日本共産党 田村智子
コラム

【11.10.14】「ここに居ていいんだよ」と政治がメッセージを

福島市内の保育所、病院で放射能汚染の調査

 
13、14日の二日間、福島市内で放射線量が高いとされた地域を訪ねました。

市立渡利小学校から徒歩2分ほど、神社の隣の民家に「きりん学童」がありました。
指導員の方からお話を聞いている最中も、「ピ、ピ、ピ…」と線量計の測定音が続きます。

全国支援で労働組合から送られた放射線測定機、市から貸与された測定機、積算線量計、子どもが忘れていったガラス線量計。
つねに放射線量をはかりながらの生活が続いているのです。

学童の敷地内を除染しても、周辺がそのまま。隣の神社が子どもたちの遊び場だったのに、事故以来、外遊びは全くできなくなったといいます。
神社の大きな椿の木は実がたくさん落ちていて、「毎年、椿の実の中をくりぬいて笛をつくったりしたのに、今年は拾っちゃだめなんです」
子どもたちは、自ら外に出ない、クリの実も椿の実も拾わない、それだけ放射能汚染を意識する毎日を送らざるをえないのです。

社会福祉法人の保育所、さくら保育園。
「園庭の除染のとき、建物の高圧洗浄が作業に入っていないので、業者の方にその場でお願いしてやってもらいました」
厚生労働省の制度は、毎時1マイクロシーベルト超の児童福祉施設等での「表土除去」に補助するというもの。建物などは内閣府の制度。このタテ割が混乱をまねているように思えます。

表土の土は削って入れ替えても、遊具の下・靴脱ぎ場等に敷いてある(張り付けてある)マットなどは対象外。
靴脱ぎ場のゴム製マットはコンクリートに接着されていて、はがすには多額の費用がかかります。どうすればと専門家の意見も聞いての苦肉の策が「ペットボトル」。
水で放射線を防御できる、それではと、保護者にペットボトルの提供をお願いして800本集め、敷き詰めたり窓辺に置いたり。
翌日訪ねた、さくら南保育園でもペットボトルがあちこちに置いてありました。

夏にプール遊びをするのか、行事をどうするか、ベランダに子どもを出すか、園庭を除染してもいつから外遊びを始めるか等々、悩み苦しみながらの保育が続いていることがよくわかりました。
「家庭の中でも、市外に避難させなさいと他県の祖父母から言われて、母親が追い詰められたり、夫婦で意見が違って家庭内不和につながったり、大変な状態。子どもたちは親の苦しみを敏感に受け止めている」
そうした不安にも答える役割が保育園にはあるんだと、保育士のみなさんもまた苦悩を深めながらの保育実践を強いられています。

「厚生労働省は何も言ってこない。全部、施設に判断が任されている状態」
保護者の不安・悩みにこたえるのは私達の責務だと、正面から向き合っている保育者の方々。
行政がその苦悩をどこまで理解しているのかと、私も自らの認識のいたらなさも反省しつつ、ひたすらお話をお聞きしました。

子どもたちは室内でも元気!元気!
昼食前の自由遊びの時間、4歳児の子どもたちが話しかけてきたり、まとわりついたり、絵本をみせてくれたり。
この子たちが外で遊びたいと言わない、それが保育士にも保護者にも一層のつらさとなっていることでしょう

夜、数人の保護者の方々と懇談。5歳の子どもさんを連れたお母さんも参加してくれました。
外遊びを再開した保育園では、時間は30分、遊具は線量が高いので触ってはだめ、という状態。
ゲームで遊びながらも私達の話を聞いていたのでしょう、5歳の男の子が「のぼり棒、やりたい。でも放射能がついているからダメ〜」と声をあげました。

 
子どもたちをとりまく厳しい状況。
学校は安全なのか、給食はどうか等々、母親たちが思いを出し合ったことがきっかけで、放射能対策子どもチームが立ち上がりました。(県内の団体でつくる、ふくしま復興共同センターの中のチームです。)

事務所になっている新日本婦人の会福島県本部を訪ねて、メンバーのお母さんたちと懇談。
話している最中にもこみあげる思いや涙をこらえているのが伝わってきます。
運動会は体育館で学年ごとに。6年生の器楽隊の演奏、体育館では全学年に見せることも、地域の方々の前で演奏することもできなかった…。

6年生全員が参加して、毎年の運動会では、低学年の子どもたちが憧れの目で見つめ「自分たちも6年生になったら…」と思いを膨らませる――小学生時代の大切な大切な思い出になるはずの時間が奪われてしまった。
東電や政府がどんなに謝罪しようと(謝罪していませんが)、取り返しのつかないものなのだと、私も胸が痛くなりました。

お話を聞いた方々に共通しているのは、「私達はこの町に住んでいたいんだ」ということ。
――自主的避難をした人も、逃げたくて避難したのではなく、住み続けたい思いをこらえてやむにやまれず避難を選んだ。
――残っている私達は放射能に無知なわけでも、無頓着なわけでも、不安が解決しているわけでもない。「子どもをなぜ避難させないのか」などと、言葉を投げつけないでほしい。
高線量といわれた地域のみなさんが、他の地域からどれほどのプレッシャーを受けていることか!

「子どもにここに居ていいんだよ」と言いたい。政治がそのメッセージを送ってほしい。
この思いにこたえるため、聞き取った現実、要求を臨時国会の場で政策に実らせなければなりません。