日本共産党 田村智子
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【11.04.12】厚生労働委員会――雇用・能力開発機構廃止法案の審議

すぐれた公共職業訓練は拡充こそ必要

○田村智子君 日本共産党の田村智子です。
 大震災からの復興は被災により仕事を失った方々や若い皆さんの働く力に懸かっていて、職業能力開発の事業はますます重要になっていると考えます。まず、被災地の公共職業訓練への補助を求めたいと思うんです。
 既に昨年度までに地域職業訓練センターとコンピュータ・カレッジは地方移管をしてしまいましたが、今回の震災で東北地方ではこれらの五つの施設が被災したと聞いています。また、宮城県の知事からは、四月六日付けで宮城県の県立職業訓練施設や設備への支援も是非国として行ってほしいと、こういうふうに要望もされています。
 一日も早い機能回復へ国の責任でしっかりとした支援、行うべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○副大臣(小宮山洋子君) 地域職業訓練センターと、それから情報処理技能者養成施設、コンピュータ・カレッジ、特に被害が集中いたしました五県に十五の施設が設置されておりまして、このうち四県の九施設に被害が生じています。
 厚生労働省としましては、平成二十三年度からの三年間の激変緩和措置として、地域職業訓練センター等の修繕費用等について全額負担を行うこととしております。
 施設の被災状況をお伺いいたしまして、被害状況を踏まえて必要な対策についてしっかりと対応していきたいと考えています。

○田村智子君 県立の施設についても是非支援をお願いしたいと思います。
 今回の法案は、雇用・能力開発機構が直接行ってきた職業訓練や教育をできるだけ地方や民間に委ねていくという二〇〇八年十二月の自民・公明政権時の閣議決定に沿って、国の職業訓練事業をスリム化しようというものです。これは、大災害を受けてなおこの方針でよいのかと、私は、先ほどの質問とは逆の立場での大胆な見直しが必要だと思っています。津波で大きな被害を受けた岩手県、宮城県には、職業能力開発促進センター、いわゆるポリテクセンターがそれぞれ一か所、そして、職業能力開発大学校、ポリテクカレッジは東北地方には宮城県に一か所だけしかありません。これらを地方移管するという事態ではないと思います。
 被災者の求職活動や被災地の高校生たちの進路を応援する上では、国がむしろ増設をして職業能力開発の場を保障するんだと、それぐらいの取組が必要だと考えますが、いかがでしょうか。

○副大臣(小宮山洋子君) この度の大震災で離職をした方が早く再就職をなさるためには職業訓練というのは本当に大事だというふうに考えています。地域の訓練ニーズ踏まえながら、被災地域や被災者の受入先の地域で被災者向けの特別コースの設定、例えば、瓦れきを除去するのに建設機械を運転をする、そのような訓練ですとか、様々な公的な職業訓練を機動的に拡充、実施をしていきたいというふうに考えています。
 被災者の就業の促進、被災地の振興のための職業訓練の推進に当たりましては、国と雇用・能力開発機構がイニシアチブを取りまして、都道府県や民間教育訓練機関等と一体となって職業訓練の実施に取り組んでいきたいと考えております。
 今後、雇用・能力開発機構で実施している職業能力開発業務につきましては、高齢・障害・求職者雇用支援機構に移管する等、雇用のセーフティーネットの維持、物づくり産業に必要となる人材の育成等の関係から、国の責任で職業訓練を実施する体制をしっかりと整備をしていきたいと考えております。

○田村智子君 私がこの機構でというふうに求めているのは、やはり他の公共職業訓練あるいは民間と比べても、雇用・能力開発機構が行ってきた職業訓練というのは大変質的に高いものがあって、大変高く評価をされているものだからです。
 平成二十年度の業務実績評価を見ても、離職者訓練では、訓練修了後三か月以内に八割近くが就職をしていて、そのほとんどは正規雇用だと聞いています。
 委員長、どうしましょうか。一度中断をしましょうか。
(緊急地震速報の警報音が委員会室に鳴り響く)

○委員長(津田弥太郎君) 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
(地震の揺れがおさまるまで審議中断)

