【11.07.14】厚労委員会――熱中症対策と予防接種法改正法案
クーラー購入へ生活福祉貸付金の運用改善を
177-参-厚生労働委員会-16号 平成23年07月14日
○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
予防接種についての質問の前に、緊急に求められています熱中症の対策についてお聞きをいたします。
昨年九月、低所得の方がエアコンを買えないとか、電気代が心配で利用を控えているという実態を取り上げまして、私もこの委員会で質問をいたしました。その際にも、猛暑はこれからも続くだろうと、今から必要な対策を取ってほしいということも求めました。おとといの委員会でも答弁がありましたけれども、熱中症による救急搬送、七月十日までに一万三千九十一人、昨年の三・四倍と。本当にこれまで以上の対策が緊急に求められていると思います。昨年私が質問したのに対して、エアコンの保有や夏の電気消費量について生活保護の方や低所得の方がどういう実態にあるのか、これを調査をして対策を検討する、当時、長妻大臣は答弁をしていただきました。
このエアコンの保有率について、生活保護世帯と一般世帯との比較ではどのような調査結果が出ているのか、お答えください。
○政府参考人(清水美智夫君) 一般世帯と生活保護受給世帯の双方の生活実態と生活意識を調査するために、昨年の七月に調査を行いました。まだ速報値でございますがその内容を申し上げますと、北海道を除いたエアコンの保有率は、一般世帯が八七・五%でございます。これに対しまして生活保護受給世帯は、地理的分布を考慮せずに協力の得られた自治体のみの調査であったわけでありますので幅を持って見る必要がございますけれども、六八・五%という値が得られております。なお、より比較が可能と考えられます東京都のみの数字でいいますと、一般世帯が九三・七%、これに対しまして生活保護受給世帯が七六・六%という結果でございました。
○田村智子君 これは、一割から二割近い乖離があるということなんです。川崎市では、熱中症の救急搬送、前年比四・四倍。屋内にいたケースが昨年は一七%だったのに対し、今年は四四%と激増をしています。
実は、エアコンを持っている方も、昨年、私いろんな方にお話を伺ったんですけれども、もう三十年近く使っていてほとんど効かないという方もいました。故障していて買い換えたいけれども、そのお金がないという生活保護の方もいらっしゃいました。
昨年、私取り上げましたとき、低所得の方のエアコン購入には生活福祉資金の貸付制度が利用できると、こういう答弁がありました。しかし、生活保護を受給していますと、この貸付金が収入認定をされてしまってその分保護費が削られるため、結局エアコンを買うための資金には事実上ならないという問題があるんですね。実際、先日鹿児島の方から電話がありまして、生活保護を受けている方なんですけれども、相談に行って、この貸付制度を利用できないかというふうに問合せをしたら、収入認定されますよと言われてしまって、結局諦めた、こういう電話が私のところにもありました。
月々の保護費を節約してエアコン購入の費用を捻出しろと、結局こういうことなんですけれども、高齢者の方は今、老齢加算も廃止をされて、毎日お風呂に入ることさえできないと、限界を超えて生活費を節約をしています。実は、暖房器具の購入についてはこの貸付金を収入認定しないという措置がとられているとお聞きしています。エアコンについても緊急に同様の扱いをすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(細川律夫君) この冷房設備につきましての生活保護者の方たちが購入する場合、その資金を借りた場合にそれが収入に当たるかということが一番の論点だというふうに思います。現在は、冷房設備の購入のために借りた貸付金というのは、これは収入として認定をする取扱いになっております。
しかしながら、昨年も大変暑い夏でありましたし、また今年はそれに輪を掛けた暑いというようなこと、こういうことも考えますと、健康被害を防止するということから考えますと、これは冷房設備の必要性というのは、これはもう本当に今高まっているというふうに思います。これは委員御指摘のとおりだと思います。そのために私としては、冷房設備の購入をするために生活福祉資金等の貸付金についての生活保護についてのこの取扱いということについては、これは収入というふうに認定をしない方向で検討をさせたいというふうに思っております。
