日本共産党 田村智子
コラム

【12.05.21】東京の市街地を自衛隊が行軍?

レンジャー訓練の異常さに驚愕

 
6月12日の朝、板橋区の荒川緑地から自衛隊練馬駐屯地まで、自衛隊員約30人が顔を黒く塗り、銃剣を持ち(弾薬は抜いている)行進する。
そのルートは、住宅街、商店街、駅前、公園などまさに市街地。
これだけでも異常です。
そのうえ、レンジャー訓練の一環というのですから、常軌を逸しています。

練馬区、板橋区の区議、平和団体の方々と一緒に、防衛省からの説明を受けました。
担当者は「防災訓練にも役立つ」ことを強調。
東日本大震災での自衛隊の活動が、レンジャー訓練の成果であるかのように説明しました。
とんでもありません。
「災害対応の訓練ではないでしょう?」、参加者からは詰問ともいえる声が飛びました。

レンジャー訓練とは何か、インターネットで検索すると、その異常さがよくわかります。
私には、まるでアメリカ軍の海兵隊の訓練に思えます。

絶対服従をたたきこみ、指示・命令に対する返事はすべて「レンジャー」だけ。
どんな理不尽な命令にも従い、徹底した連帯責任を取らせる。
食料をほとんどもたないまま野に放たれて、目的地に拠点をつくる。
途中、蛇でもカエルでも、食べられるものは何でも食べて飢えをしのぐ。
睡眠も食料も減らされ、極限状態に追い込み、30キロを超える装備での行軍。
白兵戦の訓練、敵をとらえて捕虜にする訓練…
これらを約3ヶ月行なったうえで、6月12日、市街地を行進するのです。

しかもレンジャー隊には、行動の計画は知らされていません。
富士演習場からどこに行くかも告げられず、突然ヘリコプターで荒川河川敷に運ばれ、ヘリコプターから降下し、命令のままに市街地を歩くのです。
戦闘状態をたたきこまれた只中で、突然、市街地を行進するのです。

体力も精神的にも極限状態、正常な判断ができる状態なのか。
もしも、突然目の前に子どもが飛び出したら、人や自転車が急に接近することがあったら、とっさにどんな行動にでてしまうかわからないのでは?

板橋区、練馬区には訓練の「通知」が一方的にきただけ。
地域の了解もなく、区議会での議論もなく、自治体の了承もなく、行なわれるようとしています。
これは一大事です。

東日本大震災で自衛隊の高感度がアップしている。
ここで一気に認知度をあげよう、市街地での訓練ももっとできるようにしよう、としているのか。
説明では、これまでは基地内に仮想の市街地をつくって訓練したそうです。
これは上陸作戦、ゲリラ戦、制圧した市街地を歩く、ということを想定した訓練ではないのか。

だいたい、日本防衛のためならば、食料が3ヶ月にわたって十分に供給されない事態がどうして起こるのか。
災害対応であっても同じです。日本の国土の広さには限界があります。3ヶ月、補給路が確保できないなど、ありえません。
そこまで日本が壊滅的に攻撃されてからの防衛戦だとでもいうのでしょうか。

説明を聞き、事態を知れば知るほど、怒りがこみあげてきます。
こんな訓練は、絶対に中止させなければなりません。
日本共産党の存在意義が問われる、この覚悟でのぞみます。

 
東京民報(5月27日付け)には、愛知県平和委員会から提供されたレンジャー訓練中の部隊の写真が掲載されました。
これが災害対策とどう関係するのか。戦争訓練そのものです。