日本共産党 田村智子
コラム

【12.05.23】爆音とどろく米軍厚木基地へ

駅も市街地もお構いなしの離発着訓練

 
小田急線で大和駅に向かう車中、突然、ゴーという異常な音が車内にまで響きました。
急いで窓から外を見上げても、戦闘機の姿は見えません。
大和駅でいったん町に出てみると、遠く近く、まるで高架で電車が通過しているような音が、間断なく響いています。
これは異常だ…。

昨日22日、突然始まった米軍厚木基地での離発着訓練。
22日朝に防衛省を通じて関係自治体に通知があり、その日の9時8分から訓練が始まったといいます。
夜9時前までの約12時間、綾瀬市や大和市の上空には戦闘機が周回し、基地へのタッチアンドゴーを繰り返したのです。

私も朝のニュースでこの突然の訓練強行を知りました。
国会に着くとすぐに、現場に行くことが出来ないかを相談し、夕方4時過ぎに国会から厚木基地に向けて出発。

どのくらいの頻度で飛んでくるのか、着いた時に飛んでいなければ、しばらく待たなければならないか等々、打ち合わせの時に交わされた会話は見事に裏切られました。
基地の周辺駅の一つ、相鉄線相模大塚駅で電車をおりると、すぐに轟音が響いてきました。
線路を横切る橋の上から見ると、目の前を、まさに線路を横切るようにして、超低空で次々に戦闘機が通ります。(写真上)
ゴーという大音響が、近づき、遠ざかり、また突然音を大きくして、また遠ざかる。
着陸直後に飛び立つ、その軌跡が音から見えるようです。

駅前を、犬の散歩で歩いている女性に声をかけてみました。
「すごい音ですよね」
「昨日からなんですよ。いったい何が起きたんでしょうね?」
「アメリカ軍の訓練なんですよ」
「そうなんですか?」
こんな会話も戦闘機が近づくと途切れるほどの轟音、携帯電話で話す人は片方の耳を押さえて大声を出しています。

基地に向かって歩くこと約10分。
米軍基地の金網が続く道路、カメラを構えた人の列が歩道に続いています。
真上を通って目の前の基地に着陸・離陸する戦闘機。
耳がおかしくなりそうな轟音が襲い掛かってきます。(写真下)

カメラの列のなかで、どこかで見たような顔。群馬県の赤旗記者です。
以前に学習合宿で一緒だった女性。
群馬から4人で調査に来たといいます。群馬県も低空飛行の騒音が問題になっているのです。

6時過ぎ、もうすぐ日没。こういう時間帯は訓練が集中するのでしょう。
「待つ」ほどもなく、次から次へと戦闘機が近づいては遠ざかっていきます。
そして完全に暗くなると、夜間離発着訓練(NLP)の開始。
朝9時からこんな時間まで、ほとんどやむことなく続く轟音。2時間ほど聞いているだけでも、いらいらしてきます。
住民のみなさんはどんな思いでいるのか…。

私たちが戦闘機を見上げるこの道は、2月に米軍機が部品落下事故を起こした現場でもあります。
2メートルもの金属片を含め、部品を基地の内外に撒き散らしながら着陸、通行中に自動車の上に落ちていたら大惨事になるところでした。
この事故の原因について、なんの報告もないまま、今度は訓練直前の通告だけで3日間にわたって騒音を撒き散らし続ける。
タッチアンドゴーは高度の技術が必要ですから、もしも事故が起きたら、それこそ住民の命にかかわる事態もありうるでしょう。

午後8時、現場から綾瀬市役所に向かいました。
市の基地対策の部署は、訓練終了まで庁舎内で苦情電話の対応にあたっているというのです。
松本春男市議の案内で基地対策課へ。
フロアの照明が消されているなかで、この部署だけ明かりがともっています。

今日1日ですでに四百数十件の苦情電話。過去最多とのこと。
「授業ができない、赤ちゃんが泣き出す、一体何が起きたのかなど、昼間は電話がひっきりなしにかかってきた」
「騒音問題、部品落下事故、私たちが対応を求めていることには何も回答がなく、こうして訓練が突然強行されるというのはおかしい」
職員のみなさんも、どこに怒りを持っていけばよいのかという表情。

「明日、防衛省と外務省を呼んで、一体どういうことなのか説明を求めます」と私。
勢いこんで「ぜひお願いします」と課長さん。
帰りの車中、まだ轟音が聞こえてきました。どうしようもない怒りがこみ上げてきます。
これのどこが日本の防衛なのか。憲法9条がある国で、こんな光景が許されるのか。
米軍基地は撤去するしかない、静かで平穏な町を取り戻すために。