【11.12.06】厚生労働委員会--年金マイナス物価スライド問題と社会保険病院について
○田村智子君 日本共産党、田村智子です。
今回の法案は、国庫負担二分の一をまたも暫定的に手当てするというものです。そもそも、本則二分の一負担とした二〇〇四年の改正では、段階的に国庫負担を引き上げ、二〇〇九年には二分の一を実現するという約束でした。そして、その財源だとして年金等の控除の見直し、定率減税の廃止など実に二・八兆円規模の大増税が行われて、これで百年安心だと宣伝をされたわけです。基礎年金の国庫負担二分の一、いつまでたっても暫定措置、一体二・八兆円どこに消えたんだ、まあこれ前政権の仕事ですけれども、こういう声が国民から起こるのはやむを得ないと思います。それどころか、今回の改正ではまた国庫負担二分の一が増税の理由にされようとしている。
当初の政府案では、消費税を含む税制の抜本改正によって財源を確保するとしていましたし、修正後も税制上の必要な措置を講ずるんだと、こういうふうにされています。二・五兆円の財源確保のために、既に行われた二・八兆円の増税に加えて更に消費税増税二・五兆円、合わせれば五兆円を超えて国民に負担を求めることになります。
大臣、こういう経過をどうお考えになりますか。
○国務大臣(小宮山洋子君) 基礎年金の国庫負担二分の一は、年金財政の長期的、安定的な運営のために不可欠ですので、そうした観点から、平成十六年度から十九年度にかけて税制改正によって得られた財源、これを用いて段階的に国庫負担割合を三六・五%まで引き上げてきたというふうに承知をしています。平成二十一年度と二十二年度は、臨時財源によって二分の一と三六・五%との差額を措置してまいりました。
今委員御指摘のように、十六年度税制改正による年金課税の見直しに伴う所得税の増収分〇・二四兆円、このうち地方交付税分を除いた〇・一六兆円については基礎年金国庫負担割合の引上げに充てられたと承知をしています。また、十七年度、十八年度税制改正による定率減税の縮減、廃止に伴う所得税の増収分およそ二・六兆円のうち地方交付税分を除いたおよそ一・八兆円については、これは使途が法定されていない一般財源であるため厳密に特定することは困難ですが、当時の与党の御議論などを踏まえまして、定率減税の縮減、廃止に関連付けられた歳出項目として、基礎年金国庫負担割合の引上げにおよそ〇・三兆円が充てられたと承知をしております。残りは財政健全化のため公債発行の縮減に既に充てられたということです。こうした対応は、各年度の予算編成過程で当時の与党における議論も経て決定をされたと承知をしています。結果として、基礎年金国庫負担割合は従前の三分の一から平成十九年度までに三六・五%まで引き上げられました。
いずれにしましても、基礎年金国庫負担二分の一の維持については長期的、安定的な運営の観点から不可欠ですので、二十四年度以降もその実現に向けて全力を挙げていきたいというふうに考えています。
○田村智子君 私は説明してくれと求めたわけではなくて、政治家としてこんなことでいいんですかということをお聞きしたわけですよ。国民に対する約束を何度も何度も裏切っていけば、これ政治不信が広がるのは当たり前のことです。消費税増税案はこれ撤回すべきですよ。やはり、法人税減税中止するとか、応能負担を貫いた税制の改革やるとか、民主党が掲げた国民の暮らし最優先で本気で歳出を見直す、こうやって恒久的な財源確保を行うことを強く求めたいと思います。
同時に、お聞きしたいのは、こうした増税とセットで検討されている更なる年金給付額の減額です。
昨日、記者会見で、年金支給の特例水準二・五%、今後三年から五年掛けて解消すると、こういうふうに大臣、明言をされました。これ、二〇〇四年の改定で、物価の上昇を予測したということもありますけれども、物価あるいは賃金がマイナススライドしてもそのまま年金支給額には適用しないと、こういう特例措置がとられたわけですよね。これは、やっぱり単純に、安易に年金支給額をマイナススライドさせれば、高齢者の生活を、基礎的な生活保障ができなくなってしまうんじゃないかと、こういう政策目的があったと思います。
この年金名目額をできるだけ維持して高齢者の生活の安定を図る、こういう政策、これ前政権の下でも取られていた。民主党に政権交代したらこの政策目的は投げ捨てるということなのかどうか、これお聞きしたいと思います。
○国務大臣(小宮山洋子君) 今の御質問にお答えする前に、その前の件ですけれども、今回の社会保障と税の一体改革の中では、こういう形で社会保障を充実する目的税として五%上げさせていただくという、今回その目的としっかり結び付けた形で御理解いただくようにしていきたいと思っておりますし、もう一点のいろいろな今の再分配機能をもっと上げていくということについては、税制改正の大綱として与党としてもお示しをしておりますけれども、それがなかなか国会の事情の中で実現をしていないという、それがあることを申し添えておきたいと思います。
