日本共産党 田村智子
コラム

【13.03.21】TPP参加で公的医療制度はどうなるか

厚生労働委員会で田村大臣と論戦

「私は、野党時代の田村大臣と一緒に、日比谷野外音楽堂で『TPP交渉参加断固反対』の鉢巻をしめて、「がんばろう」とこぶしをかかげたことを鮮明に覚えています。
前のめりの安倍総理に田村大臣が歯止めをかけなかったことで、私も裏切られた思いです。」

質問の冒頭、大臣をしっかりと見つめながらこう言うと、大臣は決まり悪そうな苦笑い。
議場もざわざわと笑い声やささやき声が広がりました。
このことを追及する質問をしたわけではありません。いわば質問の「枕」です。
質問したのは、公的医療保険制度は交渉の対象外というが、薬価決定ルールについてアメリカは交渉の対象としているのではないか、ということ。

ところが大臣の答弁は、自分が集会に参加したことへの言い訳から始まりました。
――民主党政権のもとでは交渉力がないから参加反対ということだ。私の考えは一貫している。

質問時間が50分くらいあったら、この答弁も追及したいところです。
この間のTPP交渉参加反対の集会は「民主党政権だから」などという前提はなかった。
TPP参加が日本の農業・産業・社会保障制度を危うくすることを追及する集会だったのですから。

聞いてもいないのに、言い訳答弁をする。
しかも中身が「民主党政権だから」とは。
こんな答弁は有権者を愚弄するに等しいということが、わからないのでしょうか。

論点の一つは、アメリカ製薬メーカーに特許権のある新薬の価格が高止まりするのではないか。
これまでの日米の2国間協議でも、新薬加算の維持、加算率の上限撤廃など、新薬の薬価を高いままにするルールをアメリカは主張してきました。
オーストラリアは、アメリカとFTAを結んだことで、一部の新薬の卸値が急騰したという事実もあります。
新薬の薬価が高止まりすれば、経済的な理由からその薬を使った治療が受けられない患者さんが出てくるのではないか、薬剤費によって公的保険が財政的に圧迫されるのではないか。

もう一つの論点は、日本のなかでも公的保険の根幹にかかわる規制緩和の議論が始まっていること。
規制改革会議では、保険診療と保険外診療の併用制度の拡大が論点としてあげられました。
今でも、新しく保険適用を広げるための評価をするための評価療養として、保険診療と保険外診療の併用制度があります。
これは、保険適用の可否を評価することが目的。
この評価療養の制度を変更して、高度医療などを保険外診療のまま(高い医療費のまま)、保険診療との併用を拡大すれば、混合診療の全面解禁がなし崩し的にすすみます。

高い保険外診療をどう普及するか。
金融審議会では、生命保険の現物給付が議論のテーマになっています。
「この保険に加入していれば、いざというとき、保険のきかないこの治療が受けられます」という保険商品を売り出せるようにという議論。まさにアメリカ型の医療保険です。
民間保険が普及した診療を保険適用しようとすると、「民業圧迫」を日米の保険会社が主張して抵抗する、こういう懸念を否定できません。

大臣の答弁はというと、懸念をぶつけると、はぐらかす。
「懸念があれば留保すればいい」と開き直る。

田村憲久大臣が野党時代に書いたブログを読み上げてしまいました。
――「国益が守れなければ最後にTPP不参加を表明すればいい。」などと馬鹿なことを言っている閣僚がいるが、この最終盤で交渉に入りすぐに不参加と言えるわけがない。国際的に良識を疑われる。
――どうせ交渉に参加するつもりなら、08年、遅くても09年あたりからでないと得るものも得れない。

正論です。大賛成です。なぜこの主張を貫かないのか。
交渉次第であるかのようにごまかし、開き直り、一方で規制緩和の流れを日本でも独自にすすめる。
こんなやり方が認められるはずがありません。