日本共産党 田村智子
コラム

【11.05.01】わずか16kmの東京外環道に1兆円超の予算

大型公共事業の見直しを国交大臣に求める

財政金融委員会に厚生労働、国土交通省の2つの委員会が合流して、50人超の大型委員会が開かれました。
しかもメーデーの日曜日、時刻は午後5時30分。前代未聞の国会運営が続きます。
震災対策の第1次補正予算を成立させるためには、ゴールデンウィークも休日返上で審議しよう、各党の合意です。

厚生労働委員の私、財政金融委員会の大門みきし議員、日本共産党からは2人が出席し、わずか7分ですが私が質問にたちました。

第1次補正予算案の歳入部分に関わる法案の審議です。
参議院で、日本共産党は国土交通委員会に議席がない。せっかくのこのチャンス、7分間をつかって国土交通大臣に質問することにしました。

復興財源にあてるため、公共事業を被災地に重点的ふりむける、そのために「公共事業予算の5%留保」が、閣議で決定されています。
「これをどのように具体化したのか。留保した事業はあるか?」
「事業としての見直しはこれから検討する」
大畠大臣のこの答弁は、事実上の「逃げ」です。

事前に国土交通省に説明を求めたら「事業としての見直しはしていない。発注の仕方などで5%分は吸収できる」という説明をしていました。
工期を遅らせたり、あるいは発注額を減らしたりすれば、5%は帳尻あわせができるということでしょう。

「事業見直しはしない」、これで被災地への重点的な公共事業ができるのか。
たとえば、東京外かく環状自動車道(東京外環道)。
関越自動車道と東名自動車をつなげる、という、この自動車道は、地図でいえば練馬区と世田谷区をつなぐわずか16キロメートル。
このたった16キロメートルに総事業費1兆3000億円をかけるのです。

東京外環道建設反対の運動には、5年ほど前から関わってきました。
ジャンクション予定地の環境悪化、大深度の地下自動車で地下水に影響がでるのでは、東京で数少ない湧水の池が水枯れを起こすのでは等々、周辺の住民のみなさんの声に耳を傾け、予定地域を一日かけて調査もしました。

大震災をうけて、今、あらためてこの道路建設の是非を本気で問いかけなければならないと思っています。

すでに網の目のように自動車道路がはりめぐらされた東京に、まだ、1兆円を超える予算を注ぎ込んで、たった16キロの道路をつくるのか。
考えるほどに、怒りにも似た思いがこみあげてきます。

東京への電力供給のために東北地方に原子力発電所がつくられ、ずさんな安全対策と危機管理によって、あまりにも大きな犠牲が福島のみなさんに覆いかぶさっている。
東京の莫大なエネルギー消費のために、東北地方をいわば「踏み台」にしてきたともいえるでしょう。
東京のあり方、首都圏のあり方を変えなければなりません。

東京外環道は、まだ道路建設は全く行われていません。
昨年度はじめて、用地買収の予算が約87億円計上され、執行しているのは50億円足らずでしょう。
今、この事業をいったんとめれば、1兆3000億円の事業予算のほとんどは凍結できるのです。

大畠大臣は、「渋滞解消のため」だと答弁しました。東京都も同じ説明を繰り返してきました。
東京外環道がなければ渋滞解消はできないのか。首都の交通機能はマヒするのか、とんでもありません。
百歩譲って「渋滞解消」という理屈が通ったとしても、そのために1兆3000億円もの税金を投じるのか。

7分ではこのことを主張して終わらざるをえず、不完全燃焼の感をぬぐえません。
そのうえ、公共事業の5%留保方針は、自民党は「やるべきではない!」と私たちと正反対の立場でものを言っているので、議場では私の質問に野次もとんできました。
時間があれば、「東北のみなさんに、東京の16キロの道路に1兆3000億円つかうと説明できますか?」と迫りたかった!

委員会終了後、たまたまエレベーターを乗り合わせた他党の議員から声をかけられました。
「東京にまだ道路つくるのか、というのはその通り。私は腹が立って仕方ない」

東京都民の良識を示す運動にしなければ!
東京外環自動車道の事業を凍結し、1兆円超の事業費は震災復興へ。
政府と東京都は、ただちに事業凍結の協議を開始せよ。
今なら間に合います。今こそ、世論を広げましょう!