日本共産党 田村智子
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【10.08.08】国立塩原視力障害センターの存続に関する質問主意書

国立塩原視力障害センターの存続に関する質問主意書

質問第三一号

国立塩原視力障害センターの存続に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十二年八月六日

田 村 智 子   


       参議院議長 西 岡 武 夫 殿




   国立塩原視力障害センターの存続に関する質問主意書

 政府は昨年、国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局塩原視力障害センター(以下「国立塩原視力障害センター」という。)と国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局伊東重度障害者センター(以下「国立伊東重度障害者センター」という。)の廃止の方針を打ち出し、利用者やOB、障害者団体が強く反対しているにもかかわらず、現在までその方針を変えていない。そして、国立塩原視力障害センターの理療教育課程については、廃止を前提として来年度の利用者募集の停止を本年八月にも決定しようとしている。
 国立塩原視力障害センターは昭和二十一年、中途失明者更生施設として開設された。以来六十四年間、東北、信越、北関東地域に唯一つしかない、中途視覚障害者の生活訓練と就労移行支援(理療教育)の両方を兼ね備えた施設として、点字・歩行などの自立訓練、按摩・鍼・灸師養成及び生活施設を提供し、約三千人を社会復帰させてきた。このように中途失明者の所得保障・就労促進のため同センターの役割は今日いっそう重要になっており、廃止ではなく拡充こそ求められている。
 その立場から以下質問する。

一 国立塩原視力障害センターの理療教育課程利用者の過去十年間の推移について、①高等課程・専門課程ごとの数、②学年ごとの数を示しつつ、年ごとに明らかにされたい。

二 障害者自立支援法施行後に大幅に利用者が落ち込んでいるが、これは同法による利用者負担増が原因の一つと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 国立塩原視力障害センター、国立伊東重度障害者センターの廃止の方針は、前政権の下で設置され障害者自立支援法の存続を前提として検討を進めてきた「国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会」(以下「検討会」という。)の結論を受けて決定されたものだが、「検討会」に視覚障害者、頸髄損傷者といった障害当事者は委員として参加しているのか。

四 現政権は障害者自立支援法の廃止と障害者施策の策定を障害当事者参加の下で進めるという方針を掲げている。事実、内閣府に設置された「障がい者制度改革推進本部」では多くの当事者が参加して障害者自立支援法廃止後の総合福祉法の検討を進めている。
 国立塩原視力障害センター、国立伊東重度障害者センターの廃止について、両センターが主な支援の対象としている視覚障害者、頸髄損傷者などの当事者団体をはじめ、広範な障害当事者団体、国立更生援護機関の利用者団体など各方面から反対の声が寄せられている。視覚障害者、頸髄損傷者の参加がないまま検討が進められ廃止が決定された経緯に照らして、国立塩原視力障害センターと国立伊東重度障害者センターの廃止を白紙に戻し、「障がい者制度改革推進本部」の下、「検討会」に参加していなかった視覚障害者、頸髄損傷者をはじめ、国立更生援護機関の利用者団体の代表など関係当事者全てが参加する中で、国立更生援護機関の今後のあり方について改めて検討すべきではないか。

  右質問する。

参議院議員田村智子君提出国立塩原視力障害センターの存続に関する質問に対する答弁書

答弁書第三一号

                         内閣参質一七五第三一号
                         平成二十二年八月二十日
内閣総理大臣 菅   直  人   


       参議院議長 西 岡 武 夫 殿

参議院議員田村智子君提出国立塩原視力障害センターの存続に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