今の御質問に対してですけれども、年金の物価スライド、これは物価上昇率に応じて年金額を改定することで物価の変動にかかわらず年金受給者の購買力を維持する、そのために行われるもので、現在支給されている年金額の水準は、本来想定しているものより二・五%増しの購買力を維持している結果になっていると考えています。年金制度の給付と負担のバランスについては、この本来の給付水準を前提として現役世代の負担の在り方が定められています。したがいまして、過去に設けられた特例水準を維持した場合には、急速な少子高齢化が進行する中で、将来の現役世代の負担が過重になるというおそれがあります。こうしたことからこの特例水準の解消をしていきたいと考えているところです。
今、社会保障審議会の年金部会や民主党でも議論をしているところで、政府としましては、年金受給者の方々の生活への配慮とのバランスという観点も踏まえながら、一定の期間を掛けてできるだけ早期にこの特例水準は解消をする必要があると考えておりますので、部会の議論なども踏まえて速やかに実施をしていきたいというふうに考えています。
○田村智子君 本当に、説明はいいですから、聞いたことに答えてほしいんですよ、高齢者の生活保障どうなるのかと聞いているわけですから。
二・五%分のマイナスのスライドを抑えてきたと。しかし、十年ほどのスパンで見れば、年金の支給額は既に徐々に切り下げられているわけですよね。
物価のマイナススライドが問題となった二〇〇〇年以降、年金支給額水準は何%下がっているか、お答えください。
○政府参考人(榮畑潤君) 平成十二年、二〇〇〇年から平成十四年、二〇〇二年にかけまして、消費者物価が下がったにもかかわらず年金額は特例的に据え置いて、以降、平成十四年から消費者物価が累計で約一・九%下がってきております。したがいまして、年金額についてもその分だけ下がってきておるところでございますが、ただし、これはあくまで消費者物価が下がっただけの引下げでございますから、年金受給者にとりまして実質的な価値というのは変わっていないというところでございます。
○田村智子君 下がっているんですよ、二%近くね。老齢基礎年金で見ると、満額で二〇〇〇年当時では年間支給額八十万四千二百円、それが現在七十八万八千九百円、ここから更に二・五%減となれば、今既に月六万六千円切っているような年金からも千六百円これ切り下げることになるわけですね。
そもそも、こういう物価の下落といいますけれども、そんな実感は年金生活者にはないと思います。昨年の平均物価指数と今年の十月を比較すると、生鮮食品はプラス三・二%、五年前、二〇〇六年平均と比較すればプラス六・五%、水光熱費は二〇〇六年と比べて七・二%プラスになっているわけですよ。大きくマイナスになったのは家具等、中身見てみれば、結局、液晶テレビとかパソコンが年間で二割ぐらい価格が下がっている。パソコンや液晶テレビ毎日買う人なんかいないですよ。これで物価が下がっているからなんて下げられたら一体どうなるのか。
しかも、来年四月からは、介護保険料を恐らく平均で千円前後これ値上げしてきますよ。医療費負担も増やそうとしている。一体、高齢者の生活どうするのかってまともに検討したのかどうか。このことだけでいいです、時間ないですから、小宮山大臣、お答えください。
○国務大臣(小宮山洋子君) それは高齢者の方の生活の安定とのバランスも考えながら検討をしております。
○田村智子君 どうやって保障するのかって全く伝わらないので、これはまた議論したいと思います。
今日は、この年金問題に関連してもう一点、社会保険病院、厚生年金病院の売却の問題についてお聞きしたいと思います。
これらの病院は、整理、売却を主たる任務とするRFOからいつ地域医療機能推進機構に移行するのかと、これ不安の声といいますか早くやってくれという声がいろんなところから聞こえてきます。大臣、これ、新しい機構発足、いつにしようということでしていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
○国務大臣(小宮山洋子君) これは、必要な準備に要する期間も考慮して、新機構の発足は今年六月の法律の公布日から起算して三年以内としています。
○田村智子君 それを一日も早くということで是非求めたいということなんですね。といいますのは、やはり医師、看護師の確保を早くやっていきたいんだと、安定させてほしいと。しかも、自治体や住民の方々からは、新機構の法案が成立した後も繰り返し要望が出されてくるわけです。本当に社会保険病院、厚生年金病院として存続できるのかという不安が今も起こっているわけなんですね。
法律では、RFOは全ての病院を売却の対象とするというふうになっているけれども、RFOがどんな検討や作業をしていくのか、これ、関係者が一番不安を抱いているところです。この病院の譲渡、売却については、当該自治体が譲渡を希望し、必要な医療機能が維持されると大臣が認めて初めて話を進めるということになると思うんですね。その際、地元住民の理解を得ることということも条件付けられていると思います。
