日本共産党 田村智子
コラム

【12.08.03】「子ども子育て新ステム」50分の質問

短時間認定と「ばらばら保育」への懸念強まる

社会保障と税の一体改革に関する特別委員会、民主・自民・公明の3党は、採決を虎視眈々と狙っています。
もう質疑はやりつくしたと、いわんばかりに、9日は民主・自民は質問に立たず、その他の野党が質問したいのなら、時間を大幅に増やしましょうという提案。
10日、日本共産党の質問時間はなんと50分!
(「生活」「みんな」が100分、その他政党すべて50分という時間割でした。)

この特別委員会は、消費税、社会保障制度改革、年金、子ども・子育て新システムの8法案を一度に議論しています。
子どもに関する法案は、条文にそって、保育施策などがどう変わるのか、厚生労働委員会で各党が集中して質問すべき法案です。

特別委員会の1回20分ほどの質問ではとてもやりきれない、と思っていた矢先の50分。
保育問題に集中して50分を使い切りました。

昨年からこだわりにこだわってきた「市町村の保育実施義務」規定。
3党の修正で削除は撤回されましたが、問題点は残っています。
保育の必要な子どもに、自治体が保育を行う(実際には認可保育所での保育)という規定と、その他の施策で保育の確保を措置する、という規定が並列にされているのです。

保育実施義務になぜこだわるのかが伝わるように質問を考えました。
同時に、法律の条文に問題はあっても、実際の保育施策(特に待機児童対策)は、市町村保育実施義務(認可保育所)を基本に行うよう、答弁で言質をとらなければなりません。

政府案の骨組みがそのまま残されたのは、「保育認定」の仕組みです。
保育所、幼稚園、認定こども園、その他の保育、どれを利用する場合にも、自治体に「教育・保育の必要度」を認定してもらわなければなりません。

「教育」は、3歳児以上の子どもは全員、希望すれば受けられる。
保育の場合は、保護者の状況(働いている、仕事をさがしている、家族の介護が必要、病気治療中とか)から、短時間保育・長時間保育のどちらかを「認定」することになるというのです。

保育現場からの疑問、不安の声を、そのまま質問にしました。
「短時間」が1日4時間を単位とする場合(6時間にするという意見もきかれますが)、保育時間の上限は1カ月の総時間で決めるので、毎日4時間でもいいし、週3日1日8時間でもいい。
午後から仕事の場合は、午後の4時間となる。
これでは「ばらばら保育」にならないか。

大臣も修正法案の提案者も、午後から保育がありうると認めました。
自分の子育て経験をそのままぶつけました。
保育には1日の流れがある。1日の生活リズムが子どもたちの安心感をつくりだしている。

朝の集まり――保育士さんが子どもの名前を1人ずつよびます。1歳前の子どもも名前を呼ばれると、うれしそうに手をあげて返事をしますよね。この姿が親にとっても安心感を生んでいます。
子どもは自分の名前に反応するだけではありません。他の名前が呼ばれると、その子の方をしっかりとみて、**ちゃんがいることを確認するのです。いないと、「いないね〜」と声をあげる子います。
それから、絵本の読み聞かせや手遊び、子どもたちは、保育所での1日の始まりを遊びのなかで実感しているでしょう。
保育士さんは、朝の集まりでの子ども1人ひとりの様子・状態を観察しているでしょう。元気のない、疲れている、イライラしている、そんな子どもの様子をみて、その後の保育時間に生かしているはずです。

そしてお散歩や水遊び、天気が悪ければ、部屋のなかでの保育メニューが始まります。
しっかり身体を動かして、お昼ごはん、トイレタイムやパジャマへの着替え、そして午睡。部屋のなかも暗く静かにして、ゆっくり休める環境にします。
午後の保育はおやつから。着替えをして、手を洗って、おやつタイムでまた元気いっぱいに。

保育時間を短時間、長時間にわけることで、こうした生活のリズムがどうなるのか。
短時間と認定された子どもが、例えば保育園の行事の関係で、その時間を超えた場合は延長料金を払うことになるのか。(答弁では「保護者負担になる」とのこと。)

保護者にとって必要な保育時間と、子どもにとって必要な保育時間は、必ずしもイコールではありません。
そして子どもにとっての必要量は、自治体が判断できるものではないはずです。

具体的な問題点、疑問点をあげていくと、50分でも時間が足りませんでした。
「自民党は、保育団体の集会で廃案を約束していたはず。廃案にして、保育の関係者や国民のなかで、どういう保育施策が必要かを議論すべき。これでは、消費税増税の口実に子どもの施策を利用していると言われても仕方ない」
「質問しなければならないことはまだたくさんある。拙速な採決はやるべきでない」

傍聴席には50人を超える方々が、静かに質疑を見守ってくれました。
全国の保育関係者です。新システムの問題点を学び、知らせ、国会議員への要請行動を2年以上にわたって繰り広げてきたみなさん。
「しっかり質問してくださって、ありがとうございます」、委員会終了後、声をかけていただきました。
保育現場の声を無視して、法案を通すわけにはいきません。
50分もの質問時間をわりふった背景には、これで採決だという3党の思惑が透けてみえます。
採決は許さない。がんばりぬいた先に、廃案への希望が開ける、その一念で、もうひとがんばりです。