○委員長(津田弥太郎君) 速記を起こしてください。

○田村智子君 離職者訓練では、訓練修了後三か月以内に八割近くが就職をしていて、しかもそのほとんどが正規雇用だと。在職者訓練でも、受講生、事業主とも九八%、ほぼ一〇〇%が能力の向上に役立ったとアンケートに回答しています。
 私も、横浜市にあるポリテクセンター関東を視察しましたけれども、最新の金型の機械が何台も並んでいたり、あるいは、ビル設備の科目では実物大のビルの配管模型があったり、建築関係の科目では体育館の中で家屋の一部を実際に建設するなど、やはり国が保証してこその設備の質と規模だと実感をしました。
 都道府県が単独でこれだけの設備を維持拡充できるという保証があるのかどうか、まずお答えいただきたいと思います。

○副大臣(小宮山洋子君) 委員のお話にありましたように、評価委員会からは、その目標値を上回る成果を上げているというふうに評価をしていただいています。
 今回、ポリテクセンター等の移管は、雇用のセーフティーネットとしての職業訓練を国の責任で実施する必要がある、その機能の維持を前提に移管をするというものです。仮に、都道府県に譲渡されましたポリテクセンター等が譲渡後に都道府県立職業能力開発校との統合等によりましてその機能を維持できないという場合には、都道府県に対してポリテクセンター等としての補助が行われないということになってしまいます。
 そのような状況が生じないように、国としては、高率補助期間中から都道府県に譲渡されるポリテクセンター等に財政支援をしっかりと行うほか、職業能力開発総合大学校におきます訓練指導員のスキルアップ訓練の実施や訓練カリキュラム等のノウハウの提供などの取組を行いまして、ポリテクセンター等の機能が維持されるよう精いっぱい努めていきたいというふうに考えています。

○田村智子君 実際、都道府県立の職業訓練校を見ても、例えば東京では、九八年十七校あったものが現在十二校。更に一校廃止される計画です。神奈川県も、集約化だといって、十校あったものが五校になり、更に二校になってしまうと。こういう流れの中で地方移管を進めれば、やはり全体として新たな統廃合というものを加速させかねないというふうに思うんですね。そうならないという保証はないわけです。
 設備だけでなく、現在のポリテクセンターやポリテクカレッジでは指導員の役割も非常に大きいものがあります。受講生は基礎的な知識もばらばらで、こういう方々をお一人の漏れなく指導をする、また自らも最新の技術や知識を身に付ける、これには相当な研さんが求められます。
 指導員は、挫折を経験した受講生も多い中で、どうやって自己肯定感を育てていくか、また、クラス全員が連帯意識を持ちながら、みんなで就職するんだという、こういうモチベーションも上げるという指導をしておられるんですね。この努力が受講生の就労意欲を育てて、高い就労率に結び付いているんだと思います。
 ところが、この指導員が、二〇〇九年度には二千五十二人いたものが、今年度は、先ほど説明あったように一千八百二十二人。二年間で一割以上、二百三十人も削減をされています。指導員の削減によって、職業能力開発の講座あるいは受講生の規模が縮小されていくということにはならないんでしょうか。

○副大臣(小宮山洋子君) この新しい機構でポリテクセンター等の指導員の数や予算は効率化をいたしますけれども、指導員に対しまして再訓練を実施して各指導員の担当できる訓練の範囲を広げる、守備範囲を広げるということですね、一つの訓練科をより多くの指導員が担当できる体制を整備することなどによりまして、効率的、効果的な訓練を実施することにしています。こうした対応によりまして、機構の施設内で実施する平成二十三年度の職業訓練の計画数は、平成二十二年度と同じ、およそ九万四千人の水準を維持します。
 指導員の能力アップをしっかりと図りまして、機構で実施する職業訓練の質と量を確保していきたいと考えています。

