日本共産党 田村智子
コラム

【12.04.14】ウガンダ記その6

本会議で英語のスピーチに挑戦

 
IPU会議での代表団の最大の仕事は発言です。
参加した5人の議員が、担当する会議やパネルディスカッションで発言してきました。

私も、参議院国際部国際会議課のみなさんと相談しながら、日本にいる間に、二つの発言原稿を用意しました。
「議会と国民のギャップをうめる」をテーマとした全体討論(本会議)。
日本代表団の第1発言は団長の西村智奈美さん、私は副団長として第2発言に立つことになっていました。

インターネットでの議会中継、議員個人の情報発信などの努力を紹介する第1発言。
これをふまえて、私は何を発言しようか。まずは、日本語原稿の作成です。
テーマはとても興味深く、「アラブの春」を受けてのテーマ設定のようです。
言いたいことはたくさんある、しかし、英語で4分以内という制限。
国によって選挙も議会の様子も、大きく異なっている、それをふまえて何を発言するか…。

参議院で10年間続いている「子ども国会」を冒頭に紹介。
11〜15歳の小中学生が、ロールプレイで議員の国会活動を経験をするという取り組みです。参加者が6万2000人を超えていることは、この発言の準備で知りました。

そして発言での問題提起、その1点目は選挙制度。
国民の直接的な権利行使である選挙で、その意思は議会に反映しているか――
日本では、死票の少ない比例代表で選出される議員は、衆参とも議席総数の4割以下。
特に衆議院の小選挙区では、6割以上の投票が議席に結びつかない。
これは国民の側からみれば、自分が選択した政策が議会に届かないということです。
政策の違いをこえて、議会人は、国民の意見・選択をいかに議会に反映するかに向き合うべき――ここは日本の国会でも一番、言いたいことです。

問題提起の2点目は、政策決定過程に当事者の声が届いているか。
障害者自立支援法をめぐって、「私たちのことを 私たち抜きで決めないで」と障害者の方々が立ち上がったことを念頭においての内容です。
自立支援法の出直しを求めて、障害者の代表が加わった総合福祉部会で、新しい法律の骨格が検討されてきました。
この経験には、今後の政策検討過程に生かしていくべき教訓がたくさんあると思うのです。
(ただし、現在、障害者の方々が求めた法案にはあまりに距離がある「自立支援法改正法案」が提出され、大問題になっています。)

日本語原稿の提出が遅れたために、国際課での英訳は日本出発のぎりぎりまでかかってしまいました。
英語でのスピーチに挑戦することを宣言していたので、成田発の飛行機の中から、私の音読練習が始まりました。

私はこれまで「日本語専門」を公言していましたが、国際会議に参加する以上は、英語にも挑戦しなければと、腹をくくったのです。
会話は付け焼刃ではできないけれど、原稿を読むことぐらいはやらないと、なんのために高校や大学でも英語を勉強したのか…。

ところが、「この単語の発言は? イントネーションは?」というものばかり。
携帯電話の辞書機能を駆使し、間違えそうな発言やアクセントを原稿に書き込み、発音が難しい単語は繰り返し練習…。
ウガンダについてからも、寝る前、朝起きたら、朝食が終わったらと、ホテルの部屋で音読練習が続きました。
(夜まで日程が入っていて、主に早朝の音読練習でした。)

実はこの1年ほど毎朝、朝食&弁当作りの時間にNHKラジオの基礎英語1〜3を聞き続けていました。
思い立って、インターネットでラジオ英会話の録音を聞くこともありました。
耳で聞き続けてきたことが、文章の区切りや、単語の続けての発言に少し役に立ったかな…。

 
4月4日午前、予定より早く議事がすすみ、いよいよ私の名前がよばれました。
ゆっくり読んで3分半におさまる短い原稿。
「おちついて。強調したいところは思い切ってゆっくり」と言い聞かせ、マイクに向かいました。
思いのほか落ち着いた声が会場に響きました。日本語より落ち着いていたかも…。

「Thank you for your attention.」
発言をおえて席にもどると、早川久美子衆院議員と、衆参の国際会議課の職員の皆さんが拍手で迎えてくれました。
日本を発つ時からずっと行動をともにしているからでしょうか、連帯感もましていて、サムアップで迎えてくれた職員の方も。
あ〜、ひと仕事やり終えた! ほっとしました。
その日の昼食、アフリカ料理のブッフェはいつも以上においしくいただきました。

今回は英訳してもらっての発言。
日本語で考えていること、話していることを、自分で英語にするのはまず無理だと痛感しています。
でも、日本語で文書をつくるとき、英語で訳したらどういう表現になるかを考えることは、なかなか興味深いものだと気がつきました。

「日本語専門」を自負しているようでは成長を止めているようなもの。
学びの道に終わりはないのだと、子どもたちに説教しているだけではダメ。
私自身の進歩成長へ努力していこう――この決意がさめてしまわないようにと思うこのごろです。

 
第3委員会委員会での発言の写真(4月1日)。
テーマは、妊産婦と乳幼児の健康問題。

日本代表団として、熟練した助産婦や医師・看護師の養成、避妊・妊娠・出産・感染症予防などの教育の大切さを強調するなどの修正案を提出しました。
修正案の内容にそって発言は、専門的な用語も多く、制限時間におさめるため、イントロダクション以外は日本語での発言となりました。

IPUの会議での発言は、どんな言語でも認めらています。
英語、仏語、スペイン語、アラビア語はそのまま各国の言語に通訳され、それ以外の言語は、事前に通訳ブースに英語原稿を届けることになっています。
自国の言葉で発言できるというのが、IPU会議があらゆる国の議会に開かれたものであることの象徴といえるでしょう。