日本共産党 田村智子
コラム

【11.10.27】医療保険制度はTPPの議題になっている

厚労委員会で小宮山大臣と全面対決

約2カ月ぶりの委員会質問です。
私の質問時間は午後4時過ぎから25分間。

10時に開会。他党の議員の質問を聞きながら、自分の質問原稿を見直す、頭に入れる――これは毎回の委員会でのこと。
今回は、直前に手に入れた英語の文書と、質問直前まで格闘することになりました。

アメリカ通商代表部(アメリカ政府の一機関)の文書。
Trans-Pacific-Partnership Trade Goals to Enhance Access to Medicines
(医薬品へのアクセス強化のためのTPPの目標)
昨日(10月26日付)の「日本農業新聞」で、参加国に医療保険制度の変更を求める内容だと報道されたのです。

インターネットで入手し、A4用紙に印刷した5ページの英文。
秘書さん、党本部の国際部の方の協力をえて、問題となる部分をピックアップして日本語訳してもらう。
私も自分で目を通しておきたいと思い、乏しい英語力をしぼり出しての格闘。

なぜこの文書を重大視するか。
政府がTPPの議題に医療保険制度は含まれていない、TPPに加盟しても日本の医療制度に影響はない、という宣伝を繰り返しているからです。

この文書を入手する前に私達が注目していたのは、オーストラリアとアメリカが締結したFTA(自由貿易協定)です。
FTA締結後、医薬品の扱いについて協議する作業部会が両国の代表によってつくられ、その翌年、オーストラリアの医療制度が事実変更されているのです。

オーストラリアには、医薬品の薬価を低く抑えるための政府の補助制度があります。
新薬についても、ジェネリックと効能や価格を比較して政府が薬価を管理してきました。
ところが、新薬は別扱いとなり、製薬企業の卸値が高く維持されるようになったのです。

なぜか。アメリカでは、医薬品は完全な自由価格。製薬企業からの卸値はオーストラリアの3〜10倍。
政府が価格を管理するのは、製薬企業が「知的財産権」の恩恵を十分受けることを妨げている、というのです。

特許薬、新薬は企業の開発コストが相当にかかっていますから、それを尊重することは大切です。
しかし、他国の重要な医療制度の変更まで求めることになれば、これは「製薬企業の利益を人命の上におく」ことになりかねません。

TPPでアメリカはオーストラリアに求めたことを、さらに強硬に要求する可能性は高い。だからオーストラリアでは、これ以上、医療制度を崩すわけにはいかないと、大きな反対世論が巻き起こっていると報道されています。

「これらの事実を認識しているのか」(私)
「アメリカの文書は確認している」(小宮山大臣)
「それでも医療保険制度は議題になっていないというのは、国民へのごまかしではないか」

「ごまかし」「詭弁」、きつい言葉を思わず口にしてしまう答弁。
あげく、「交渉に参加して不利益があることがわかれば、途中で抜ければいい」との答弁には、口にはしませんでしたが「能天気」という言葉が何度も思い浮かびました。

委員会が終わって、ある医療専門紙の記者から声をかけられました。
「アメリカの文書や日本農業新聞をコピーさせてもらえませんか。農業新聞に抜かれるようではだめですね…」と反省しきりの様子。
日本農業新聞の記者も、厚生労働大臣の答弁を確認させてほしいと問い合わせがありました。

「TPPは農業問題」、反対するのは農協のエゴであるかのような報道の嵐。
そのなかで、農業関係者の方々は、専門紙の記者を驚かせるような調査・研究をして、TPPが日本に何をもたらすかを告発しているのです。
私達ももっと努力を急速に強めなければと、私も反省しました。

TPP推進の抽象的な意見に対して、TPP反対の議論は実に具体的で、世界の国々が共生しともに経済や文化を発展させていくという道理を貫いています。
医薬品の問題をめぐって、一層その思いが強くなりました。

(写真は、10月26日、日比谷野音で行われたTPP交渉参加反対の集会)