日本共産党 田村智子
コラム

【13.01.14】「赤旗」に掲載された新春随想

百人一首と「民の力」

 
1月9日付け「しんぶん赤旗」首都圏版に、国会議員の500字ほどの短いエッセイが順番に掲載されています。
このエッセイ、実はしめきりが昨年末。
新年を迎える前に、お正月の気持ちで文章を書くのは、なかなか難しいものです。
 
私は3年前から書いています。
2011年は「書き初め」、昨年は「おせち料理」、さて今回は…。
百人一首をテーマにしました。
以下、掲載された「新春随想」です。字数の関係で削った部分を原文のままにしました。


「田子の浦にうち出でてみれば…」「はい!」――昨年末から、我が家の夜のお楽しみは百人一首。
中学校でのかるた大会にむけて、娘は「クラス対抗戦で負けるわけにいかない」のだそうです。

そんな娘に啓発されて、小倉百人一首の簡単な解説本を買ってみました。これがなかなかに面白い。
「秋の田の仮庵の庵の苫を荒み 我が衣手は露にぬれつつ」。天智天皇の歌とされている有名な第一首。里の庵にふと立ち寄り、収穫の光景をみているような風流を感じます。

*注―「苫」は、すげ・かやなどを編んだもの。「苫を荒み」は「網目が荒いので」という意味になります。

ところが、これは解説本によれば、万葉集の読み人知らずの歌が変遷したもの。
元の歌は「秋田刈る仮庵を作り我が居れば 衣手寒く露ぞ置きにける」。家にも帰れず、粗末な庵で休みながら、収穫を続ける農作業の労苦が伝わります。

同じ光景が一八〇度違って見える、新鮮な驚きです。
大学で文学を学びながらそんなことも知らなかったのかと、諸先輩から叱られそうですが、あらためて万葉集の言葉の力に感動し、その言葉を編んだのが、読み人知らずの民であることに驚嘆しています。
面白いのは、この読み人知らずの歌が言い伝えのなかで、天皇の歌にまで「出世」したこと。表舞台には見えないけれど、時代を超える「民の力」を実感します。

(写真は、私が500円で買った「解説本」。
『原色 小倉百人一首 古典短歌の精髄をカラーで再現』
鈴木日出男・山口慎一・依田泰 共著 文英堂)