コラム
【11.06.28】B型肝炎原告団が政府と基本合意
「生きるため」の次の一歩へ
衆議院の議員会館の大きな会議室が熱気に包まれていました。
3年におよぶ裁判、原告団と政府が和解の基本合意を締結し、つい先刻、管首相そして細川厚生労働大臣が正式に謝罪の言葉を述べたのです。
悲痛な表情で何度も国会に足を運び、集会や要請行動、抗議行動を繰り返していた原告の方々。
笑顔があり、ほっとした表情があり、握手を交わしあう姿も、これまでとは大きく違います。
「やっとここまで」「そしてここから」、そんな思いが会場にあふれていました。
集団予防接種で、注射針や注射筒の使い回しからB型肝炎ウィルスに感染。
危険性が国際的にも指摘されながら、集団予防接種を続け、注射器の使い回しへの対策もとられなかった。
ウィルス感染は日本中で100万人とも150万人ともいわれています。
いくつもの困難をのりこえながら、そして課題を残しながら、それでも正式に日本政府としての責任を明らかにし、明確な謝罪が行われた、原告のみなさんが「せめて」と求めていたことが、やっと実現したのです。
昨年夏の初当選以来、B型肝炎の原告団・弁護団のみなさんは、何度も何度も議員会館に足を運んでくれました。
それぞれの悲しみ、苦悩、怒り、お話を聞くたびに新たに知ることがありました。
議員として自分に何ができるのかと、何度も自らに問いました。
昨年12月の「年内解決」をかかげた壮絶な運動。
寒さの中、首相官邸前、厚生労働省前と、病をおして立ち続ける原告団の姿がありました。
与野党を問わず、国会議員が一致して首相官邸に申し入れ、そして共同の記者会見。
原告団のねばりづよい運動が、各党を動かしたのだと思います。
国会議員に弁護団に、そして支援を広げた学生たちに、原告のみなさんからお礼の言葉が続きました。
私は、原告のみなさんに心からの感謝と敬意を伝えたいと思っています。
駆け出しの議員の私が、みなさんと出会えたことで、どれほど多くのことを学んだことか。
この集会の数時間前、何度もお会いしてきた大阪原告団の男性が部屋を訪ねてくれました。
昨年末、悲壮な表情で「厚生労働省前に野宿してでも座り込みを続ける」と言っていたことを思い出します。
「僕らは賠償金をもらっても病気は治らない。本当は肝炎ウィルスを取り除いてほしい。もとの身体に戻してほしい」
今日は、初めてみる穏やかな表情で、未来への希望を語ってくれました。
「政府は、救済にはお金がかかるとか増税が必要とか、希望がみえる話をしない。例えば、B型肝炎ウィルスを消滅させる薬が開発できれば、世界に輸出することもできるはず。未来につながる発想が必要ではないか」
原告と政府の和解協議をすすめてきた札幌地裁の裁判長は、基本合意案がまとまったことで所感を述べています。
「救済である以上、被害者がいきていらっしゃるうちに救済を受けて頂くことが肝要です」
「肝硬変、肝がんの被害者の方々は、過去の賠償というより、今後の生きるための和解をするんだという気概を持って和解金をご自身で受け取って頂きたい」
「基本合意は当事者の互譲によって成立したもので、これがベストということではありません」「あらためて国会その他の場で御討議頂いて、よりよい解決をして頂ければと思います」
(全国B型肝炎訴訟弁護団の分析による文書より抜粋)
バトンは私達の手に渡されました。