日本共産党 田村智子
コラム

【11.02.14】大阪拘置所、大阪地検の中へ

参議院行政監視委員会の視察1日目

8時半東京駅を出発して、大阪に着くと雪がちらつき始めました。
委員会視察のバスは大阪拘置所の門の中へと入りました。
驚いたのは、すぐ隣に高層マンションが何棟も建っていること。マンションのベランダから拘置所が丸見えです。
施設の老朽化にも驚きました。最初の建築から50年を経過しているとのこと。
廊下や階段は空調がないため底冷えがします。バスを降りるとき「コートをもって」と指示があったのもうなずけます。

拘置所は、公判前、公判中の被疑者の収容所です。刑罰を受ける場所ではありませんし、無罪を主張をしている人もいます。
大阪拘置所は、厚生労働省の局長だった村木さんが収容され、検察の取調べを受けていた場所でもあります。

所内の視察では、一般の面談室、弁護士との面談室、そして検察や警察の取調べを行う「来庁調べ室」も見せていただきました。
家族などの面談は希望も多いため、一人10分。拘置所の職員が同席。
弁護士の面談は、制限時間はなく、職員の立会いもない。朝8時半〜夕方5時までの間が原則とのこと。
検察の取調べも制限時間はないとのこと。食事時間は保障するが、あとは検察や警察の裁量のようです。

個室の収容部屋の中にも入りました。古い畳が2枚、古い布団が一組、畳のスペースに置かれています。その奥には扉のないトイレと洗面台。窓からは鉄格子の建物と空しか見えません。
被疑者を収容するスペースとして、これはどうなのか…。
1日ここに入れられただけで、人間性を否定されたような気持ちになるでしょう。

食事も検食させてもらいました。
これはバランスのよい食事で、味も悪くありませんでした。
カレイのから揚げ、おひたし、フキの煮物、麦ご飯、カステラ風のデザート、温かい汁物。

視察後の意見交換で、私も質問しました。
「刑務所ではなく、未決の被疑者とどう接するかは難しいことだと思う。無罪を主張している方もいる。人権をどう考え、被疑者とどう接するか、職員の自己啓発のようなとりくみはあるのか」
「検察の取調べが長時間にわたり負担が重いという場合に、被疑者が主張できるのか」
どちらも回答ははっきりしませんでした。

現行犯逮捕、薬物やアルコール依存など、明らかに犯罪者である被疑者であっても、拘置所は、刑罰の執行の場ではありません。
まして、無罪を主張している人を事実上犯罪者扱いし、人間的とはいえないような処遇を当然とする、この矛盾を考えずにはいられません。

続いて、村木さんの事件の舞台となった大阪地検へ。
若手の検事や事務官の方々にも参加していただき、意見交流の時間ももちました。

証拠の捏造が行われた、その衝撃は、責任感と誇りをもって働いてきた地検のみなさんにどれほどの衝撃を与えたことか。
報道されているような、意見が言いにくい雰囲気、立件への否定的見解を上司に伝えにくい、ということについては、現場のみなさんは疑問の声をあげていました。

私は、事件そのものとは違った角度から質問してみました。
昨年の大阪地検の処理人数は14万9092人。検事162人で単純に頭割りすると1人あたり920人を担当したことになります。これは驚くべき数字です。
「捜査をもっとやりたいと思っても、時間的に限界だと感じたことはないのか」
「1人どれくらいの案件を同時に捜査することになるのか」

犯人であるかどうかの判断をするための捜査を最優先させる。
物的証拠については、調べつくす。
時間の限界のなかでは、捜査の方法、内容の取捨選択をするしかない。優先順位をつけていくしかない。
一度に最大16人、しかもすべて「無罪」を主張する案件だったことがある。そういうときは超過勤務でこなすしかない。
――答えてくれた私と同世代かと思われる検事は、冤罪はあってはならない、真相の究明こそ自分たちの職務という信念をまっすぐに伝えてくれました。

検事をもっと増やしてほしいという要望、検事が増えれば当然事務官も。率直な要望も出されました。
公務員削減という声高な要求が、真相究明へと身を粉にして働く現場の方々を追い詰めてはいないか。
誇りをもって働くみなさんを支えるのが、政治に関わる私たちの職務だと、私自身は確信しました。

時間を大幅に超過して大阪地検を出ると、外は降りしきる雪。
兵庫に向かうバスから六甲山は見えず、遠方は白一色の景色でした。
明日は、海上保安庁にも出向く予定。今後の議員活動に生かす視察にしなければ。