コラム
【13.01.24】生活保護基準額の引き下げ案に怒りの声
議員会館でつぎつぎに集会開催
通常国会開会を目前にして、議員会館での集会も次々と行われています。
医療団体連絡会議のみなさんが「社会保障こそ成長戦略」とスローガンをかかげての集会。
全国生活と健康を守る会連合会が、「許すな!生活保護の切り下げ」の緊急集会。
どちらも大きな会場に、全国からかけつけた参加者のみなさんでいっぱいでした。
どちらの集会でも怒りが集中したのは、生活保護基準額の8%引き下げという政策。
昨年来の生活保護受給者へのバッシングが、とうとうここまで政策の貧困をもたらしました。
この引き下げ政策の根拠となった調査は、生活保護世帯と低所得世帯の支出を比較したら、夫婦と子ども2人(18歳未満)の世帯で、生活保護世帯の方が支出が14%程度多かったということ。
(この調査では、高齢者世帯では生活保護世帯の支出がとても低いことが示されたのに、そのことはほとんど大きく報道されていません。老齢加算が廃止された影響の大きさは明らかです。)
なぜ一番苦しい世帯で比較するのか。
平均的な支出と比較してどうなのかを見るならばわかります。
生活保護を受けていない低所得世帯の生活の深刻さこそ、解決が求められているのではないでしょうか。
子育て世帯の基準額がさげられれば、就学援助を受ける世帯も基準が下げられてしまいます。
経済的に苦しい家庭の子どもたちが一番影響を受けてしまうのです。
基準額引き下げのニュースを聞きながら、思い出したのは、昨年、大阪から届いたDVDのこと。
関西のローカル番組、「映像’13」という番組の録画です。
「保健室からのSOS〜子どもに広がる貧困の実態」――大阪のある公立小学校の保健室にカメラをすえて、子どもたちの姿をありのままに映していました。
保健室の冷蔵庫、一番下の冷凍室には給食の残りのコッペパンがたくさん冷凍されています。
それをあたためて、朝から保健室に来た子どもたちに食べさせる。
親が夜の仕事をしているために、朝ごはんが作れない、お腹がすいて身体がしんどい子どもたちが保健室でパンを食べる。
保健室のベテランの先生は、子どもたちにさりげなく「夕べはなに食べたん?」「夜は眠れる?」と生活の様子をきいて、子ども一人ひとりのカードに記録していました。
夜あまり眠れないという子ども(小学校中学年でしょうか)は、お母さんが働きに出て、一人で家にいるために不安で起きてしまうと、ぽつりぽつりと話します。
体育の授業前、担任の先生に連れられて保健室にきた男の子。下着の背中に血や分泌物がしみています。
先生が脱がせると、大きな水ぶくれ。家で煮炊きをしているなべに背中がぶつかり火傷をしていたのです。
病院に行かせようと両親に連絡を取ると、「病院での治療はやめて」という返事。
工場の経営が苦しく、医療費にあてる余裕がない様子だというのです。
あれだけの火ぶくれになっていたら、どれだけ痛かったか…。
手のひらの大きさにもなる赤い火傷、正視するのもつらい光景です。
男と子は毎日、保健室で傷に当てるガーゼをとりかえてもらい、とうとう病院には行かず火傷を治していきました。
もしもやぶけた皮膚から細菌が入っていたら、重大な病気にもなりかねません。
保健の先生が、家族の状況をまるごと受け止めて、男の子を毎日見守り続けたことに胸が熱くなります。
工場という資産がある、商売をしていれば店の経営上も貯金をゼロ〜数万円にするわけにはいかない。
さまざまな事情で、生活が苦しくとも生活保護を受けられない子育て世帯。
この貧困の一番の犠牲者は子どもたちです。
そして子どもたちには、この貧困の責任は何一つありません。
それでも生活保護の基準額を下げる道を選択するのか。
子育て世帯の貧困の解決こそ切実に求められているのではないのか。
基準額引き下げは、法律の改定なしにできてしまいます。
法案審議がなくても黙っているわけには絶対にいきません。
子どもの貧困の実態を政府につきつけたい。多くの方の知恵と行動をいただきたいと切実に感じています。
ドキュメンタリー「映像’13」は、毎日放送のHP(http://www.mbs.jp)から検索できます。