日本共産党 田村智子
コラム

【13.03.08】いわき市内の仮設住宅を訪ねて

かつてない災害に、既存の支援策ではあまりに不十分

先が見えない不安がうずまく仮設住宅
あまりに大きすぎる課題の数々

視察の2日目、楢葉町のみなさんが避難している、いわき市内の仮設住宅を訪ねました。
砂利の上につくられたプレハブの長屋。
壁の薄さは一見して明らか。
寒さや暑さ、声や音などを容易に通してしまい、住民のみなさんの大きなストレスになっています。

殺風景なプレハブの列、「少しでも彩りを」という気持ちが、たくさん並べられた鉢植えや、玄関のちょっとした飾り付けにあらわれています。

集会室では、輪投げに似たゲーム、大正琴やギターの練習などが行われていました。
ほとんど女性の高齢者のみなさん。
笑顔はありますが、声をかけると涙ぐまれる方も。
「ずっとふさぎこんで、部屋から出られなかった。みなさんと音楽を楽しむようになって、やっと気持ちが少し明るくなれたんです」

集会質の外に出ると、「みんなが楽しんでいるわけじゃない。私達がどんな思いでここで暮らしているか、ちゃんと話を聞いてほしい」と、険しい顔の女性。
今回の視察は時間が細切れで、住民のみなさんと話す時間がほとんどない、そういう視察でいいのだろうかと、私も思っていました。
「国会議員は楢葉町のことは考えていないのか。だれもここに来ない」

歩きながらせめて声をお聞きしようと、住宅の外に出ておられた方に話しかけました。
「ご自宅には何回か戻られていますか?」
「週に1回か2回は行くんだけど、何にもできなくて」
「それでも空気を入れ替えたりしないと、家が傷みますものね」
「空気は入れ替えたらだめなんだ。放射能が入ってくるから。窓も開けられない」
―― 警戒区域とはそういうことなんだ、まだ私はわかっていなかった…。

「ほんとの家は、畑もあって敷地も広くて、ですよね」
「隣の音を気にすることなんてなかったからね」
「ここはつつぬけで、けんかもできないですよね」
「いらいらが募って、大きな声のけんかが始まってしまうこともあるんですよ」

仮設の店舗も二つ。スーパーはお客さんが入るそうですが、パン屋さんは高齢者のみなさんにはなじみがないようです。
生活のためには仮設の店舗やたとえば歯科診療所も必要でしょう。
けれど設置すれば、住民のみなさんは行動範囲がますます狭くなってしまう。

いわき市の中では、住民急増によって、悲しいことにいろいろな軋轢も生じているとのこと。
歯医者の予約が取れない、病院も待ち時間が長くなる、道路は渋滞…。
こうした軋轢の解決には、いわき市民と避難している住民のみなさんとの交流がもっと必要というお話も、いわき市長からお聞きしていました。

かつて経験したことのない災害を引き起こしてしまった。
原発事故は、天災ではありません。
それでは、避難した住民のみなさんへの施策はこれまでの被災者支援の枠組みでいいのか。
新しい問題が次々に起きている時に、手をこまねいていたら、被災自治体も周辺自治体も追い詰められてしまう。

宿題山積みの視察となりました。
もっとお話も率直にきかなければならないということを含めて。
これからの国会活動にどう生かすか、そして結果を出すかが、私にも鋭く問われているのだと胸に刻んでいます。