参議院議員田村智子君提出国立塩原視力障害センターの存続に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局塩原視力障害センター(以下「塩原視力障害センター」という。)の就労移行支援(養成施設)理療教育課程(以下「理療教育課程」という。)に置かれているあん摩マッサージ指圧、はり、きゅう科高等課程の利用者は、平成十二年度が第一学年十人、第二学年十人、第三学年八人、第四学年四人及び第五学年五人の合計三十七人、平成十三年度が第一学年十一人、第二学年八人、第三学年九人、第四学年二人及び第五学年三人の合計三十三人、平成十四年度が第一学年十人、第二学年十一人、第三学年七人、第四学年四人及び第五学年二人の合計三十四人、平成十五年度が第一学年九人、第二学年七人、第三学年十人、第四学年五人及び第五学年三人の合計三十四人、平成十六年度が第一学年九人、第二学年七人、第三学年七人、第四学年八人及び第五学年三人の合計三十四人、平成十七年度が第一学年三人、第二学年三人、第三学年七人、第四学年六人及び第五学年二人の合計二十一人、平成十八年度が第一学年二人、第二学年三人、第三学年一人、第四学年二人及び第五学年五人の合計十三人、平成十九年度が第一学年五人、第二学年二人、第三学年三人、第四学年一人及び第五学年二人の合計十三人、平成二十年度が第一学年零人、第二学年一人、第三学年三人、第四学年零人及び第五学年一人の合計五人、平成二十一年度が第一学年零人、第二学年零人、第三学年一人、第四学年一人及び第五学年零人の合計二人である。
 また、理療教育課程に置かれているあん摩マッサージ指圧、はり、きゅう科専門課程の利用者は、平成十二年度が第一学年十九人、第二学年二十人及び第三学年十四人の合計五十三人、平成十三年度が第一学年十八人、第二学年十八人及び第三学年十九人の合計五十五人、平成十四年度が第一学年二十六人、第二学年十五人及び第三学年十七人の合計五十八人、平成十五年度が第一学年十六人、第二学年二十五人及び第三学年十五人の合計五十六人、平成十六年度が第一学年十六人、第二学年十四人及び第三学年二十五人の合計五十五人、平成十七年度が第一学年二十一人、第二学年十三人及び第三学年十一人の合計四十五人、平成十八年度が第一学年十二人、第二学年十三人及び第三学年九人の合計三十四人、平成十九年度が第一学年七人、第二学年八人及び第三学年十二人の合計二十七人、平成二十年度が第一学年十一人、第二学年六人及び第三学年六人の合計二十三人、平成二十一年度が第一学年八人、第二学年九人及び第三学年五人の合計二十二人である。

二について

 障害者自立支援法(平成十七年法律第百二十三号)の施行と塩原視力障害センターにおける利用者数の減少の関係については、明らかではないものと認識している。

三について

 御指摘の「国立更生援護機関の今後のあり方に関する検討会」(以下「検討会」という。)には、財団法人全日本ろうあ連盟、財団法人日本障害者リハビリテーション協会、社会福祉法人日本身体障害者団体連合会、社会福祉法人日本盲人会連合及び日本発達障害ネットワークの五つの障害者団体の代表者に委員として御参加いただいたところである。

四について

 障がい者制度改革推進本部は、「障害者の権利に関する条約」(仮称)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革を行い、関係行政機関相互の緊密な連携を確保しつつ、障害者施策の総合的かつ効果的な推進を図るために内閣に設置されているものであり、個々の施設の在り方について検討することを目的とするものではない。
 国立更生援護機関の在り方については、三についてでお答えしたとおり、障害者団体の代表者にも委員として御参加いただいた検討会において検討を行い、国立更生援護機関の利用実態等を踏まえ、全国的な視点に立って施設の統廃合を含む再配置を考えるべきであるとの提言がなされたことなどから、塩原視力障害センター及び国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局伊東重度障害者センターを所管する厚生労働省において、塩原視力障害センターの利用者が減少していること、両センター及び埼玉県にある国立障害者リハビリテーションセンターの利用者の居住地域が重複していること等を総合的に勘案し、効率的なセンターの運営を図るため、国立障害者リハビリテーションセンターへの両センターの統廃合を決めたものである。
 したがって、御指摘のような検討を行うことは考えていない。