コラム
【11.04.22】被災地へ��
北上町の避難所を訪問
宮城県訪問の2日目。民医連の医療チームとともに、石巻市北上町の避難所を訪問しました。
三浦市議の紹介で、北上町在住の市議会議員、西條正昭和さん（無所属の議員さんです）が案内人をひきうけてくださいました。
西條さんご自身も家も事業所も流され、親せきの家に身を寄せておられるそうです。
合併前の北上町役場、現在の支所は、津波の直撃をうけて壊滅。職員のなかに行方不明の方もおられて、何人が亡くなられたのかもいまだわからないそうです。
支所機能を移した、北上町の災害対策本部をまず訪ねました。
保健師さんが、北上町の避難所の状況、医療チームの派遣の状況などをお聞きし、個人宅を含めて11か所の避難所をすべて掌握していることに敬服しました。
お話のなかで、医療チーム支援が5月連休明け〜下旬にかけて縮小されていくであろうこともわかりました。
｢地域医療の再建」は決して先の課題ではないのです。
対策本部の玄関には、救援物資のダンボールの山。
野菜は何があるかとみてみると、じゃがいも、にんじん、大根、玉ねぎ。果物は、アメリカ産のオレンジ、バナナ。
カップめんや缶詰もたくさん積まれていました。
この間、国会でもとりあげてきましたが、｢救援物資の範囲｣の食事では、塩分が多くなり、ビタミンやミネラルがとりにくくなる。救援物資の活用、送る側の情報も検討が必要です。
対策本部に一番近い避難所、北上中学校の体育館へ向かいました。
日中は、片付けや仕事に出かけているのでしょうか、置かれている布団などと比べて人の姿は多くありません。
「今日から学校も始まったので、子どもたちもバスで学校に行きました」
石巻赤十字病院のスタッフや、地元の市立診療所の医師が中心になって、診療は２〜3日おきには行われているとのこと。それでも、医療スタッフのよびかけに血圧を測ってもらう方の姿がみられました。
私は西條市議や三浦市議といっしょに、車座に座っておられる方々に話しかけてみました。
｢参議院議員なんです」と控えめに自己紹介。
「北上は忘れられていたかと思ったよ」と、ざっくばらんな対話が始まりました。
新聞では北上町がとりあげられず、被災状況が伝わっていないのではと不安だったそうです。
「昨日の新聞にやっとこの避難所がのった」と話題になり、「これ、あんただね」と笑い声も。
「ここは、コンビニがない町なのよ」
地域のみなさんのつながりが、避難所での支えにもなっているようです。
「家は流さなかった。漬物もってここまで来たんだよ」と1人の男性。
ダンボールで作った即席のテーブルには、何種類もある漬物。
「漬物や魚を食べて、海や畑で働いて、身体動かしていたんですよね」と私。
「ホタテをやってきた。こんな小さなホタテ（親指のつめぐらい）が1年目。市場に出すには3年かかるね」
「ここでは座ってばっかりで。腰が痛くなる」
避難所のそばに畑を作ろうという計画があるそうです。
小さな子どもさんと一緒にいる女性に話しかけてみました。
「この子は軽度の自閉症で、昨日、やっと障害者支援センターの方と話ができて、これを借りることができたんです」
小型のＤＶＤ再生機。アニメをみられるようになって、やっと落ち着いたとのこと。
「これまでは保育所でいろいろ相談してきたから。早く保育所が始まるといいのですが…」
女の子のお母さんは仕事に出かけているとのこと。環境の激変のなかで、女の子も、お母さんも、大変な思いをしてきたことでしょう。
「年上の子どもたちが、いろいろ面倒見てくれたんだけど、学校が始まったからね」
子どもたちは、ランドセルを背負って体育館のなかを走りまわっていたとか。
「この避難所は、子どもたちが助かったからね…。子どもが何人も亡くなったところの避難所は、お互いに話しかけることもできないって。つらいよね」
午後、2か所の小さな避難所を回りました。
地域の集会所に、10世帯ほどでしょうか、身を寄せているようです。
突然の訪問ですから休んでおられるところに話しかけてよいもの、少々ためらいます。
けれど、「私、参議院議員なんですが、お話伺ってもいいですか」と話しかけると、どなたも、津波被害のこと、これからの生活のことなど、自然な対話になっていくのです。
話すことで心が安定するという報道記事を読んだ覚えがあります。
すぐにいなくなる私では、とてもその役割を果たしているとはいえないでしょう。
じっくり話を聞いて、一緒に涙を流し、励ましあう、地元の医師や保健師や先生たちの役割の大きさを考えずにいられません。
避難所の食事のことが気になって、積まれた食材をみてみると、対策本部と同じ保存がきく食材。缶詰の｢スパム」が箱のまま置かれています。食べなれない食材だからな…。
そんな私をみて、「青菜がなくてね…」と話してくれた方も。
避難所の玄関先で私達を待っていた、西條さんにそのことを伝えると、「俺、ほうれん草いっぱい積んできたんだ」と、すぐに自分のワゴンに走り、ダンボールでほうれん草を運んできました。
「ありがとうございます」、受け取った女性の明るい声が玄関に響きました。手渡した西條さんも笑顔です。
最後に訪ねた避難所では、子どもたちが５〜6人、1階の部屋に集まっていました。
女性(母親の1人でしょう）と少し話をしたあと、子どもたちにも声をかけてみました。
「何年生？」、こちらをじっとみつめる女の子、声を聞くことはできませんでした。
「5年生と4年生」、女性がこたえてくれました。私の隣で「僕は6年生」、男の子が声をあげてくれました。
時間があまりなかったことよりも、私も話しかける言葉がみつからずに、その部屋をあとにしました。
その数時間後、私は自分の甘さを痛感することになりました。
「ここまで来てくれたんだから、支所が流されたところをみてほしい」
予定時間を超えていましたが、市職員と西條さんの案内でさらに車を走らせました。
そこは、何もかもが流された町でした。道路のアスファルトさえ、はぎとられたようになくなっている…。
北上川を眺める町には、支所があり、体育館があり、お店があり、家があったはずでした。
残骸となった支所の奥に、白いコンクリートの建物がほぼ無傷で残っているように見えました。
「あれが小学校です。さっきの避難所の子どもたちはこの学校に通っていたんです」
「屋上に避難した子どもたちは、一晩、そこですごしました」
頭が一瞬白くなるような、ショックを受けました。
何を見なければならなかったのか、どんな音を聞かなければならなかったのか、考えが及んでいなかった。
失ったものがどれほど大きかったのか、この瓦礫の町がどんな痛みを残しているのか。
それを知っている方々が、子どもたちの痛みにしっかり寄り添っていくことが、どんなに大切か。復興は被災した方々が、足を踏み出すこと、この町のくらしを再生すること、そのことを確信しました。
夕暮れが迫っていました。
半日以上、案内をしてくれた西條さん、日本共産党の議員ではないけれど、なんだか同志と言いたくなるような気持ちになりました。
「必ず、今日見たことを国会の活動に生かします。お体に気をつけて」
西條さんと市の職員と握手をかわしました。心では、ハグするような握手でした。
また必ず訪ねよう。本当の復興ために私がやるべきことをやりぬこう。
帰り道、福島までの車中も新幹線の中も、予算委員会での質問をどうするかを考え、話し合い続けました。
頭はしびれるように疲れていたけれど、やるべきことをやりぬく、その一歩はここにある。
