日本共産党 田村智子
コラム

【11.08.11】予算委で質問 子どもの命と保育制度

「新システム」に新たな怒りがわきました

テレビ中継が入った予算委員会は4度目になりました。今回の質問時間は15分。これまでより5分長い。
とりあげたのは「保育」です。秘書時代からずっとずっと、政府の待機児童対策に違和感と怒りをもっていました。やっと国会の場で発言できる、質問の順番が近付くにつれて、様々な思いが沸いてきます。

冒頭、東日本大震災のとき、保育所がどれだけ大きな役割を果たしたかを紹介しました。
津波に襲われた陸前高田市、地震はお昼寝の時間に発生。
保育士さんたちは子どもたちを起こし身支度をさせて避難の車に乗せ、赤ちゃんをおんぶして、必死の努力で子どもたちの命を守りぬいたのです。

泣いている子どももいたでしょう、突然のことに子どもたちはみんな戸惑ったでしょう。
保育士と子どもたちの信頼関係、保育士の日ごろの経験と訓練、そして物理的に子どもたちを1人残らず把握できる保育士の配置…
こうしたこと全てが、子どもの命に直結した――保育制度がどうあるべきか、はっきりと見えてくるのです。

認可保育所も、無認可の保育所も、子どもの命を守り、1人ひとりの子どもの成長によりそって、保育を実践している。
ところが、残念ながら一部に、子どもの死亡事故を繰り返している保育所経営者がいる、そして不適切な保育所があることを知りながら、行政が指導監督しきれていない。

それなのに、今、政府は「子ども・子育て新システム」で、保育を市場にゆだね、営利目的の企業にもどんどん参入してもらおうとしている。
子どもの命を守る保障がどこにあるのか。
これが質問の主旨。

準備の過程で集めた、子どもの死亡事故。保育所入所後間もない子どもの事例がいくつもありました。
福島県郡山市、保育園に慣れずに泣いていた1歳の女の子、無理やりうつぶせ寝にして頭の上にまで布団をかぶせ、上から重しまでのせて死亡させた事例(施設長は原因不明の突然死を主張)。
両親が調べてみると、同じ経営者が、名称の違う保育園で2度の死亡事故をおこしていたことがわかった。

神奈川県川崎市、11か月の男の子、ならし保育から一日保育になった2日目にうつぶせ寝の状態で死亡。両親が「突然死の危険性があるという、うつぶせ寝にしたのはなぜか」と問いただすと「うつぶせ寝ではなく、腹ばい」と園長は主張。川崎市に情報開示を求め、10年前にも死亡事故を起こしていたこと、この数年、保護者の苦情が多く、市が何度も立ち入り調査をしていたことがわかった。

多くの保育所は、認可でも、無認可でも、子どもたちの成長を何よりも大切にした保育をしています。
一方で、保育に使命感をもっているとは言い難い、「金儲けの手段」にしているのではという事例が決して少ないのも事実です。
そういう事業者を今でも、排除できない。もっと大規模に参入してきたらどうなるのか。

細川厚生労働大臣、与謝野少子化担当大臣(与謝野さんを指名したら、議場が、え〜与謝野さんが子育ての担当?という声と雰囲気がわき起こりました)、そして菅総理。
3人とも、死亡事例はあってはならない、と言いながら、参入規制の緩和をしても、不適切な事業者が入ることはない、と断言できません。
「たくさん参入して、一つ、二つ問題のあるところがあった、これは保育では許されない」
思わず、語気が強くなりました。

「待機児童が多いから、新しいところに参入してもらう、安全性との両立をどうとるかは課題」「一概に企業全てが悪いとはいえない」と菅首相。

待機児童対策といって、これまで何をやってきたか。
定員を超える入所を求め、保育室の面積基準の緩和を認め、つめこみ保育にしてきた。
公立保育所への国庫補助金を廃止し、一方で、株式会社の参入の旗をふる。
企業参入を促進するため、保育所運営のための補助金を保育以外に使ってもよい、ということまで検討している。

私がこう指摘すると、自民党席からも声援が。
これには内心苦笑しました。全部、自民・公明政権がやってきたこと。
とりわけ小泉政権の構造改革が、規制緩和を次々にすすめたのですから。

質問してみて確信しました。
「新システム」の検討のなかでは、死亡事故についても、不適切な保育を行っている保育所への行政の指導・監督の現状も、何も検討されていない!
これはだめです。あまりに無責任です。

質問後、反響もよせられました。
保育所経営者という方。「共産党支持ではないが」と前置きをして、「よくとりあげてくれた。これからも追及してほしい」、嬉しいですね。

家では娘も友達と一緒にテレビを観ていたようです。
「何の質問したかわかった?」(私)、「児童虐待」(娘)
「自民党の人が応援していたみたいだけど、それっておかしくない? だって自民党がやってきたことでしょう?」(娘)

どこまでわかっての言葉か、不明ですが、秘書時代から保育問題で調べたり、演説会や学習会で話していたことを、見聞きしていたのでしょうか。

「子ども・子育て新システム」は、何が検討されているのかなかなかわかりにくくされています。
この質問が、世論を広げる一助になればと願っています。