日本共産党 田村智子
コラム

【12.03.27】これでは「使い捨て」雇用は止まらない

派遣労働法「改正」案で40分の質問


二日分の審議とみなして、少数野党に各40分の質問時間。
「これで十分でしょう」といわんばかりに、わずか2時間の審議で採決をすることが、厚生労働委員会理事会の「決定事項」として申し渡されました。

突然の法案審議入りに、どれだけ傍聴者が集まるか心配でしたが、全労連のよびかけだけでなく、連合も傍聴組織をしたとのこと。
議場の傍聴席は満席となりました。

私にとっては初めての40分間の質問。
3日間で4回の質問という、自分のキャパシティぎりぎりの状態で、質問を準備してきました。

「派遣切り」を食い止めるにはあまりに抜け穴だらけの政府案、その穴を可能な限りで拡大する修正が自民・公明・民主の議員によって行われました。
政府だけでなく、修正提案者にも、真正面からの対決姿勢でのぞんだ質問。
貫いたのは、「派遣切り」された労働者になりかわって――の一点です。

製造業派遣は「一部規制を行うべきである」という政府案を、「規制は一切行うべきではない」と修正した自民・公明・民主。
リーマンショック後の「派遣切り」は今後もやむをえないということなのか、と、単刀直入に切りこみました。

円高不況など状況の変化、労働者にも派遣で働きたいというニーズがある…答弁の内容はだいたいみえていました。
相手の土俵で質問するつもりはありませんでした。
「大企業相手に裁判を闘っている労働者は、大変な不安と困難をかかえながら裁判を続けている。なぜか、何より働き続けたいから。そして、自分の闘いが、人間の使い捨てを規制する法制度に必ずつながると信じているからだ」
「これにこたえるのが、労働行政ではないのか」

「日雇い派遣」の禁止も、ほとんど規制できないような条項になってしまいました。
1カ月未満の登録派遣は禁止としながら、その例外を広く認めたのです。
「雇用の機会の確保が特に困難なもの」は「日雇い派遣」でいいというのです。
どういう人か、「高齢者、学生、主婦、主たる生計者出ないもの」と例示されました。

「主たる生計者でないもの」とは?
親と同居している若者、夫婦とも不安定雇用でどちらも低収入の場合も、規制の対象外でしょう。
雇用の確保が困難な人ほど、使い捨ての対象としてつかわれてきました。冷凍庫の中で何時間も働かされ、十分な装備もなく手が凍傷になったなど、悲惨な労働体験を何度も聞いてきました。
短期の仕事ほど、直接の雇用責任を果たさせる、こんな当然のことがなぜわからないのか!

「みなし雇用」、違法状態で働かされた労働者を救済するために、違法派遣があった場合、直接雇用を申し込んだとみなすとする規定です。
しかし「違法かどうか」の判断はだれがするか、裁判に訴えなければ判断されないようでは現状を変えるものではないのです。

しかも、直接雇用の労働条件の明示がありません。5年、6年と偽装請負で働かされ、違法状態の告発をした労働者が、直接雇用されても2年11か月で雇い止めにされる。
ひどい事例では7カ月での雇いどめというものまでありました。
これを止めることができなければ、「みなし雇用」の意味がないはずです。

私が質問で追及したことは、すべて労働者のみなさんが裁判や集会で訴え続けていることばかり。
傍聴席からは、思わずというように「そうだ」という声が起こったり、拍手が起きたり。
静粛が原則だとわかっていても、こみあげる怒りを抑えることができないのだと、その思いに胸が熱くなりました。

採決の瞬間は、傍聴席のみなさんの思いを代弁しなければと、大きな声で「反対」と声をあげました。
続く、議面集会。熱い発言が続きました。
「これが終わりではない。厚生労働省がこの法改定をさらに省令で具体化する。ここからが闘いだ」
「有期雇用契約の法案では、さらに大きな闘いにしなければ」

「専門26業務」だとして、派遣の制限期間をこえて派遣のまま働かされてきたAさん。
集会後、駆け寄ってきてくれました。
「私は裁判でも泣いたことはないけれど、今日、田村さんの質問を聞いていて初めて涙がこみあげました」
言葉がすぐにはでませんでした。

国会で意見表明をしたかった労働者はたくさんいるはずです。その思いを全て代弁することはとてもできません。
けれど、人間の尊厳をかけて裁判を闘う1人ひとりの思いの一端を、直球でぶつけることができたならば、議員としてのかけがえのない役割を果たせたのかもしれない、そう思えました。

本当に闘いはこれからです。今より悪くする法律ではない。
現状を変える力を持たせるのは、現場のたたかい、それと結んだ行政の監視、議会の議論です。
これで終わりではなく、これからが始まりなのですから。