○田村智子君 講座や受講生の数をそのままということは、一人の指導員の授業数が増えたり、一クラスの人数が増えるということです。
 現状でも、指導員の方にお話を聞きますと、自主的な残業は毎日のようにあると。また、本来国は一年ごとに再訓練の機会を持ってほしいという方針持っているはずですけれども、指導員の方で再訓練が今受けられているのも半分にも満ちていないわけです。しかも、これを都道府県に移管をしますと、現在は全国ネットですから、人事交流が全国ネットで行われていて、これが指導員自らの技量アップにも結び付いている、これを閉ざすことにもなってしまうんですね。
 だから、受講のニーズにはこたえますと言うけれども、質的なやっぱり拡充ということは、やはり人数を減らす下ではこれは矛盾が大き過ぎるということを指摘したいと思います。
 更に重大なのは、これだけ大きな役割を果たしてきた指導員の雇用が一旦打ち切られるということです。
 昨年、私は職業能力開発総合大学校の小平校、視察をいたしました。雇用が承継されないということをどう受け止めていますかと率直に聞いてみましたら、校長は言葉を詰まらせました。解雇という言葉の衝撃は余りにも大きいというのが言葉を詰まらせた後でのお言葉でした。
 四年間掛けて職業能力開発を行うこの小平校では、実は三年次からは、専門科の枠を超えて受講生たちがチームをつくって、自ら発案をし、設計をして産業ロボットなどを作る、新しい機械やシステムを開発するという大変質の高い講義を行っています。これは職場でのコミュニケーションづくりを想定したもので、学校教育の中でも立ち遅れている分野にまさに果敢に挑んでいるなと非常に感心をいたしました。これも指導員の皆さんの長年の実践の中で作り上げてきたプログラムです。
 これだけ大きな役割を果たし、実績も上げてきた指導員をなぜ全員解雇するのか。これは大臣が解雇するわけです。雇用を守るべき大臣が何ら責めを負うべきでない指導員たちを解雇する、この事態の重さを大臣はどのように受け止めておられますか。

○国務大臣(細川律夫君) この雇用・能力開発機構、これはこれまでに、私のしごと館あるいはスパウザ小田原とかいろいろな施設の設置、運営の在り方につきまして、与野党をこれは問わず、また国民の皆さんからも大変厳しい批判を浴びてきたところでございます。そのため、今般の見直しにおきましては、この機構を廃止するとともに、組織を抜本的に見直しまして解体的に出直しを行うということにしたところでございます。したがって、職員との労働契約につきましても採用方式を取るということにしたものでございます。
 厚生労働省としましては、この雇用・能力開発機構の廃止と業務の移管に際しましては、職員の雇用問題には十分配慮しなければいけない、重要な問題だというふうに考えておりまして、意欲や能力のある職員につきましては雇用問題が生じることのないように雇用には最大の配慮を行っていきたいと、こういうふうに考えております。

○田村智子君 私のしごと館など批判の多かった分野は既にもう廃止をしているわけですね。ポリテクセンターやポリテクカレッジというのは全くそれとは別の分野です。
 私、実際に授業の様子も見てみて、この指導員、若い方もいっぱいおられます、ベテランの方もいっぱいおられます。その一人一人を解雇する合理的な理由というのは一切これないと言っていいと思うんですね。大体、他の職業訓練と比べても、これだけ高い就職率を誇っていると。その皆さんたちには、何ら解雇されるべき合理的な理由はないわけです。それを法律によって一方的に解雇をすると。これは、労働行政にとっても、また本委員会にとっても、まさに私は禍根を残すものだというふうに言わなければならないと思います。
 このことを申し上げまして、残された時間で被災者の支援について何点か取り上げたいと思います。

被災地支援 雇用創出・仮設診療所の建設など

 被災者支援の当面の雇用対策としては、雇用創出基金事業を使って、重機を使わないような瓦れきの撤去であるとか、あるいは避難所での子供の一時預かりや高齢者の見守り、高齢者の家の片付けなど、いわゆる失業対策としての賃金補償をすると、このことが方針としても示されております。私たちもこれは大変評価をしております。
 既に、岩手県では臨時職員五十人を基金の事業で配置したということも聞いています。しかし、既にこの雇用創出基金の事業というのは震災前に都道府県の中ではこれもう具体化を進めていて、こういう分野で使うんだということを決めてきているわけですね。そうすると、基金の残金というのもこれは非常に心もとない。例えば青森県では既に四千万円しかないと、財源不足を心配する声が起こってきています。
 是非、第一次補正の予算で雇用創出基金の大幅な積み増しということを行ってほしいと思うんですが、いかがでしょうか。

○副大臣(小宮山洋子君) 委員御紹介いただきましたように、本当にあらゆる仕事と言ってもいいほど、幅広く震災対応ということで、今回、第一段階の緊急対策としてそうしたものを基金で県ができるようにいたしました。それについては、現在、新しい年度の予算にはなっていますけれども、この後もそのニーズを踏まえて、第一次補正のみならず、その先まで含めて必要な積み増しということも考えていきたいと思っています。
 私も先週末、大船渡や久慈へ行ってまいりましたけれども、基金を、こういう基金事業をつくったんですけれども、まだ県の方で、一部岩手県とか幾つかのところでは実施をしておりますが、まだ周知されていない部分もありますので、それぞれの県の中でしごと協議会をつくって、雇用を創出することも含めて、この基金が活用されるようにしっかりと皆さんに伝わるようにすると同時に、必要な財源も確保してまいりたいと思っております。

