日本共産党 田村智子
コラム

【13.02.21】政府のおひざ元で脱法的な「雇い止め」

予算委員会で文科・厚労両大臣に質問

安倍内閣との最初の論戦は、予算委員会での一般的質疑(要求する大臣だけが出席)。
とりあげたのは、大学非常勤講師のみなさんからよせられた「雇い止め」問題です。

いくつかの国立大学で、非常勤の教職員を一律5年で雇い止めにすることを検討している――首都圏大学非常勤講師組合のみなさんが、私の事務所に相談にこられたのは、昨年、国会解散の前でした。
「危惧していたこと始まった」と思いました。

昨年、労働契約法が改定されました。
有期雇用の労働者が5年を超えて同じ事業所で労働契約を結んだ場合、本人の申し出があれば無期契約に転換しなければならない。
5年の起点は、今年4月1日。

無期雇用になれば、契約期間満了を理由に雇い止めすることはもちろんできません。
「解雇」となれば、合理的な理由が必要となります。
「それでは面倒なことになる」といわんばかりに、初めから「最長5年しか雇いません」と就業規則を変えてしまう。
「無期転換してください」と申し込む権利を与えないという、法の網をかいくぐるやり方です。

質問で具体的に指摘したのは、大阪大学です。
大学が特に必要と認めた場合はやむをえないが、契約期間は「5年を超えないものとする」。
すでに「3年を超えない」とされた職種以外、すべて一律「5年」にしてしまう。
大阪大学だけでなく、すでに神戸大学、早稲田大学でも同様の動きがあると情報が寄せられています。

語学講義を10年を超えて担当している非常勤講師は現在もいます。
研修医も非常勤雇用ですから、研修が終わったら1年か2年で雇い止めです。
IPS細胞の研究のように、10年スパンのプロジェクトでも研究員は5年で雇い止め。
大学のなかには任期付きや1年契約の教職員がたくさんいます。その人たちが2018年までの間に総入れ替えになったら、大学の教育・研究は大混乱です。

さすがに、文部科学大臣は、ご指摘の点はその通りと認めました。
就業規則の改定は違法ではない、しかし、大学の機能に支障をきたさないように、機械的な運用がなされないようにみていきたい、との答弁。

続いてとりあげたのは日本年金機構。
この3月末で2008人ものアシスタント職員を雇い止めにします。
理由は、社会保険庁時代にはなかった、「契約は3年上限」という条項が就業規則に入ったためです。

2000人規模の業務がなくなるのか。そうではありません。
なんと、4月に採用する予定のアシスタント職員を前倒しで2月中に雇い入れて、業務の引き継ぎを行うというのです。
これでは、人件費は2か月分2重払いになります。
そうまでして、ベテラン職員(社会保険庁時代から働いている方が多数います)を雇い止めにする必要がどこにあるのか。

田村憲久厚生労働大臣の答弁には、内心「ぶっとび」ました。
継続して雇えば、期限の定めのない雇用への期待権が生じてしまう。
期待を持たせないために契約更新に上限を設け、3年で雇い止めすると思われる。
「え〜!それを言っちゃうの?!」と心の叫び!

それではなんのために労働契約法で、無期転換のルールをつくったのか。
短期の契約であっても更新を繰り返していれば、継続して雇用されるという期待を労働者が持つことは当然である。こういう判例をわざわざ法律の条文(雇い止め法理の法制化)にしたのはなぜなのか。

期待権が生じないようにと、判例を参考に、多くの大企業が2年11か月ほどで、契約更新を拒否する事例がたくさんあります。
仕事はある、しかし人は切る、使い回す。
私達が繰り返し国会でも追及してきた労働者使い捨てを、真正面から擁護するとは。
「まじめに働く者がむくわれる社会」を掲げているが、看板倒れも甚だしい!

という怒りの発言で質問を終わったのですが…。
この日の夜、参議院の党議員団の会議がありました。
「5年未満での雇い止めが、あらたに広がりかねないね」
「時間があれば、労働契約法はなんのための改正だったのかと、じっくり質問したいところだよなぁ」等々、意見をいただきました。
そのうえで、「田村大臣の答弁は想定外だったんでしょ?」との鋭い指摘
「年金機構の問題は、向こうも構えているから、どんな答弁が予想されるか、もっと詰めに詰めて準備しないと」とアドバイス。

私も、相手の土俵に持って行かせずに質問を続けるためには、もっと準備が必要だと、前向きに反省しました。
契約更新に上限をおいて、都合よく労働者を使い回すやり方は、経済界のトップが法の網をかいくぐろうと考えに考えての手法です。
生半可の構えではここに突き刺さる論戦にはならない。
もっとパワーアップして、第2ラウンドを迎えなければ。