日本共産党 田村智子
コラム

【12.04.15】ウガンダ記その7

同行した他党の議員との交流

IPU会議の期間中、初日から最終日まで参加したのは私だけで、実は日本代表団が一堂に会する機会はありませんでした。
先に帰国した民主党・西村団長は、なんとその直後に厚生労働副大臣になっていてびっくり。
(消費税増税法案の閣議決定をめぐり、前副大臣が辞任したためです。)

一番長くウガンダに滞在したため、他の議員の方々とも一番交流する機会があったのが私だったと思います。
国会を離れただけでなく、日本を離れたことで、フランクに話ができたようにも思えました。
白熱した議論ではなく、相手の意見に耳を傾けて静かに意見交換する、そんな機会も持てました。以下、そんないくつかの場面を。

3月29日ともに日本を出発したのは、大西健介衆院議員(民主党)。
外務省職員だったこともあり、外務省や国際課の職員のみなさんとも既知の仲。
「アメリカに派遣されていた時、参議院の視察団に参加していた小池晃さんに会いましたよ。夕食の場所を案内したのが私です」
話に加われるように、私にもそんなエピソードを伝えてくれました。

私が女性会議で予定外の発言を決断したのは、実は、大西さんが初日のアジア太平洋地域の会議で予定外の発言をしたことも、一つの理由でした。
北朝鮮のミサイル発射への懸念を表明し、他国の代表団から声をかけられたと、昼食を一緒にとった際にお聞きしたのです。
「ならば私も」と、その日の午後の発言になりました。

(写真は、ウガンダに着いた日の夜、食事をしたレストランでのショット。
IPUのラディ議長、Abdelwahad RADI氏・モロッコ――が、同じレストランで食事をしていることに、参議院の国際会議課S課長が気がつきました。
さっそく、大西さんと一緒に記念撮影。時差と長旅でかなりひどい顔ですが…。)

 

翌30日に合流した西村智奈美衆院議員。IPU会議には連続して参加しているので、他国の代表と顔見知り。
再開を喜びハグする姿に、こういう活動をする議員が衆参ともに必要だと実感しました。
私よりも若いんですよね…。いやぁ、堂々としたものです。
北朝鮮の問題で、なんとか代表団と話ができないかと模索する様子も、勉強になりました。

本会議の席は、日本代表団の目の前が北朝鮮代表団。
「日本共産党は北朝鮮との関係はどうなっているんでしたっけ?」と西村団長。
「断絶したままです」と私。
「どうして?」――金大中主席時代に個人崇拝が強まるなか、革命は北朝鮮を見習えと日本共産党の路線に介入し、日本共産党を「敵」だと公言した歴史をごく簡単に説明。
大韓航空機爆破事件でも、北朝鮮の意図的なテロ行為といち早く断定したのは日本共産党だったことなどは話す時間がありませんでしたが…。
こういう質問を私にしたのも、なんとか北朝鮮代表団との話の糸口をつかもうとしたからでしょう。
問題意識をもって会議にのぞむ姿勢には学ぶものが多かったです。

当の北朝鮮代表団は、会話に応ずる気配なし。
しかし、大西さんの初日の「懸念」発言に抗議することもありませんでしたし、日本を名指しで非難する場面もありませんでした。
もしそのようなことがあれば、反論権を行使しなければなりませんから、私も、特に本会議では注意深く動向をみていました。

(写真は、メキシコ代表団との会談のワンショット。西村さんとの再開を喜ぶハグはこんな感じ)

 

意見交流の機会が一番多かったのは、自民党の村田吉隆衆院議員。
小泉内閣時代の内閣府副大臣経験者で、アフリカを度々訪問し、今回もIPU会議後、そのままルワンダに渡航すると聞いていました。

朝食の時など日本から持参した新聞の切り抜きを読んでおられて、声をかけてみると、
「気になる記事を破いておいておく。時間がある時に目を通すと、もう古くて読まなくていい記事と時間が経過しても重要な内容の記事に分けられるから効率がいい」とのこと。大臣経験者の仕事のスタイルも勉強になります。

朝食の時、夕食会の時など、話し込んでみると、意見の違いと同時に、共通する問題意識があって、なかなかに面白い話になります。
たとえばアジア外交。「私は小泉内閣の閣僚だったが、靖国神社に首相が行くのは間違っていると発言していた」とのこと。
戦争に対する政治の責任はある、という立場。同時に、大臣や議員が参拝したら天皇が参拝できない。実現すべきは天皇の靖国参拝という意見。

中国との関係では、著作権を無視した経済活動や、例えばウガンダでも公共事業に財政的支援をするだけでなく、原材料から労働力まですべて中国から持ってきてしまうというやり方に大変批判的。
それを包囲するためにTPPが必要という強固な意見。
これには私も率直に意見を述べました。「アジアの国々とのまともな外交で、経済ルールを確立する、ルール違反は諭していく、それはできないんでしょうか」
「韓国とも国境問題がある。ロシアともある。日本が他国と協力してという環境にない」
「そもそも領土問題でまともに話し合いをしていないのでは?」
こうした議論の中で、私も率直に「日本は、戦後処理がまともにできなかったという負の遺産が大きいのではないでしょうか」と問題提起。

朝食を食べ終わってからも20〜30分話し込む日が何回かありました。
他党の議員と、表面だけではない話、公開討論のように論戦でもない、落ち着いた話し合いという経験もこれまでにないことでした。
本当は、国会の場で、日本が直面する問題で冷静に・理性的に、打開方向を政党の違いをこえて話し合うべきではないのか、そういう議論をしてみたいと、心底思いました。
意見の違いを認め合いつつ、ということが大切なポイント。これが議会制民主主義の土台ですから。

(ウガンダから帰国する日、エンテベ空港に近い野生動物教育園を、村田さんとともに訪ねました。ここでも日本女性が活躍していました。)

 

民主党・早川久美子衆院議員は、同じ葛飾区在住の議員。
葛飾区の行事に招かれた時など、よく顔をあわせる間柄です。
「あしながウガンダ」を訪問したのは、この葛飾区コンビでした。
アメリカ留学の経験があるので、英語は流暢。(結局、今回の代表団で英会話ができなかったのは私だけなんです…。)
子どもたちに自己紹介するときも、コミュニケーションをとるのがとても上手。
ハイヒール愛好を公称しているだけあって、「あしながウガンダ」にもハイヒールで行っていたのはある意味すごい…。舗装されていない道や敷地でしたから、結構大変だったのではと思います。

こうした個性的なメンバーでの代表団。
まとまりが求められる場面はそんなになかったし、それぞれの活動でよかったのが、逆にうまくいった秘訣かもしれません。
何度も繰り返すようですが、意見の違うメンバーが集まりともに活動するということは、とても勉強になります。

対立、ののしりあいではなくて、意見の違いを前提にして真摯に誠実に話し合う。
自分の器を大きくしていく、意見や立場、政策を熟考する、そういう機会になります。
是非、国会をこのような討論の場にしていきたい。今の国会の議論はあまりに情けない。
そのためにも、異なる意見を全面否定し排除するような勢力の横行を許さないようにしなければ。

(髪の長い女性が早川さん。真中は、あしながウガンダの沼しほこさん)