日本共産党 田村智子
コラム

【11.05.12】「住居を失った人も職業訓練・手当の対象」

求職者支援法の審議で職業安定局長が答弁

第2のセーフティネットと鳴り物入りで出された法案が審議されました。
「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律案」、通称「求職者支援法」。

失業手当の給付対象外の人が、職業訓練を受けられる、収入も財産もない(極端に少ない)場合には毎月手当も受けられる、という内容。
これまで1年半にわたって実施されてきた、これを法律で恒久化しようというものです。

法案の内容がわかったときには、拍子抜けするような中身の薄さに驚きました。
法律の条文にはありませんが、手当の額は全国一律「月10万円」。住宅手当も、扶養手当もないのですから、果たしてどこまで活用できるのか。
職業訓練も民間にまかせて、ハローワークが認定した講座には国が補助金を出すというもの。事業者の不正事件も起きています。
公共職業訓練を切り縮めながら、民間にお金を出すというのは違うのでは、という疑問はふつふつとわいてきます。

しかし! せっかくつくるのなら、できるだけ「使える制度」にしようじゃないか!
衆議院の議事録で読みながら、そう決意しました。

これまで街頭相談活動や、「派遣村」で出会った方たちが利用できるようにする。
そのためには何が必要か…

質問 「月10万円」では貯金がなければ、手当で生活して職業訓練を受けることはできない。
4世帯に1世帯は貯蓄ゼロ。貯金のない人はどうしたらいいのか。
答弁 貸付制度もある。

昨年末、労働生活相談に取り組んだ弁護士の話を思い出しました。
東京都の貸付制度を利用した方、就職できたら返さなくてよいという貸付。就職できず返済もできず、とうとう自己破産の手続きをとらざるをえなかった。
私が相談にのった青年の顔も思い出しました。
「仕事がなく、家もない、サラ金から借金するしかなかった。それも返せないでいる自分にお金を貸してくれるわけがない」

質問 「月10万円」では生活できないので、生活保護制度との活用を積極的に認めるべき。生活保護を受けていることを理由に制度を利用できない、逆に、求職者支援法の枠組みで支援されていることを理由に生活保護申請が却下されることはないか。
答弁 生活保護との併用はできる。ただし手当の額は収入認定される。求職者支援法の制度を利用していることをもって、生活保護を却下することもない。
(よし!と、心のなかでガッツポーズ)

質問 住居を失った方の就労支援になるか。緊急一時宿泊施設や自立支援センターに入所している人がこの制度を利用できるか。
答弁 職業安定所長が必要と判断すれば、制度を利用できる。
(よし!よし!と、またガッツポーズ)

実は衆院厚生労働委員会での審議では「生活保護におとさないために」この制度がつくられる、かのような議論が行われていたのです。
読んでいて憤りを抑えられず、反撃に出ようと決めたのです。
生活保護は必要な人は活用すべし。入口も出口も広い制度になるように、生活保護+求職者支援制度でいいんだと、現場に徹底したいと思ったのです。

そして私がとりくんだ相談活動のなかで、どうしても変えたい制度運用があったのです。
一つは、緊急一時宿泊施設は求職活動ができないこと(日常生活を訓練するためだそうです)。
二つに、自立支援センターに入所しても、就職が難しいままに、ところてんのように押し出される方が何人もいること。
手当を受けながら職業訓練を受けられれば、住居をえるための貯金ができます。就職への希望も見えるのではないか。

相談活動をともにしてきた仲間たちに、この答弁を知らせなければ。
現場でつかえる制度にしなければ。
質問を終えて、遠回りしながら国会議員になってよかったと心の底から思いました。
街頭で相談活動しなければ、相談者の方といっしょに福祉事務所に行ったり、制度の壁にぶつかって悩んだり、緊急一時宿泊施設を実際にみたりしていなければ、この質問はつくれなかった…。

さあ、この秋から始まる求職者支援の新しい枠組み。
必ず現場でつかえるように、ここからが新しい挑戦です。