日本共産党 田村智子
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【11.05.19】厚生労働委員会――生肉の食中毒事件について

国内生産の食品には国の監視体制がない

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 生肉による集団食中毒は、四人が亡くなり、五月十六日現在でもいまだ二十四人の方が入院をし、うち二十二人が重症という、本当に重大な事件です。亡くなった子供さんはほんの一口味見をしただけだと報道もされていて、御家族の悲しみや苦しみはどれほどのものかと思います。こうした危険な食品を提供した焼き肉店や食肉卸業者に重大な責任があることは言うまでもありませんが、国や自治体の食の安全に対する指導監督がどうだったのか、これも問われていると思います。
 まずお聞きします。食中毒事件は毎年一千件から一千五百件起きていますが、そのうち生肉による食中毒の発生はどれだけあるのか、過去三年間、件数と患者数でお答えください。

○(医薬食品局食品安全部長)梅田勝君 過去三年間の食肉の生食、生で食べることによる食中毒は、平成二十年には事件数五十四件、患者数は六百十六名、平成二十一年には五十二件、患者数は三百九十一名、平成二十二年には事件数四十四件、患者数三百六十一名でございます。

○田村智子君 今回のような重大事件がいつ起きてもおかしくないということだったと思います。
 そこでお聞きしますが、厚生労働省は、今回の食中毒事件発生以降、この事件を起こした焼き肉店やその本社、あるいは牛肉を販売した食肉卸業者に対して直接の行政指導や監督を行いましたか。

○政府参考人(梅田勝君) 食品衛生法に基づく食中毒調査やこれに伴う飲食店等の監視指導については、都道府県等が処理することとされておる事務でございます。
 今回の事例につきましても、関係自治体が、食中毒の原因究明の観点から疫学調査及び細菌調査を実施するとともに、営業自粛や停止等、必要な指導、処分を行っております。
 厚生労働省といたしましては、危害拡大防止の観点から、被害状況や関係食品の流通状況の調査を要請しているところでございまして、自治体の要請に基づき、国立感染症研究所による患者から検出したO111やO157の遺伝子型の解析、疫学の専門家の現地への派遣等、調査等を支援しているところでございます。

○田村智子君 直接の指導や監督は行っていないと。保健所も自治事務として行っているんですよ。
 じゃ次に、厚生労働省は、生食用の肉が非常に流通していると、このことを報道されて、焼き肉の業界とか食肉卸の業界などに対して直接何らかの行政指導を行っていますか。

○政府参考人(梅田勝君) 今回の食中毒事例発生後、都道府県知事等に対しまして、生食用の食肉を取り扱う施設に対する緊急監視の実施通知、及び生食用食肉を取り扱う飲食店においては生食用の加工を行った施設等の情報を店内に掲示するよう指導する旨の通知を出しました。
 また、関係団体に対しましては、これは日本食品衛生協会とか食品産業センター等でございますが、これらには、農林水産省の協力も得て、これらの通知の内容について会員への周知を依頼したところでございます。
 今後も必要に応じて関係団体を通じて営業者への周知を要請していきたいと考えております。

○田村智子君 直接指導監督やっていないんですよ。私も農水省から資料もらったんですけれども、農水省が厚労省の通知を業界に通知しているんです。
 食品衛生法では、厚生労働省の食品検査の体制は輸入食品に限定をされていて、国内で流通する食品の衛生管理について監視指導、これは全て都道府県に任されているんです。私はここに大きな問題があると思います。
 これまで直接指導監視していた方々というのは、生肉の危険性、これ非常に危機感持っていたと思うんです。だから、都道府県などの担当者でつくる全国食品衛生主管課長連絡協議会、二〇〇二年以降毎年、ガイドラインではなく、通知でもなく、法規制によって生肉の規制やってほしいと厚生労働省に要望していたんですけれども、厚労省は直接指導監視やっていないですからね。私は、その危機感が正しく伝わっていなかったんじゃないのか、それが法規制を棚上げしてきた一つの原因ではないかと考えています。
 大臣、これ所感でいいですからお聞きしますけれども、これだけの事件が起きても厚生労働省は、都道府県に通知出しているという、これだけなんですよ、直接の行政指導やっていないんですよ。この仕組みに問題があるとは思われませんか。

○国務大臣(細川律夫君) 今回の食中毒事件、このように四人も亡くなる、そしてまた重篤な方もたくさんまだおられるというようなこういう事件が起こったことについては、これは私も反省もいたしているところでございます。
 今部長が申し上げたように、これらの食品に関する事項については、食品衛生法では都道府県がこの処理をすると、こういうことになっておりまして、食中毒事件が起こってから食品衛生法に基づいて厚生労働省の方に報告をすると、報告を受けたらその原因はどうなのか、その被害状況やあるいは関係食品の流通関係などの調査をまた都道府県に調査を要請をする、そして専門家を厚生労働省の方は派遣をして、そしてその調査についてのいろんな協力をすると、こういうような法律構成になっておりまして、厚生労働省としては、自治体の行う監視指導が適切に行われるよう、食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針というのを定めるとともに、監視指導の実施に関する助言を行う等の必要な協力を行ってきていると、こういうことでございます。
 ただ、事が起こってから報告を受けて監視をしていくと、こういうことでは再発防止に完全ではないというふうに思いますので、今回、この基準を改正をいたしまして、法律上しっかりした処分ができるような強制力のある改正にしていきたいと、こういうふうに考えておるところでございます。

