日本共産党 田村智子
コラム

【11.12.26】全視協のみなさんとバリアフリー・チェック

議員会館の中に点字ブロックがない…

午後1時、丸の内線・国会議事堂前駅。
盲導犬をつれた全国視覚障害者協議会の田中会長はじめ、視覚障害者のみなさんが集まりました。
党議員団からは、笠井亮、穀田恵二、佐々木憲昭 衆院議員と私。
議員会館など衆議院の施設管理を担当する職員のみなさんも総勢10名。
衆議院のバリアフリー・チェックの始まりです。

まず地下鉄から衆議院の議員会館へ。
会館内の会議室、食堂、議員室などに移動しながらの実地調査です。

議員会館は外の歩道から玄関、受付の手前までは点字ブロックがありますが、玄関ロビーからは点字ブロックは完全に姿を消します。
1階ロビーは広々とつくられていて、壁をたどって歩くこともできません。

職員の方の説明では、受付から先は人がついて誘導することにしているので、点字ブロックは設置していないとのこと。
しかし、会館に入ってから出るまで、ずっと補助の人がついてくれる保障はありません。
なによりバリアフリーの基本は、障害者の方も自分の意思で自由に移動できるようにすることですから、これでは「バリア」そのものです。

さらにトイレのチェック。
以前、地下鉄永田町駅をチェックした時にも、トイレの水をどうやって流すのかがわからない、というお話を聞いていました。
議員会館のトイレも、視覚障害の方へのガイドは何もありません。
「新幹線のトイレは、ドアにトイレの配置について点字の説明がついている」との意見に、この数年で公共交通機関のバリアフード度が向上している一方で、国会の施設が立ち遅れているだと痛感します。

衆議院第1議員会館の多目的ホール。障害者のみなさんの院内集会が何度も行なわれたきた会場です。
廊下からホールの入口に向かうエントランス。ふかふかのじゅうたんに、ブーツのヒールでも足をとられる感覚があります。
足が不自由な方は、もっと歩きにくい、つまずくのではと思います。
車椅子での移動は大丈夫なのだろうか。調査の目でみて、初めて気がつきました。

食堂。ふと疑問がわいて、隣にいた方に聞いてみました。
「議員会館で食事したことありますか?」「ありますよ」
「メニューはどうやって選ぶのですか?」
議員会館の食堂は、ショーケースをみて食券を買ってから席につく仕組みです。
「介助者が居ればメニューを読み上げてもらいます。いなければ、食券を買うところで、どんなメニューがあるかを聞いて買います」

混雑している時は行列になってしまうので、ありそうなメニューを聞いて買うのだそうです。
例えば「そばはありますか?」「カレーライスはありますか?」というように。
席に座って、点字のメニューで、落ち着いて選びたい。
この要望には、職員の方も「その通りですね。早速、食堂に要望を伝えましょう」と即答でした。

国会(衆議院)の議員面会所の点字ブロックは大問題でした。
面会所の入口に「止まれ」の点字ブロック。ところがそこから誘導の点字ブロックが車道に向けてしかれていたのです。
誘導に従えば、目の前は車道です。

「道路の点字ブロックは、当事者といっしょにどう敷設するかを設計してほしい」
ありえない点字ブロックを確認しての意見です。
議員面会所の前の点字ブロックは、本当にごく一部しかありません。
ぜひ当事者の方といっしょに、点字ブロックの敷設をさせましょう。
国会周辺の道路は国道。交通バリアフリーの所管である国土交通省の責任が問われます。

今回の調査で、「シグナルエイド」というものを初めて見せていただきました。
視力がほぼゼロの方には、生活用品として支給されているともこと。
シグナルエイドが音声案内を必要とする人であることを電波で知らせる。
これを感知できる施設(信号機やトイレなど)で、電波を受けて音声案内を開始する――これは優れものです。
ところが、国会周辺の信号機、施設は何一つ反応しない。

「私たちは音声案内が必要だけど、ずっと鳴っていたらうるさいと感じる人もいるでしょう。シグナルエイドを利用できる場所がもっと増えればと思うのですが」
手のひらサイズで、みんな持ち歩いているのに、ほとんど利用できないなんて…。
周知がほとんどできていないということでしょう。私も今日初めて知ったのですから。
勉強不足を反省しつつ、これを普及できれば、バリアフリーが大きく前進するぞと期待がふくらみます。

今回の調査に議員会館の管理に関わる職員の方が多数同行したことは、大きな意味がありました。
障害者の方1人に職員1人がガイドとして同行し、一緒に歩く。
最初、相手の腕をつかんで歩こうとした職員に、「私があなたの腕に手をおきます。3歩ほど先を歩いてください」と、ガイドの基本を伝える場面もありました。
こうした体験が、今後のバリアフリーに大きな差をもたらすはずです。

実地調査後の懇談でも、施設改善の要望だけでなく、「避難訓練を障害者の方にも協力してやってみてはどうか」など、積極的な提起が話し合いの中で、形作られていきました。
2時間半の調査と懇談が、ちゃんと実を結ぶよう、私たちもチェックを続けなければなりません。