○田村智子君 それ、急いでほしいんです。検討していて夏が本当終わっちゃうような事態になったらいけないと思いますので、すぐに検討をして文書で全ての自治体に徹底していただくようお願いをしたいと思います。
もう一つ対策で必要なのは、地域で涼しい場所をつくることだと、避難できるようにすると、これ大切だと思います。
厚生労働省のホームページでは、地域の高齢者等に対する熱中症対策の事例についてと、回答のあった九十九の自治体の取組が紹介をされています。これ見ますと、ほとんどが広報啓発の取組だけで、避難所の提供というのは九十九自治体のうち大阪府吹田市、埼玉県熊谷市、東京都だけでした。ほかの自治体についてどうかと少し調べてみましたら、例えば大阪府高石市では、公民館や市役所、体育館など、熱中症の一時避難所として利用してくださいと呼びかけを行っています。
ただ、他方で、自治体によっては節電だからと称して公共機関を閉館する、高齢者や子供の避難所となり得る老人福祉センターや児童館まで閉館してしまうと、こういうところもあるんです。これでは各家庭での節電にはならないし、熱中症対策という観点からは、これは見直し必要だと思うんですね。
是非、厚生労働省としても、公共施設を避難所として活用する、民間の店舗などの協力も得る、夜間も使用可能なシェルターの設置など大いに奨励をして、国としての支援策も検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(岡本充功君) 今委員から御指摘の熱中症予防のための普及啓発や注意喚起について本年六月三日に各自治体に要請をしたところでございます。その中で、各自治体に、緊急の場合には水分補給や涼しい場所への避難が可能となるよう地域の実情に応じて避難所を確保すること等についての検討を要請をしております。
委員が御指摘のような事例もありますけれども、各自治体が行う熱中症対策の事例を収集し、全ての自治体に情報提供をするとともに、各自治体からの協議を踏まえて、熱中症予防のための避難場所の設置を含めた取組等に対して国庫補助の対象としているところでございます。
委員がお話しになられましたように、暑い夏にアスファルトの道路の上を歩いていて本当にくらくらっとするということがあり得るわけでありまして、コンビニエンスストアや飲食店、薬局、理・美容所、クリーニング店等に対して避難所、いわゆるシェルターの協力を呼びかける等、各自治体の実情に応じて対応を御検討いただきますようお願いしますと、こういう文書を出しているところでありまして、是非御理解をいただきたいと思います。
○田村智子君 異常とも言える事態ですので、是非緊急に、避難所を含めて積極的に進めていただきたいと思います。
あわせて、昨年、生活保護世帯に対する夏季加算、これ是非検討をお願いしたいと言いまして、検討をしたいと当時の長妻大臣に言っていただきましたので、是非重ねて要望をしておきたいと思います。
不活性ポリオワクチンの承認を早く
○田村智子 それでは、予防接種法に関する質問を行います。
ポリオの予防接種について、まずお聞きをいたします。
日本では、ポリオの発生はもう生ワクチンの接種からの感染のみと、二〇〇一年度以降十五人、二次感染含めて二十一人感染をしている。先日のニュース番組でも両足に麻痺が起こってしまった子供さんの姿や毒性のない不活化ワクチンを早く日本でもと求めるお母さんの切実な声が紹介をされていました。こうした母親たちの強い要望で海外の不活化ポリオワクチンを個人輸入する医療機関も出てきています。
この不活化ポリオワクチンの早期承認、これまでも国会で何度か議論になってきましたが、現行の三種混合ワクチンに不活化ポリオワクチンを加えた四種混合ワクチンの開発、また単抗原ワクチンの開発の状況、これ、端的に今どうなっているか、お答えください。
○大臣政務官(岡本充功君) 御指摘のように、ポリオワクチンにつきましては生ワクチンが長く使われてきたわけでありますけれども、今、不活化ポリオワクチンの開発が進んでいるところであります。本年末ごろより、順次、薬事承認申請がなされる予定でありまして、薬事承認申請がなされれば速やかにその評価を行っていきたいというふうに考えているところであります。
四種混合ワクチンの導入から近い時期に国内で使用できるように、いわゆる単抗原ワクチンについても今考えているところでございまして、いずれにいたしましても、安全性とそれからその効能効果、こちらをしっかり見極めながら、また国民の皆さんにしっかりその点を御理解いただけるようなそういった方策を取りながらこの施策は進めていかなければならないと、このように考えております。
