【11.04.12】厚生労働委員会――雇用・能力開発機構廃止法案 反対討論
○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、独立行政法人雇用・能力開発機構廃止法案及び二つの修正案に反対の立場で討論を行います。
反対の理由の第一は、本法案が公共職業訓練に対する国の責任を大きく後退させるものだからです。
日本国憲法第二十七条は国民の勤労の権利を保障し、ILO百四十二号条約では公的職業訓練を量的、質的に充実、発展させることが批准国に要請されています。かつてない深刻な雇用情勢の下、国が質の高い職業訓練の機会を国民に広く保障することこそ求められています。
しかし、政府は、地域の中小企業の中核的な人材育成に大きな役割を果たしてきた地域職業訓練センターやコンピュータ・カレッジを既に地方自治体に譲渡し、廃止を進めてきました。その上、今回、評価の高い職業訓練を行ってきたポリテクセンター、若者を対象に二年ないし四年のカリキュラムで優れた教育を行ってきたポリテクカレッジを都道府県に移管することは、公共職業訓練に対する国の責任を一層後退させるものと言わざるを得ません。みんなの党の修正案は、都道府県移管どころか、これらを全廃するものであり、到底賛成できません。
第二に、雇用・能力開発機構の廃止によって、同機構の職員全員について雇用を承継せず、一旦解雇した上で新機構が選別採用するとしたことは、雇用を守るべき労働行政が法律によって解雇を強行するもので断じて容認できません。
独立行政法人の整理統合方針の下、二〇〇六年一月以降、廃止、統合された非公務員型の独立行政法人は九つありますが、談合事件が問題となり、解体的出直しをするとして廃止された緑資源機構を含め、いずれの場合も職員の雇用契約は全て承継されています。本法案が成立すれば雇用承継が行われない初めての事案となり、今後、独立行政法人の整理統合を進める際に法律で職員の解雇を認めるというとんでもない先例となりかねません。これは労働行政の在り方にかかわる重大な問題です。
最後に、三月十一日に発生した東日本大震災により東北地方では産業の基盤が大きく喪失しました。また、仕事を失った被災者、人生の進路を突然断ち切られた若者たちが大勢います。震災復興は国を挙げて力を注ぐべきであり、震災前に作られた雇用・能力開発機構廃止の方針は撤回し、同機構が総力を挙げて職業訓練、教育に取り組むことを強く求め、反対討論を終わります。