日本共産党 田村智子
コラム

【12.11.09】「こどもの城」をなくさないで

ベビーカーをおしてお母さんたちが要請行動

 
議員会館の私の事務所に、小さな子どもさんと若いお母さんたちが訪ねてきました。
渋谷区青山にある「こどもの城」をなくさないでほしいという要請です。

子どもさんに発達障害があるというお母さん――どんな子どもも受け入れてくれて、安心して遊べるのが「こどもの城」なんです。
「こどもの城」ができた時に自分がいっぱい遊んで、今は子どもたちを遊ばせているというお母さん――職員の方の努力、経験がどれだけ子どもたちに大切かを自分の体験から話してくれました。

お母さんたちの運動に注目して、テレビ取材も入った要請行動でした。
子どもの豊かな発達のために、この施設やプログラムをなくしてはならないという思いが熱く伝わる要請でした。
運動に注目してテレビ取材も入りました。

「こどもの城」――国際児童年(1979年)を記念してつくられた国立の総合児童センターです。
(国際児童年、私が中学生のとき、ゴダイゴの「Beautiful Name」がテーマソングとしてNHKで流れていたのを思い出します。)

「こどもの城」は、親子でいくお出かけマップなどで必ず紹介される施設。
身体を動かす遊び、音楽・造形の体験型の遊びなど、ユニークなプログラムがたくさんあります。
私も子どもを連れて行ってみたいと、かねがね思っていた場所の一つ。
(残念ながらその機会がないままに、もう中学生、高校生になってしまいましたが…)
ミュージカル「アニ―」の公演でも有名な青山劇場、珍しい円形劇場もここにあります。

建物は国のものですが、運営は財団法人児童育成協会に委託しています。
運営に必要な費用は、利用料や劇場などの収入でまかなっています。
国の支出は、建物の維持・管理に限られています。

利用者は年間85万人(劇場含む)、運営は赤字ではありません。
それなのに、なぜ突然が宣言されてのか。
大規模改修のために120億円の予算が必要。これが廃止の理由です。

私も事前に、厚生労働省に説明を求めていました。
「こどもの城」の事業をどう評価しているのか。
廃止したあと、子どもの遊ぶや文化のプロともいえる職員はどうなるのか。
建物や土地はどうなるのか。

職員は全員、別の就職先を探してもらうことになる。
建物や土地は「売却」になるだろう。
東京都などが購入の意向があれば、優先的に公的機関に売却する。

廃止=すべてがなくなる、ではないか。
国でも大規模修繕費用を出さないのに、渋谷区や東京都が予算をつけるかは非常に懐疑的です。
となれば、青山の一等地。大手デベロッパーが喜んで開発に乗り出す物件になってしまうでしょう。
それでいいのかを考えなければなりません。

こども文化が豊かに発展しているとは、とても言えないのが現状です。
携帯、ゲーム機、パソコンなどで子どもの遊ぶが多様化している――これも厚生労働省の廃止方針の理由にされています。
逆でしょう。体感型の遊び、仲間といっしょに身体を動かして夢中になって遊ぶ機会こそ、もっと大切にしなければ。

「こども城」のスタッフは、全国の児童館などに、遊びのプログラムを普及しています。
施設そのものも、もっと広く子どもが利用できるようにさらに工夫してくこともできるのでは。
障害児を招待するようなプログラムを全国の自治体と協力して実践できれば、国立の施設ならではのとりくみにもなるでしょう。
「こどもの城」地方版も、本当はもっとたくさんできてしかるべきです。

プレイランド、ディズニーリゾートのような遊びは70年代と比べて多数あります。
けれど、商業ベースにのらずに、こどもの購買意欲を刺激するのでなく、遊びそのものを大切にする施設がどれほどあるのか。

施設がなくなることは、それまで積み上げてきたソフトの財産も失うことになります。
それでよいのか。120億円が高すぎるの予算なのか。
子どもの発達、文化の普及ということから、深く考える必要があると思っています。

お母さんたちからは、「どうしたら存続ができるでしょうか」という質問も出ました。
厚生労働省に意見を直接届けること(厚生労働省の担当者は、反対の声は多くないという認識ですから)。
まだ「こどもの城」を利用したことがない人にも、利用をよびかけて、その価値・存在意義を実感してもらうこと。
そんなアドバイスを伝えました。
2015年3月までの時間、どんな運動を展開できるか、子どもの発達を真ん中にとりくんでいきたいと思っています。