○田村智子君 この不活化ワクチンの導入というのは既に二〇〇三年に提言がされていて、政府の審議会からも遅いという指摘がされているところです。是非、先ほど藤井議員からもありましたけれども、特例承認を含めて速やかな導入をしていくように改めて求めたいと思います。
実は、しかしそうはいっても、来年からもう不活化ワクチンができるんじゃないかという、こういう報道もありまして、今、生ワクチンの接種を控えているという動きが出てきています。東京新聞の報道によりますと集団接種の接種率が一割程度下がった自治体もあると、このように報道されています。また、承認されるそのワクチンが三種混合と一緒になって四種混合になると、これを聞いて三種混合ワクチンも控えるという方も出てきていると、こういう報道もあるんです。
まず、不活化の導入を早めるということはもちろんなんですけど、これ、承認されたときに、様々な方が様々な条件で的確にワクチンの接種ができるように是非そうした措置をとっていただきたいと思うんですね。例えば、三種混合は受けていると、だけど生ワクチンは接種をやめていた、この方が不活化のワクチンだけの接種ができるようにとか、あるいはいわゆる標準的な年齢と言われているところを過ぎている方についてもちゃんとお知らせが行ってワクチン接種ができるようにするとか、そうした経過的な措置が必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。
○大臣政務官(岡本充功君) 御指摘のように、こういう移行期というのはいろいろな課題があると思います。その点についても、我々としてもしっかりと専門家の皆さんの御意見を伺いたいと、こういうふうに考えておりますし、また、今お話がありましたように、生ワクチンの接種を控える動きがあるというのは我々としては少し懸念をしておりまして、このポリオというのはまだ日本では確かに今、野生株の発生というのはここ近年ないわけでありますけれども、しかし、その一方で、先ほどお話がありましたけれども、副反応として残念ながらポリオになられている方が見えるわけでありまして、ポリオの免疫が付いていない子供さんが増えてくるというのは、集団免疫の観点からも問題があると思います。
また、加えて、今の三種混合ワクチンに更にポリオワクチンを加えて、その四価のものを打つということになりますと、残りの三価に対して過剰免疫になるのではないかと、こういう御指摘もあります。そういったところも含めて、それに問題があるのかないのか、当然、この承認の中で見ていく課題になるんだと、こういうふうに思っております。
○田村智子君 先ほど山本議員からもありました定期接種されていないワクチン、Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチン、私も是非来年度の公費助成制度を続けてほしいというふうに思っているんですが、これ来年度だけに限らず是非定期接種化、これが予防接種部会でも求められていますので、定期接種化の検討を早く進めていただいて、その間に途切れることのない公費助成、この事業を続けていただきたい、このことは先ほど御質問もありましたので、要望にとどめておきたいと思います。
次に、このHib、小児用肺炎、それから子宮頸がんワクチン以外の水痘、おたふく風邪、B型肝炎、成人用肺炎球菌についての接種、これも予防接種部会の中間まとめでは、大いに促進をしていくことが望ましいというふうにされて、小委員会も設けられて、医学的、科学的評価や医療経済的効果についての分析が行われているところです。
この水痘、おたふく風邪、B型肝炎、成人用肺炎球菌、それぞれ経済効果についてはどのような検討内容になっているのか、端的に御紹介ください。
○政府参考人(外山千也君) ワクチン評価に関する小委員会におきまして、医療経済的な推計を行っていただいたところでございます。成人用肺炎球菌ワクチンにつきましては、約五千百二十億円の費用低減、水痘ワクチンにつきましては約三百六十億円の費用低減、それからおたふく風邪ワクチンにつきましては約二百九十億円の費用低減、B型肝炎ワクチンにつきましては、費用対効果は良好でないと評価されております。
なお、これらの結果につきましては、各種の前提等によって大きく変動するものであるため、複数ある評価指標の一つとして理解すべきものと承知しております。
○田村智子君 B型肝炎については、これ、医療費と予防接種費用の比較だけであって、働けなくなってしまうとか、そういう社会生産性についての損失は考慮されていないと、このことは一言申し上げておきたいと思います。
