日本共産党 田村智子
コラム

【11.12.01】「今日は歯科デー」と声をかけられて

厚生労働委員会の一般質疑

「今日は歯科デーですね」、厚生労働委員会の昼休み、委員会室を出る議員の何人かから話しかけられました。
今日の委員会は、法案審議ではなく自由テーマの一般質疑。
ところが、偶然、3人が歯科医療問題をとりあげることとなったのです(質問順で、自民党の石井みどり議員、民主党の西村まさみ議員、そして私)。

偶然の中には秘められた必然があることも。
・来年4月に診療報酬の改定がある。
・長く診療報酬がまともに改定されてこなかったために、歯科開業医のなかに経営の危機が広がっている。
・医療費3割負担の影響で、特に歯の治療を中断する事例が多々ある。

この深刻な実態に、党派の違いを超えて議員が関心を持ち、質問で取り上げることとなったのでは…。

私がとりあげたのは、受診時定額負担と歯科医療の受診抑制など。
受診時定額負担は、診療を受けるたびに1回100円(住民税非課税の方は50円)を、医療費に上乗せして徴収しようというもの。

厚生労働省が示した資料では、この負担の導入で新たな受診抑制が起こることを認めていました。

「医療費3割によって受診抑制はすでに広げり、健康格差をももたらしている」
全日本民主医療機関連合会がまとめた「歯科酷書」。
劣悪な労働条件で歯医者に行く時間もお金もない、虫歯はどんどん広がり、歯が抜け落ち、口の中がぼろぼろになっていく30代、40代の男性。
10代で虫歯が19本。それでもお金が払えず、治療中断を繰り返す女性。
「口腔崩壊」とも言われるほどの悪化事例が、経済危機のなかで増えているといいます。

全国保険医協会連合会は、全国の歯科医師のネットワークをつかって「市民1万人アンケート」を実施。
「治療せずに放置している歯がある」と回答した人はなんと36%。
理由は、「時間がない」「費用が心配」が上位をしめた。

こうした資料を読み、質問を準備するなかで、当たり前のことに気が付きました。
「歯の疾患に自然治癒はありえない!」
そうなんです。痛む歯を放置していたら、どんどん悪くなって、広がっていくだけ。

内部疾患なども放置はもちろんよくありません。
けれど風邪などは、治癒する力は体内にあって、薬はそれを補助する役割を担うもの。
一方、歯は、残念ながら放っておいては絶対に治らず、ついには抜け落ちていくだけです。
それでは、「歯科での受診抑制はあってはならないのでは?」

受診時定額負担は、低所得の人ほど負担は重くなるのは自明です。
民主党内部でも「患者だけで支えあえというのか」と異論続出との報道。
「将来にわたって断念すべき」と強く迫りました。

「口腔崩壊」という事態は、この間、マスコミでも注目されるようになってきました。
小さな子どもまで乳歯がほぼすべて虫歯、学校の歯科検診で虫歯を指摘しても一向に治療されない…貧困の一番の犠牲者は子どもたちです。
ニュース番組で特集されたものを私も見ましたが、神経がむき出しになった歯の写真に、うめき声をあげてしまいました。
「これは痛いだろうに…。食事はどうしてるんだろう」

歯がどんどん悪くなり、物がまともに噛めなくなれば、今度は身体全体が弱ってくるでしょう。
口腔崩壊、内部疾患になってしまえば、医療費は余計にかかります。
早くに治療して、定期的に歯をみてもらえば、結果、医療費が抑えられることになるはずです。
政治がやるべきは、大所高所からの政策でなければならないんだぞと、その思いを精一杯こめての質問となりました。