヒヤリ・ハット事例の原因をどのように検証するかについては、実施主体において検討の上、適切に対応するものと考えているが、厚生労働省としても、実施主体がより適切に事故事例及びヒヤリ・ハット事例の原因の検証を行うための具体的方策について検討してまいりたい。

六について

 実施主体は、御指摘の「基準」に沿って、会員相互の援助活動が適切に行われるよう、会員間の連絡等を行っているものと考えているが、会員の自発的な意思に基づく相互援助活動を支援するという事業の性格に鑑み、実施主体が会員に対して、御指摘の「法的な監督権限」により関与する仕組みを設けるかどうかについては、慎重な検討を要するものと考えている。

七について

 厚生労働省においては、事業における死亡事故又は重篤な事故について報告を求めるとともに、事故の発生状況を踏まえた留意事項を周知するなど、事業における事故防止対策の徹底に努めており、八尾市においても御指摘の「基準」及び「留意事項」に沿って適切な対応が行われるよう、必要に応じて、同市に対して助言をしてまいりたい。