日本共産党 田村智子
コラム

【12.04.11】ウガンダ記その4

3カ国の議員団と「バイ会談」

「会議日程のほかに、現地でバイ会談をセットします」――IPU会議の準備で言われていました。
日本代表団と他国の代表団の1対1の会談をさしていることはわかりましたが、「バイ会談ってなんの略だ?」と思ったまま、日程を終えて帰国してしまいました。
Wikipediaによれば、「バイ」=「二国間を意味するバイラテラル (bilateral) の略(和製英語)」だそうです。

期間中会談したのは、ウクライナ(4月1日)、メキシコ、モロッコ(4月2日)、そしてウガンダ議会の議長(4月1日)。

最初のバイ会談は、衆議院・西村智奈美団長(民主党)が口火をきりました。
IPU会議に継続して参加し、外務大臣政務官も務めた経歴をもつ方。
「ああ、こういうふうにすすめるのか」と大変勉強になりました。
(モロッコとの会談は、私と衆議院・大西健介議員の2人でのぞみ、立場上、副団長だった私が口火を切ることになったので、勉強したことを即実践という日々でした。)

政府間の対談と違って、与野党の議員が代表団にいることが前提での会談。
それだけに率直な意見が交わせて、議会間の交流の意味を体感できました。

ウクライナ代表団との会談では、チェルノブイリ原発事故への対応、教訓をお聞きすることが中心になりました。(写真はウクライナ代表団との記念写真。私の隣が西村団長)

 

事故から26年、石棺の老朽化がすすみ、新たな覆いが必要となっているとのこと。
被害者救済の範囲をどうするかも、検討課題という説明。
原発事故がどれほど長期に深刻な影響をもたらすのか、胸に突き刺さるようでした。

「26年が経過して、今も被害者の範囲をどうするかを検討しているのですか?」と質問してみました。
被害を広く救済してきた、しかし予算のこともあり、本当に深刻な被害を受けたのはどの範囲かをしぼりこむための検討が求められているというのです。

他の議員からは、「日本では、若いお母さんたちのなかで放射能に対する不安が大きい。ウクライナでは、どの程度の放射線量で線を引いたのか?」と言う質問も。
返ってきた答えは、「精神的な被害も被害としてみるべき」。
放射線被害と認定される疾病について対応するだけでなく、事故によってもたらされた被害を広くとらえてきたことをうかがわせる回答でした。

今後のエネルギーをどう供給するかも積極的な意見交換になりました。
ウクライナはロシアから電力を輸入しています。それが原発由来であることはウクライナにとっては看過できない課題のようです。
ガス、自然エネルギー、小水力(これは環境への負荷が大きいという発言でしたが詳しい話を聞けませんでした)など、原発依存ではない道を探求しているようでした。

「日本は他国からの電力輸入ができないので、原発から抜け出すのは困難では?」との質問が投げ返されました。
「まさに国会では議論百出ですが」と前置きしつつ、「海に囲まれているので、波力、海上風力など研究課題です。もちろん太陽光や太陽熱も」と私も話に積極的に加わりました。
他の議員も「火山の国ですから、地熱という条件もあります」と、原発からは一線を引いた発言。

メキシコとのバイ会談では、TPPの是非での意見交換。
私以外の議員は、両国ともTPPに参加すべきという雰囲気でした。
日本側の議員は「中国が国際ルールにのっとった経済活動を行うようにしむける」という主張。
かなり率直に、中国への批判が繰り返され、「なるほど自民党・民主党の積極派の思惑はここにもあるのか」と、ある意味、勉強になりました。
「違う意見の政党もある」これが前提なので、私の出番も。
(写真はメキシコとの会談で発言する私)

 

「著作権の問題をはじめ、国際ルールに準拠したグローバルな経済活動が必要なのは、私も同意見。しかし、そのことと関税ゼロは別の問題ではないか」
「特に日本では、食料輸入が深刻な問題。主食である穀物まで国内農業がつぶれてしまうとか、食料危機のもとで日本が世界の穀物を買いあさるようなことがあってはならない」
「食料自給率、食糧主権ということも国際ルールであるべき」
メキシコの代表もこれにはうなずいてくれました。

こういう固い話だけではありません。
モロッコの代表団とは、タジン鍋ブームが日本で起きていることを伝えると、
「モロッコは、アフリカで最初に、川端康成の翻訳本を出版した国」「三島由紀夫も人気作家」とのこと。一気に距離が縮まります。

海外での会議にのぞむときには、話題提供になるような情報を頭に入れないとな…またまた勉強になりました。
日本が他国にどういう関心を持ち、どんな関係を築いていくか――自らの見識を広め深めることが、日本議会の活動の豊かさにつながるのだと実感しました。
(写真はモロッコ代表団との記念写真)

 


その他、本会議(全体会議)の最中にも、他国の代表の席にこちらから短い挨拶に伺っての交流も。
インドの女性議長は、育ちの良さを醸し出す方。発言されたのをきっかけに、席を訪ねてあいさつをすると「日本の参議院議長はお元気ですか?」。
実は昨年11月、前議長、西岡武夫氏は急逝されたのです。そのことを伝えるととても驚かれて「ご家族に弔意を伝えます」とのこと。(写真下)


IPU会議の最終日には、会議期間中に総選挙が行われたミャンマー議会の加盟が承認されました。
期間中、アウンサン・スーチーさんの圧勝もニュース配信されていました。
「これからも困難はあると思いますが、民主的な議会と人民の力で、発展を遂げられますことをご期待申し上げます」――お祝いの言葉を伝えると、満面の笑顔。記念撮影をしましょうと迎えてくれました。

国会前の道路には、他国の議会人や政府関係者が公式に来日した際、その国の国旗が掲げられています。
忙しい毎日で、どこの国の国旗かなと思う程度だったのを反省しました。
自国の政治に一番の関心を払うのはもちろんですが、自国の発展のためにも他国のことにも関心を持つ度量がなければと思います。