日本共産党 田村智子
コラム

【12.10.28】赤ちゃん連れのママたちと「保育のつどい」

しなやか、強い、女性たちに感動!

大型マンション建設ラッシュで、待機児童急増の足立区。
来年春から子どもさんを保育所に入所させたいと、「保活」真っ最中のお母さんたちと懇談させていただく機会がありました。

会場は、とあるマンションの集会室。
テーブルにお菓子とお茶を並べて、席についたのは若いお母さんばかり。
赤ちゃんを抱っこして参加するのも当たり前の雰囲気。
(会場に1歳未満の赤ちゃんが3人も抱っこされて参加していました。)

簡単な自己紹介のあと、私は20分ほど、「新システム」になったら保護者にとって何がどう変わるのかを簡単に説明しました。
残る1時間半以上、質問をまじえた懇談、真剣だけど気軽なお茶会という雰囲気です。

分譲マンションを購入した世帯で、お母さんたちはバリバリと働いてきた方が中心のようです。
どうしても仕事に復帰したい、来年春に保育所に入れなかったら仕事を辞めなければならない――ぎりぎりの状況がつきささるように伝わります。

「保育所をつくってネット」は、昨年、当時者の方々が、この現状を変えなければと昨年結成。
マンション前や駅前などでアンケート配布して、お母さん・お父さんの声を集め、足立区に保育所の増設をと迫ってきました。
私も今年2月の予算委員会で、このアンケート結果を紹介して、待機児童問題から「新システム」について追及したという経緯があります。

何カ所も保育所や認定こども園などを見学した方からは、保育の内容についての疑問も出されました。
・例えば幼稚園から認定こども園に移行した施設では、英語教育、体育、ピアノなどの「おけいごと」がオプションとして受けられる。
・自分の子どももという気持ちと、それは、経済力によって子どもが受ける保育・教育が異なるということで、それでいいのかという気持ちがある。
・習い事をたくさんしている子どもが「疲れた」というのを聞いて、これでいいのかと思い直した。

私が自分の子育ての中で感じてきたこと、そのものです。
自分の子どものことだけでなく、子どもへの保育とは何か、全ての子どもにどんな保育や教育を保障したらよいのか――お母さんたちが、こういう視点をもっていることに感動しました。
保育所待機児童という社会問題に真正面からとりくんでいることが、お母さんたちに豊かでしなやかなものの見方を培っているのでは。

認定こども園、幼保一元化の議論のなかでも、「保育所は幼児教育を行っていない」「幼稚園よりも質が劣る」という主張をする議員がいて、私は怒りを燃やしていました。
子どもの成長発達をよく理解し、よりそい、どういう働き掛けをすることが大切かを、保育士のみなさんは学習し実践しているのです。
そのことに、母親たちはどれだけ学ばされてきたことか。

こういう話を進めている中で、足立区の公立保育所で進行中の「5歳児プログラム」が話題になりました。
私も初めて知ったのですが、聞いていて涙が出そうでした。

「小1プロブレム」を未然に防ぐことを目的にしているのでしょう。
5歳児に点数評価をつけるというのです。
ハンカチを毎日ポケットに入れているか、45分間椅子に座って話を聞けるか、ひらがなはどこまで書けるようになったか…。
点数が低い子どもは、「発達障害があるかもしれないから、教育相談センターへ」と言われるそうです。

点数をつけられる子どもは何を感じるでしょうか。
ダメな子どもだとレッテルを貼られたら、母親はどんな思いになるでしょうか。
私の子どもがこのプログラムの中に入れられていたら、ずたずたに傷ついていたでしょう。
息子は今でも、年長クラスの時、ひらがなの練習でうまく書けないことを保育士さんに注意されたことを覚えています。
それがどれだけ苦痛だったかを、昨日の出来事のように話します。

足立区では保育所は教育委員会の管轄におかれているとのこと。
納得です。
乳幼児と時間をかけて向き合ったことのない人たちが考えたとしか思えないプログラムですから。

4月生まれの5歳児と、3月生まれの5歳児とを同じ基準で点数化することだけでも、信じられない!
月齢以上に、子どもの発達は千差万別。その違いが面白い。
つまずいたり、他の子どもよりもゆっくりだったり、そういう子どもが発達していく過程に、子育ての感動やダイナミズムはあるのです。

懇談のなかで、学ぶことがいっぱいありました。
何より、お母さんたちが、時には赤ちゃんをあやしながら、真剣に集中して、そして和やかに懇談を続ける姿に感動しました。
どうやって区議会に働きかけるか、どういう運動をしたらいいのか、どこまでも前向きで建設的。
新しい運動の息吹を感じる保育のつどいでした。