そうであるならば、確認したいのは、RFOがどの病院を譲渡、売却の対象にするかということを色分けをして、RFOから自治体あるいは民間の病院に、この病院を買いませんかとその色分けに従って働きかけをする、こういうことはできないと思うんですが、いかがでしょうか。
○政府参考人(今別府敏雄君) お答えいたします。
今先生がおっしゃいましたように、RFOは新しい医療機構に変わるわけでありますけれども、医療機構に変わるまでも、改正法の附則あるいは附帯決議で示されましたように、病院の譲渡の推進をしていくということが決められております。これは、おっしゃいましたように自治体の理解が何より大事だというふうに考えておりますので、地元の自治体とよく御相談をしていきたいと思いますが、新医療機構が地域医療に貢献をしつつ安定的な病院運営を果たしていくために、どういう病院グループにするのかという観点も大事だと考えております。また、地元の自治体が自ら病院を引き受けるというような場合には、これは優先して譲渡の対象にするというふうに考えております。
○田村智子君 RFOが色分けするわけではないということ、これ確認できると思います。ところが、そのRFOが委託団体に対して法施行前に全国で二十を超える病院の譲渡、売却を考えていると、こういう説明があったと聞いているんです。色分けを行っている。地域医療を支える全国ネットワークの公的病院が本当に重要なときに、二割から三割これ譲渡しようとRFOが話を進めるって、これとんでもないことだと思います。
さらに、徳島健康保険鳴門病院をめぐって看過できない報道がありました。十一月二十九日付け徳島新聞の夕刊、徳島県知事が、鳴門病院の公的存続は不可欠だけれども、赤字経営を理由に民間への売却が取りざたされている、だから存続させるために財政苦しいけれども県が所有権を買い取ると、こういう意向が示されたというんですね。赤字経営が売却の理由になるなんていうのは、これ審議の中でも全く出てこなかったことですよ。事実上線引きしているんじゃないのかと、これが危惧されます。
さらに、いろんな情報寄せられてくるんです。譲渡ありきで国の財産である病院施設を不当に安く譲渡しようとしているのではないのかと。
山梨鰍沢病院、これ一九九九年に八十億円で建設して、国有財産台帳に記載された価格は厚労省に確認したところ七十三億円。ところが、七億円で譲渡という話が出ているといいます。鑑定評価額の実に十分の一。これ、信じられません。
また、徳島鳴門病院、二〇〇四年の財産台帳では看護学校も含めて百四十一億円、これも昨日、厚労省に確認をいたしました。ところが、報道では買取りとプラス新たな施設整備費を含めても初期費用十五億円。こんなばかな話ないですよ。
私たちは、売却の……
○委員長(小林正夫君) 時間が来ておりますので、おまとめください。
○田村智子君 はい。
私は、売却は必ずしも賛成じゃないです。だけれども、少なくとも年金の財源にするんだということを理由にこういう売却ということが盛り込まれたわけで、事実上売りたたく、こんなやり方やるべきじゃないと。
ちょっと一言だけ、済みません、RFOを強く監視していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(小宮山洋子君) 譲渡を行いますRFOには中期目標として、年金資金等の損失を最小化する観点から、不動産鑑定評価の手法に基づき適正な価格設定に努めるよう指示をしています。
RFOでは、これを踏まえて地方公共団体と価格などの協議を行い、適正な価格で譲渡されることになると考えていますので、そのように厚生労働省としても見ていきたいというふうに思っています。
反対討論
○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案について反対の討論を行います。
基礎年金国庫負担割合二分の一を維持するのは当然ですが、本法案は、二〇〇四年の年金改正法の本則に戻るのではなく、今年度限りの暫定措置を定めるものでしかありません。二〇〇四年改正で、自民党、公明党の前政権は、年金等控除の廃止など年金課税の強化及び定率減税の廃止による増税分を財源として基礎年金国庫負担割合を順次引き上げ、二〇〇九年度には二分の一にすると約束をしていました。しかし、この増税による二兆八千億円のうち、年金国庫負担引上げに充てたのは僅か三千三百億円で、基礎年金国庫負担割合は暫定措置のままです。本法案でもここから脱していません。その上、政府が提出した法案では、またも基礎年金国庫負担割合の引上げは消費税増税を含む税制の抜本改正によって行うことが附則に書き込まれていました。衆議院で附則が修正されてもなおこの流れは変わっていません。まるで一枚の証文で二度にわたって国民から財産を取り立てるようなものではありませんか。国民を欺く手法を認めるわけにはいきません。
消費税増税案は撤回し、法人税減税の中止、応能負担を貫いた税制の改革、国民の暮らし最優先の歳出見直しにより恒久的な財源を確保し、基礎年金国庫負担割合二分の一を直ちに実現することを求めて、討論を終わります。