日本共産党 田村智子
コラム

【11.04.19】原発周辺の住民の健康把握は?

厚生労働委員会で質問

「原子力災害対策本部の本部長である内閣総理大臣でございます」
大塚副大臣の答弁に、一瞬、フリーズしてしまいました。

福島第1原発周辺、住民の被ばく状態や健康への影響を把握し対策をとる、その責任をもつのは政府のどの機関か、という質問。
私ももっと想定問答をすべきだったとは思いますが、想定外の答弁だったのです。

厚生労働省は管轄外だと宣言するかのような答弁が出てくるとは…。
質問準備の過程で、いくつかの省庁に問い合わせても、はっきりした回答がなく、厚生労働省の役人と対面でやりとりするなかで、内閣府のもとに原子力被災者生活支援チームがあり、そこに厚生労働、文部科学、経済産業が集められていて、大塚副大臣もこのチームの一員だ、ということがわかりました。

だから、「厚生労働省をふくむこのチームが責任をもつ」ぐらいは答弁すると考えていたのです。
それが「総理大臣でございます」とは!
答弁の直後、議場にも、「なんだその答弁は」という空気が流れたほどです。

その後も、住民の被ばく量を把握するために、放射線の積算量を測る線量計を住民にも配布すべきではないか、と求めても「そのつもりはない」。
原発は安全だと宣伝してきた人たちと一線を画した立場で、放射線量と健康への影響について、被ばく医療に関わってきた医師などが住民の不安にこたえるべきではないのか、と求めても、「科学者の知見もいろいろある」と逃げる。

これまで、被災地の医療問題などでは、こちらが要求したことを否定しない、前向きな答弁が続いていました。
「なんなんだ、これは」――それが率直な思いでした。

私がこの質問で求めたのは、住民のみなさんの被ばく線量を事実にもとづいてつかむこと。
放射性物質を扱う労働者には、法律にもとづいて、1日当たり、1週間当たり、3か月当たり、1年間など、被ばく線量の上限を定め、積算線量の把握が事業主に義務付けられています。
住民のみなさんにも、放射線量を積算で測れる機器を配る以外、実態にそくした被ばく量の把握はできないでしょう。
計画的避難区域とされた地域の方からも「被ばく量をはかってほしい」という声は上がっていただけに、早く対策をと焦る気持ちです。

けれど質問を終えてから、もう一つ思うところがありました。
線量計を自分が身につけたらどういう気持ちだろうか…。数値があがっていくのを目の当たりにしていたら、ストレスで耐えられないかもしれない…。
これは難しい問題です。けれど事実から目をそむけていては、必要な対策も後手後手になってしまう。

アメリカからはすでに3万個、フランスから2万個の線量計が提供されています。
カナダ、イギリス、フィンランドなどの国々からも届いています。
これだけの数ですから、欧米では、住民が放射線量を測ることを想定しているのだろうと思います。
危機管理とは何か、事実を隠さない、最悪の事態への対応も排除しない、それが日本政府に求められているのではないか。

被ばく線量をどう把握するか、健康への影響をどう考え、どう対応していくか。
住民のみなさんの不安や要求ももう一度ていねいに聞いて、引き続き、国会でとりあげていきます。