日本共産党 田村智子
コラム

【12.03.08】民法改正は国会の責務

国際女性デーに立法不作為を問う集会

選択的夫婦別姓、婚外子の相続への差別撤廃など、民法の改正を求めるみなさんが、国際婦人デーにあわせて、国会に集まりました。
「立法不作為を問う! 民法改正を求める院内集会」――このネーミングに、みなさんの怒りやいら立ちが集積されています。

法制審議会が民法改正の答申をだしたのは16年前の1996年。
「民法が改正されたら婚姻届を出す」と話していた友達のことを思い出しました。
ちょうど私達が20代後半に、「選択的夫婦別姓」という言葉が聞かれるようになり、30代になる頃には現実的な課題となっていたのです。

ところが、政府も議会も動かない…。
国連女性差別撤廃委員会からも、法制度の変更を求める勧告が何度も何度も日本政府につきつけられる。
勧告を議会に周知し、どのような進捗があったのかを報告するよう求められる始末です。

一体、いつ法改正をするのか。
婚外子問題は、子どもがどんな環境に生まれようと、法律によって差別待遇を実施するなど絶対に許されないことです。
ここに声高に反論を唱える政治家はまずいないでしょう。
それだけに、なぜ改正されないのかと怒りがわきます。

国会内でも異論が出されるのは「選択的夫婦別姓」についてです。
どうしたら事態を打開できるのか、発言を聞きながら色々に考えていました。
保守を標榜する政党からは、「夫婦別姓は、親と子の氏を違えるもの。日本の家族の在り方を変えてしまう」という強硬な反対論。
それは「家制度」にしばられた考え方でしょうと反論したい。親の氏によって家族が決まるものでもない。個々の家族の在り方に介入する必要もない等々。

同時に、皆さんの発言や指摘をうけて、国会のなかでは「家族が…」の土俵ではなく、もっとやるべき議論があるのだと、自分の認識不足を反省しました。

婚姻は当事者同士の意思によって決めるものであり、第3者から強制されるものではない、これは憲法が定めているというだけでなく、広く国民の認識になっています。
では、婚姻届を出すためには、自分の本意ではないのに氏を変えなければならない、これは「強制」ではないのか。

氏を変えなければ法律上、婚姻が認められないという制度は、憲法に照らしても、日本が批准した条約に照らしても人権侵害である。
現に人権侵害で苦しんでいる方が、たとえ少数であっても存在している。
この現実をどう考えるか。法律が人権侵害を行っているというのに、何もしないのか。

「選択的であれ夫婦別姓には反対だ」と、声高にいう政治家が恥ずかしくなるような議論を国会内で巻き起こさなければ。
価値観の問題ではない、民主主義・人権に関わる問題なのだと。

そして法改正をなんとしても実現する。
そのうえで、私達は風習にも向かわなければならないのだろうな、と思います。
別姓の夫婦への特別視、「家族のきずなを軽視している」という意見、そういう人との対話をしていく。
法改正が、現実の問題の解決につながるように。声には出していない、だけど氏を変わることに違和感をもつ女性たちにも届くように(婚姻時に氏を変えるのは9割以上女性です)。

選択的夫婦別姓の実現を求めて、国が民法改正をサボタージュしてきたことを訴える裁判も提訴されました。
原告の1人、76歳の塚田さん。
一人っ子の自分は氏を変えたくなかった。出産前に婚姻届を出し、出産後、離婚届を出し、そうやって自分の名前を守ってきた。けれど1人の力では限界だった。

お話を聞いていて、塚田さんの家族への愛や絆を感じました。
父母も、結婚後につくる家族と同じように、塚田さんにとってかけがえのない存在だったのでしょう。
氏を変えることは、自分の人生を否定されるのと同じだったのです。

私に引き寄せても考えてみました。
結婚しても私が氏を変えなかったら…生まれた時から今日まで、途切れることのない人生を今よりも感じていたと思います。
(ただ、結婚当時の私は、どこかに、「生まれ変わりたい」願望のようなものあったので、氏を変えることに、違和感を持っても苦痛ではありませんでした。不便はいっぱい感じましたが。氏が変わったことでの不都合や、自分の人生のある意味での「途切れ」は、政治家としての活動を始めてから感じました。)

子どもの氏を決める時は…真剣な話し合いをするだろうな。家族って何か、夫婦って何か、よ〜く考える契機になったでしょう。
子どもに与える影響は…赤ちゃんからそういう環境なのですから、それが自然だと思うでしょう。成長の過程では、夫の両親や親族、私の両親や親族が、どちらも自分に直接つながる存在だと、より強く感じるのではないだろうか。そう思えてきました。

もちろん、夫婦別姓の方がよいとか、同姓がよいとか、そういう議論ではありません。
けれど、こうやって考えると、結婚とは何か、家族とは何か、アイデンティティとは何か、多様に考えることができる、それはとても素晴らしいことだと思います。

思考や対話を重ねることこそ、民主主義の土台です。
選択的夫婦別姓をめぐっての対話は、日本の民主主義を成熟させる力になると思います。
夫婦にも家族にもいろいろな形がある、多様な価値観の存在を認める、異なる意見を排除しない、対話を重ねて、理は何かを追求し続ける、そうした成熟した社会への一歩にしていきたい。

平和と民主主義の発展を求めて、世界中の女性たちが行動する国際女性デー。
とても大切な集会に参加できたこと、本当に良かったと思います。
そして、民法改正法案、この国会で必ず動きをつくる! 私もその一人になるんだ!