○田村智子君 罰則付けるだけでは、私、駄目だと思うんですね。
 今回の事件を起こした焼き肉店は、四県に店を持つチェーン店です。そのうち、金沢市内の五店舗については、昨年の時点で金沢市の保健所が生肉提供の場合はトリミングをするようにと指導をしています。ところが、運営をする本社のフーズ・フォーラス、ここに対して指導はやっていないんです。なぜかというと、フーズ・フォーラスは肉は扱っていません、コンピューター扱っているんです。で、本社の方から結局トリミングやるんだという指示が何ら出されないまま今回の事件起きたんですよ。だから、今の仕組みそのものもやっぱり考えなければいけないと思うんです。
 たとえ罰則作っても、これ相変わらず店舗への監督がそれぞれの保健所に任せられていると。一斉に他県の店舗を、例えばチェーン店ですね、調査するとか指導監視するとか、こういう保証ないです。しかも、直接食品を扱っていない運営する本社に対しては穴が空いてしまうんですよ。だから、私は厚生労働省に、全国の店に直接入ってということを別に今求めていません。せめて、今やもう焼き肉業界というのはチェーン店当たり前なんですよ、本社があるんですよ。飲食業界ってもうそれ当たり前になっています。であるならば、その本社に対しての情報を厚生労働省自身がつかんで、そしてそこに対する指導監査を行うという、これ食品衛生法の改正も含めた検討をやる必要があるんじゃないかと、このことを提案したいんですが、大臣、簡潔でいいのでお答えをいただきたいと思います。

○国務大臣(細川律夫君) 今回も、これは富山県で発生をして、本社の方の石川県の方では発生していなかったわけですね。しかし、厚生労働省としては、これは本社が石川県であるということで、石川県の方に対してもしっかり調査をするようにという、そういう指示もさせていただいておりまして、今回ももちろん本社を含めた形でいろいろと対応をさせていただいております。ただ、委員が言われるような、こういうチェーン店なんかでは本社を含めた監視は必要だと、これはもう私も同じような認識でございます。
 先ほども申し上げましたように、法律によって規制をいたしますと、今度は食中毒というそういう結果が起こらなくても、その基準に従っていろいろとやっていなければ、それに対して刑事的な処分とそれから行政的な処分もできると、こういう形にいたしますから、それは相当私は効果があるんではないかと、こういうふうに考えております。

○田村智子君 農水省などは、食品の規格についてJAS法で自ら指導監督する権限持ってやっているんですよ。もちろん、事を未然に起こさないための罰則規定必要ですけれども、私はそれだけでなく、もっと厚生労働省責任果たすべきだと重ねて強く要望したいと思います。

食品衛生監視員は総数でたった7820人

 じゃ、都道府県しっかりやっているというお話なんですけれども、次に、その指導監督の体制についてお聞きをいたします。
 食品衛生の監視指導を行う衛生監視員、これ保健所の職員なんですけれども、これは総数で何人いるのか、そのうち専任で衛生監視の任に就いている人数はどれだけか、その配置について基準というのがあるのかどうか、お答えください。

○政府参考人(梅田勝君) 保健・衛生行政業務報告によりますと、平成二十一年度における都道府県の食品衛生監視員数は総数七千八百二十名でございます。そのうち、専従者は千三百四十三名、また、兼務ではございますが、主にその職種に従事している者が二千二十五名でございます。
 また、その配置基準でございますが、これは食品衛生法第二十二条に基づき定められた食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針において、都道府県等は、都道府県等食品衛生監視指導計画に基づき必要な監視指導ができるよう、保健所及び食肉衛生検査所等の試験検査実施機関の体制を整備するとともに、食品衛生監視員、と畜検査員等の人員を確保を図ることとしております。
 なお、管内の食品営業施設数や地域ごとの状況に応じた監視指導計画の実施に必要な人員の確保は自治体において処理するべき業務とされておりまして、各自治体において適切に対応されていると考えております。

○田村智子君 国に配置の基準がないということなんですね。
 それじゃ、もう一点だけ数字をお聞きしますけれども、今、総数で七千八百二十人と、その皆さんが年間監視指導している件数はどれだけありますか。

○政府参考人(梅田勝君) 監視指導の延べ施設数は三百三十九万三千七百九十五件でございます。

○田村智子君 たった七千八百二十人でこれ指導監査したのは三百五十二万あるんですね。それだけの検査扱っているんですよ。
 実は、事件が起きた富山でいうと、監視指導員は九十七人です。専任の方はいません。東京に食肉の卸業者、板橋区、大和屋商店あります。じゃ、この大和屋商店にはいつ審査に入ったか。これ、お聞きしたら三年前だそうです。これで未然に防ぐという体制が本当にできるのかどうかということを私は真剣に考えなければならないと思うんですね。
 一番大勢配置しているのは東京都ですけれども、全体で七百一人いるんですね。行っている指導監査の件数は年間七十万件超えているわけですよ。そうなったら、これは一体どういう指導ですかと、どういう監査ですかと。書類のチェックして、ぱっと見て終わってしまいますよ。トリミングしているかどうかなんて分からないですよ。
 となると、もっと国がこの衛生監視の体制どうやるのか、これ都道府県とも協議をして、ふさわしい基準ということも考えていくこと必要ではないでしょうか。最後に大臣、お答えいただいて、質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(細川律夫君) この都道府県の食品衛生の監視体制の整備につきましては、これは都道府県が行っておりますから、食品衛生法、これに基づきまして、厚生労働省の告示におきまして、都道府県等は検査機関の体制をしっかり整備をすると、そして食品衛生監視等の人員の確保を図ると、こういうことを告示でやっております。
 そして、これらの体制について、じゃ、財政面でどのような協力をしているかと、これにつきましては、これは人件費等については地方交付税の措置を行うということ、それから、市場なんかの検査所での器具なんかについての補助金などを国の方はやっております。
 ただ、今言われたように、少ないので、これについては都道府県の方にもっと増やしてやるようなということについては私の方から督促をしたいというふうに思います。