コラム
【10.12.24】怒りの声のリレーのようなクリスマスイブ
年金、消費税、B型肝炎、日航の整理解雇…
2010年もあと1週間。この年の瀬に、そしてクリスマスに、これほど怒りの声を連続して聞いたことがあったでしょうか。
午前11時、財務省前に集まったのは年金者組合のみなさん。
物価スライドで年金額をまた引き下げる、この政府方針に緊急の抗議行動です。
緊急のよびかけにもかかわらず、首都圏各地から高齢者のみなさんがかけつけて財務省前に抗議の列をつくっていました。
「物価が下がっているのは液晶テレビなど一部の商品。食料品などは政府の調査でも下がっていない」
「自民・公明の政治とまったく同じことを繰り返すのか」
怒りの声が宣伝カーから霞ヶ関の街に響きます。
連帯の思いをこめて私もマイクをにぎりました。
「4年前、2年前には、政府の調査でも物価はあがりました。しかし、年金の引き上げは見送られた。結局、物価調査は年金の引き下げのためだけに使われているではありませんか」
今でも食費を削り、猛暑の夏にもエアコンも買えず、エアコンがあっても電気代が心配でつかえない、節約に節約を重ねて暮している高齢者のみなさんに、こんな仕打ちがどうして許されるのか!
財務省前からすぐに新宿駅西口へ。
正午からの消費税廃止各界連絡会の宣伝行動に合流しました。
来年度予算案では法人税の税率5%引き下げ、その先に待っているのが消費税増税。その筋書きがくっきりみえてきます。
社会保障をどう支えるか、それは国民なかでも本気の議論が必要です。
そういうもとでの法人税減税は、あまりにも支離滅裂、理不尽がすぎます。
「法人税減税で、景気が回復がするでしょうか、雇用が増えるでしょうか」
消費税導入前42%だった法人税は、何度も引き下げが繰り返され、いまや30%(研究開発減税などなどで、実際の納税は利益の10数%とか20%台の大企業がいくつもあります)。
それで正社員が増えたり、給料が上げられてきたか、とんでもない!
急速にのびたのは役員報酬と株の配当金、そして企業の内部留保です。
国会にもどって、議員会館の自分の部屋で食事をとっていると、B型肝炎の原告団の型が部屋を訪ねてくれました。
22日の札幌地裁での国との和解協議は、なんの進展もありませんでした。
「民主党も一緒に、和解協議で国が一歩踏み出すことを求めたのに、なぜなんの進展もないのか。民主党は政府にどのような働きかけをしたのか」
超党派でまとまっての行動にまで発展したことが、原告団を本当に励ましたのです。それがなんの進展にもつながらなかった、その失望がどれほど大きいことか。
「このままで終わるわけにはいきません。厚生労働省前での泊り込みも辞さない、そういう思いです」
年内基本合意をと力を集中して運動を展開していたみなさん。どう励ますことができるのか、どうやって事態を打開できるのか…。
原告団の代表と握手をかわして、次にむかったのは外務省。神奈川原水協など平和団体のみなさんの要請行動に同行しました。横須賀港を母港とする米軍の原子空母についての要請です。
昨年、今年と2年連続、横須賀港で原子力空母ジョージ・ワシントンのメンテナンス作業が大規模に行われ、放射性廃棄物1トンを他の艦船に移して輸送したことが、市民団体の監視行動のなかで明らかになりました。
また同じことが来年行われるのではないのか、情報公開をもとめての要請です。
外務省の担当官はアメリカの代弁者としか思えない回答を繰り返しました。
「危険性はない」「日本とアメリカの信頼関係にもとづいている」等々。
参加したみなさんから「市民の不安にこたえるのが日本の政府の仕事ではないのか」と、何度も声があがりました。
回答に不満を残しつつ、次に向かったのは大田区蒲田。
日本航空(JAL)が12月31日をもって202人を整理解雇する、無法な解雇乱用を許すなと、当事者を支援する団体がつめかけての集会です。
集会の最後は、解雇通知を受け取ったパイロット、客室乗務員のみなさんが次々と登壇。
みなさん、ベテランのJAL社員です。目頭が熱くなってしまいました。
JALは年齢で「希望退職」を募り、会社が目標にした人数に達する退職者をすでに出してしまいました。
それなのに、年齢差別、以前に病気などで休職したことのある人を指名解雇。黒字企業のこの乱暴な解雇を認めたら、日本の雇用ルールは無残に崩されてしまいます。
退職に応じざるを得なかった方々も、その悔しさはどれほどのものか。
何ヶ月も自宅待機を命じられ、ラストフライトもないまま、退職へのねぎらいもはなむけもなにもないまま、誇りをもって長年にわたって働いてきた職場を去る…。
労働者を人間として扱わない、一人ひとりの尊厳を働く誇りを傷つけて何も感じない、そんな経営者が企業を健全に発展させることができるでしょうか。
「会社に正義はひとかけらもありません。正義は私たちにあります!」
マイクを握った副操縦士のりんとした声が会場に響き、満場の拍手が鳴り響きました。
解雇通知を受け取りながら、たたかうみなさんには明るさがあります。
道理と正義はわれにあり、その自信が苦しさや悲壮感をも乗り越える、勇気や希望をわきたたせているのだと感じました。
なんというクリスマスイブ、そして年の瀬なのか。
急を要するたたかいが、これほど次々と展開される年があったでしょうか。
日本の政治・社会のゆきづまりの深刻さを目の当たりにしたような一日でした。
心穏やかにクリスマスを楽しみ、年末年始を過ごすことができない…
そんなことを誰も望んでいないのに。政治の責任の重さを思わずにはいられません。
それでも家に帰れば、クリスマスを楽しみにしている子どもたちがいます。
今年は今日が小中学校の終業式。午前中で学校が終わって、子ども2人はケーキ作りをすることになっていました。
帰宅して冷蔵庫をあけると…
予想以上のすばらしい出来栄えのケーキが鎮座していました!
「すごい!」
スポンジを焼いたのは中学3年生の兄、飾り付けに参加したのは小学5年生の娘。
親ばかのようですが、本当に素敵なケーキで、何枚も写真を撮ってしまいました。
味も甘さが抑えられていて本当においしかった。いつのまにこんなお菓子が作れるようになったのでしょう。
こんなふうに楽しく年の瀬を送るのが、当たり前の生活なのに。
12月31日に解雇されるとしたら、裁判の和解が決裂したまま年を越すことになったら、住む家もなく除夜の鐘を聞いたら…
この複雑な気持ちをどうしたらいいのかと、また今年も胸に鉛を抱えたような年の瀬です。