○田村智子君 この基金事業は、同時に年度の緩和も県知事からの要望の中にあると思います。今年度で終了ということではなく、是非二年、三年ぐらいのスパンで基金事業を行ってほしいという要望もありますけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(小宮山洋子君) 基金というと単年度になりますけれども、そこはいろいろと工夫をいたしまして、雇用をつないでいけるように、また委員の御意見もいただきながら検討をしてまいりたいと思います。

○田村智子君 本当に震災の復興というのは、被災地の方々がどれだけ仕事を得ることができるかと。元に戻るようですけれども、それも目の前の仕事だけではなくて、特に若い皆さんにとっては、職業能力の開発をして、その突然断たれた進路を次につなげることができるようにと、そういうことを含めての事業が求められていると思いますので、是非、これまでの枠を超えた支援を求めたいと思います。
 もう一点、被災地の医療の問題についても要望したいと思います。
 先日、NHKの報道番組を見ていましたら、被災地の開業医の被災の状況というのが報道をされていました。全て病院も流されてしまったと。この開業医の方が避難所を回って、自分がこれまで診ていた患者さんの安否の確認をすると、こんな場面も出ていたんですけれども、東北の地方、高齢化が進んでいて、災害が起こる前も、この開業医の皆さんが地域を支えて、慢性疾患の患者さんのまさによりどころになっていたと思うんです。
 これは、建物を建てるだけでも大変な予算が掛かり、また医療の機器を買い換えるとなると、これ億単位のやっぱり資産が必要になってくるわけです。これ、開業医さんの個人の努力ではとても再開することは難しいんじゃないかと思うんですね。それで、再開に努力をしている、再開をしたいというふうに言っている開業医さんへは、これまでの枠を超えた支援ということを検討すべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○副大臣(大塚耕平君) 御指摘の点も重要な検討課題ということで、私どものみならず関係省庁も認識をしておりますので、しっかり議論をさせていただきたいというふうに思います。

○田村智子君 昨日、厚生労働省の担当官の方にお聞きをしましたら、阪神・淡路大震災のときの枠を参考にというふうにおっしゃっていたんですね。
 しかし、阪神・淡路大震災のときには災害復旧費という仕組みがありました。しかし、これは民間病院の救急部門に限定をされていました。
 また、医療施設近代化施設整備事業というのでも支援をするというふうになっていたんですけれども、これも、例えば病院の施設の名義が法人の名義と一致していなければならないとか、政策医療の中に加わっていなければならないとか、こういう極めて限定的だったわけです。開業医さんの中には、土地や建物は個人の持ち物だという開業医さんも大勢いらっしゃいますし、政策医療といっても、例えばその地域で産科医が一人しかいなかったら、それは政策医療の仕組みの中にそもそも入れないわけですね。
 結果として、阪神・淡路のときには、開業医の方は一割に満たなかったというんですね、支援を受けられたのは。となれば、やはりこれは、阪神・淡路のときを参考にするのではなくて、阪神・淡路のときに足りなかったことが何なのか、この視点に立って開業医の方々への支援策というのを是非講じてほしいと思うんですけれども、もう一度御答弁いただけないでしょうか。

○副大臣(大塚耕平君) もちろん、阪神・淡路のときを参考にしつつ、今回のこの被害に見合った対策を講じなくてはいけないと思います。私も阪神・淡路のときに現地へ行きましたけれども、地理的にもちょっと違う環境にあります。阪神・淡路のときには大阪とかそちらの地域に出ることができるような地理的環境でしたが、今回の被災地はほとんど北上山地と海に挟まれているような地域であったりしますので、今日の高階委員の御質問とも関係しますけれども、一次医療圏の復旧というのは今までの発想ではできないかもしれませんので、しっかり対応させていただきたいと思います。

○委員長(津田弥太郎君) 時間になっております。田村智子君、おまとめください。

○田村智子君 はい。
 そのNHKの番組の中でも、お医者さん回っていったら、もう患者さんが涙を流して、やっと安心できたというような場面も流れたわけです。是非、開業医の皆さんの要望を丁寧に聞き取って、それにこたえていただきたいと思います。
 終わります。