日本共産党 田村智子
コラム

【11.06.09】在宅介護のとりあげを許すな

介護保険法「改定案」参厚労委で審議始まる

なんとわかりにくい法案か…。悪戦苦闘の質問原稿つくりとなりました。
法律の条文、法案の条文と格闘し、厚生労働省から説明を受け、秘書のみなさんと意見交流。

いつもの質問づくりの光景ではありますが、論戦のポイントに確信を持つまでの検討、その論点をわかりやすく提示するにはどう攻めるかの検討が、予想以上に大変な作業になりました。

介護保険制度そのものがわかりにくい、ということもあります。
加えて改定案は、これからの新しい事業を漠然と示すもので、これが何をもたらすのかを空想ではなく、解明するのが大変だったのです。

2006年度の改定で、「要介護」だけでなく、「要支援」という認定基準ができて、様々な介護のとりあげが起きました。
介護保険でベッドをレンタルしていた方が「あなたは要支援になったので」とベッドをとりあげられたり、ホームヘルプサービスの回数が大幅に減らされたり。

あまりにひどい「とりあげ」は、現場と地方議会、国会を結んでの追及で改めさせましたが、「介護抑制」が起きたことは明らかです。

今度の改定案が何をもたらすか。
「要支援」の方が、ホームヘルパーさんから受けている家事援助、入浴介助。これを、ボランティアや近所の方の家事手伝いに置き換えられる、こういうことが起きないか。
大塚副大臣の答弁は、こういう事態が起こることを否定するものではありませんでした。

できるだけわかりやすく質問したつもりですので、後日、ぜひ議事録もお読みいただければと思います。

改定案の土俵で質問するだけでは、介護保険の現状、何を解決すべきなのかは見えてきません。
質問の前半は、こちらの土俵での論戦にしました。

「保険あって介護なし」、その象徴は特養ホームの待機者42万人です。
いったいどういう方々が待機者になっているのか、私も、各地で深刻な実態をお聞きしてきました。

しばらく前に書店で見つけた『認知症と長寿社会 笑顔のままで』(信濃毎日新聞取材班)という新書も、この質問の準備過程で読みました。
昨年77回にわたって、長野県内の認知症の高齢者を取材したルポルタージュを掲載。大きな反響をよんだとのこと。

買ったままになっていた本を、1週間ほど前、「いよいよ介護保険法案の審議だ」と、通勤電車の中でひもときました。
数ページ読んだところで、激しい衝撃を受けて、ボロボロ涙をこぼしてしまいました。

この本の冒頭で、元小学校の養護教諭の女性が登場します。次第に、人の話がわからなくなる、自分がどこにいるかわからなくなる、その不安といらだちがつづられた日記から伝わります。
元気だった頃の姿を紹介するところで、はっと気がつきました。

小学校でお世話になった保健室の坂口先生だ!(新聞掲載の時も本人の希望で実名での報道となったとあります)
あの坂口先生が…。そう思ったとたん、嗚咽がもれそうになりました。

私が通った小諸市立野岸小学校。
朝、授業前に坂口先生のよびかけで20人ほどの子どもたち(4年生以上だったでしょうか)が、体育館で運動をしていました。
肥満気味だったり、運動が苦手な子ども(私もその1人)が、毎朝、楽しく参加していました。

昼休みの全校生徒の運動の時間。
坂口先生が考案した「棒体操」は県内でも注目されていたそうです。
子どもの胸の高さほどのしっかりした棒(特別注文だったのでしょうか)。
この棒を手のひらにのせてバランスをとったり、地面に立てて、手を離してくるっとまわって倒れる前につかむ、棒を使っての柔軟運動など、音楽にあわせての体操は、遊び心を刺激するものでした。

さらにユニークなのは、私たちの小学校は、梅雨の季節頃から8月まで、上履きがビーチサンダルになったことです。
親指ではさんではくものという指定。足がむれない、足指を刺激するなど、子どもたちの健康を考えてのとりくみ。
保護者への説明もきちんとされていたのでしょう。親たちもすすんで、ビーチサンダルを用意していました。

保健室の先生がこれほどの発言権を持ち、学校の方針に独自性を発揮する。
坂口先生の信念と行動力、保健室の先生の意見を尊重する当時の学校運営、今、その「すごさ」が本当によくわかります。

認知症となった自分の姿を新聞にそのまま掲載してよいと言われたことも、「ああ、坂口先生だ」と、敬愛の思いがこみあげてきます。
本を読みながら、何度も「坂口先生、坂口先生」と呼びかけている自分がいました。

介護が必要となることを誰も自ら望んでいないでしょう。
身体が動かなくなる、記憶が乱れていく、これまでと違う自分になってしまう、その痛みをわかちあえるような介護がどうしたらできるのか。
改定案が描く机上のプランからは、どうしても、お1人お1人の姿がみえてこないのです。

法案の審議は来週火曜日、再度行われ、そのまま採決されることになります。
「介護現場の方などを呼んでの参考人質疑をぜひやってほしい」、委員会に先立つ理事会で求めたのは私だけでした。
来週2回目の私の質問はわずか15分。現場の声を伝えられるよう、次の質問へ準備が始まります。