今お答えのあった中でも、特に経済効果が大きいとされる肺炎球菌ワクチン、医療費だけでも五千億円を超える費用低減効果が得られるという試算になっています。この肺炎というのは、全ての世代で見ても死因は第四位、高齢者にとっては第一位の死因になってしまっています。中でも肺炎球菌によるものが多いと、全体の二割から三割を占めているとお聞きしています。この肺炎球菌ワクチンを接種した場合、死亡率や重症化率は低くなる、外来、入院とも医療費が減少する、これが予防接種部会の小委員会の報告書の中で述べられていることです。
実際、公費助成、既に行っている自治体もあって、ここでは接種率が向上をして肺炎による入院患者が減少したと。冬場にはいつも肺炎患者が多くて入院病床が満床だったけれども、今は救急搬送も受け入れることができるようになったと、こういう事例が多数報告もされています。
このように、特に大きな効果が認められる肺炎球菌ワクチンを始め費用低減効果が明らかに認められるワクチン、これは優先的に定期接種の対象として検討すべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(岡本充功君) 今委員から御指摘がありましたように、このワクチンの接種に対する費用対効果の問題というのは様々な前提があります。B型肝炎の話もそういう話が、いわゆる社会生産性の損失の分野で考慮がなされていないということを指摘をされましたが、この肺炎球菌ワクチンについても、対象の方が高齢者であるということで同様に考慮をされない試算になっています。
この数字を用いてどのように評価をしていくかというのは、様々な角度からの議論が必要だと思います。御指摘のように、市中肺炎の一つの原因である肺炎球菌を免疫を付けることでその重症化を予防する、また、集団の中での発症を予防するということに一定の効果があるのではないかという御指摘がありますので、こういったこと、それから先ほどの費用対効果、様々な角度を総合的に勘案をして予防接種部会で議論が進められていくと、このように考えております。
○田村智子君 最後に、私も、六月二十八日、基本合意が調印されましたB型肝炎訴訟について一問お聞きをしたいと思います。
この基本合意調印後、超党派の国会議員も参加をいたしまして原告団による報告集会が行われました。その際にも原告の方が大変強調していたのは、これは自分たちだけの問題ではないということなんです。集団予防接種の際に注射器の使い回しが放置をされた、その間に予防接種を受けた国民みんなが肝炎ウイルスに感染する危険性にさらされたんだと。本来、謝罪は国民全体に行われるべきだというのが原告の皆さんの強い要望でした。
是非、大臣、広く国民に、このB型肝炎がなぜ広範に蔓延をしたのかと、原告団だけじゃないんです、国民みんなが危険にさらされたんだと、こういうことを含めて、きちんと国の行政責任を説明するべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(細川律夫君) 六月の二十八日でありますが、原告団の皆さんと国が合意をいたしました基本合意書、そこに昭和二十三年から昭和六十三年までの間に、集団予防接種における注射器の連続使用、これによって多数の方々に感染の危険が生じたこと、国が被害の発生、拡大を防止をしなかったことにより数十万人とも推定される方々の感染被害が生じたと、こういうことをこの基本合意書の中にしっかり明記をいたしております。
したがって、この基本合意書につきましては、厚生労働省のホームページにも掲載をして広く国民の皆様方に周知を図っているところでございます。また、今後作成されますこの和解というのがございます。その予定される和解についてのいろいろな手続とか内容とか、そういうことについても、パンフレットとかリーフレットを作成して配るように考えております。そういうところにも、これらについてのことについて明記をしていくということも考えているところでございます。
○田村智子君 国民を広く危険にさらしたんですよね。だから、かかってない人、国民に対してみんなでその費用負担しましょう、だから増税ですなんというのは全くお門違いな言い方だと私も思っているんです。
特に、七百名の原告団に対して支払われる和解金等は総額で百数十億円だと、これで増税が必要なんということは絶対にあり得ないんです。三・二兆円という額も今後三十年間の最大予測の数字です。これをもってして増税と結び付けて宣伝をするようなことは、私はもう厳に慎むべきでやるべきではないと、三十年で三・二兆円、増税ではない政策を検討することは可能だと、このことも強く申し上げて、質問を終わります。