コラム
【11.04.12】厚労委での質問中に地震発生
いつまで続くのか、非情な余震
午後2時、私の質問の順番がきました。
参議院の厚生労働委員会、国の職業訓練事業を「スリム化」するという法案の審議です。
質問原稿のQ3に入ったところで、突然、議場のあちこちから警報音が鳴り響きました。
3月11日以来、何度となく耳にしてきた、携帯電話の「緊急地震速報」です。
ざわめく議場、私も発言を途中でやめて「委員長、いったん中断しますか?」
委員長が事務方の職員と短くやりとりし、「速記を止めてください」
議事が正式に中断しました。その10秒足らずのやりとりが、やけに長く感じられました。
着席してすぐに揺れがきました。「大きい!」という声。
このまま委員会が続行するのか、それとも休憩に入るのか…。
震源が福島だという声、余震というにはあまりに大きすぎる地震がまた被災地を襲っている、その非情さがつらい。
揺れがおさまり、議事は何事もなかったかのように再開されました。
「続けていいのだろうか」という気持ちが頭をもたげつつ、質問を再開しました。
足が地に着かないような気持ちを切り替えることは、なかなかできませんでした。
この日の法案、雇用・能力開発機構を廃止する法律案。
昨年、同機構の職業訓練の場を時間をかけて視察していました。すばらしいとりくみだと、いたく感動しました。
失業者、求職者に3ヶ月から1年の実践的講座を行うポリテクセンター。
コンピューターで立体的に金型の設計をし、実際に金型の機械を動かして製品化する講座。ものづくりのだいご味を講座のなかで体感した受講生は、技能だけでなく働く意欲を高めていることがわかります。
高校卒業者が多く通う、ポリテクカレッジ。
4年生の小平校では、2年間をかけてチームでロボットや構造物をつくりあげていました。
金型設計(キャド)、溶接、パソコンをつかっての監視や危機管理プログラム、異なる専門科で学んだ学生たちが、お互いの意見・アイディアを出し合い、共同作業でつくりあげる卒業制作。
こんな教育の現場をみたのは初めてです。
他党の議員が「ムダを省くことが大切」「働かない職員の雇用は打ち切るべき」など、スリム化や機構の廃止を主張するのを聞いていると、「あなたたちは、現場に足を運んだのか。授業の様子を実際にみたのか」と問いただしたくなります。
3月11日の災害を受けて、これまでの政治の流れに問題はなかったか、真摯に考えるときを迎えていると思います。
ポリテクセンター、ポリテクカレッジの職業訓練・教育は、民間のものに比してはるかに質の高いものです。それは資金、人材で国がしっかり支えているからこそできるものです。
職業能力の開発は、個人の利益だけでなく、社会にとって必要なこと。産業の基盤をつくるもの。民間に任せればよいというものではないはずです。
被災地の若者たちが、ポリテクカレッジやポリテクセンターで学ぶことができれば、突然断ち切られた進路に確かな希望が見えるのではないか。
これだけ産業の基盤が失われた被災地の復興には、公共職業訓練・教育に、国をあげてとりくむべきではないのか。
廃止法案は可決されました。これでいいのか、一つの法案の問題でなく、3・11後の政治のあり方への疑問がふつふつとこみあげてきます。