日本共産党 田村智子
コラム

【10.12.20】長野県へ視察に行ってきました

県知事と子ども医療費無料化で意気投合!

「防寒対策をしっかりしてきてください」と言われていたのに…
長野駅で新幹線をおりると、他党の議員の方々と「寒くないね〜」「コートはいらないですね」と言葉をかわしました。

参議院厚生労働委員会の視察は1日目が長野県、2日目が岐阜県。
私は、他の仕事の関係で1日目だけの参加です。
(なぜか歴史的に、委員長の地元にいくことになるのです。今の厚生労働委員長は長野県在住、出身は岐阜県です。)

厚生労働分野ですから、どの都道府県に行っても、見るべき現場はあります。
長野県では、日本でも屈指の設備と専門性をもつ「県立こども病院」。ぜひ視察したいとかねがね思っていました。

午前中はまず県庁へ。8月に当選したばかりの阿部守一知事とも懇談しました。
長野県の医療・介護・児童虐待のとりくみなど、短時間でしたがなかなか興味深い説明を受けました。

長野県は、一人当たりの医療費総額が低い県、男女ともに平均寿命の長い県として有名です。
そのわけは…
現役で働く高齢者が多い、家族や地域のつながりが大切にされている(山で囲まれた地域という特性もあるかと思います)、歴史的に健康への啓発活動・予防医療がとりくまれてきたこと、などがあげられました。

18年間、長野県でくらした私も思うところは多々あります。
野菜や川魚、山菜、きのこなど、伝統的な日本の食材に恵まれていて、同時に「ごちそう」と言えるような食事は思いつかないのが長野県(だと個人的に思っているのですが)。
これは健康という面からは、非常にすぐれた食生活です。
漬物をふくめ、野菜を食べる量は半端ではありません。
減塩運動も60年代〜70年代にかけて、本当にさかんで、テレビでも食生活についての情報を見ない日はなかったほどです。

各委員からの質問タイム。
「77自治体というのは、市町村合併がすすんだなかでは多いのでは? もっと集約化が可能では?」という質問も飛び出し、「それは地方自治にゆだねるべきでしょう」と、つっこみを入れたくなりました。
「山に囲まれた地域で、地図上ではすぐ隣の町村も実際にはかなり移動が困難」と県からの説明。その通り。

私も、前述の子ども時代の感想も述べつつ、子ども医療費無料化について質問しました。
県の要望項目のトップに「国の制度としてほしい」とあったのです。
窓口無料化にしたとき、国保会計国庫負担金が減額される、この見直しも求めていました。
これは、私たちが長年にわたって国会でとりくんできた課題そのものです。

「長野県では、子どもだけでなく、高齢者の医療費も無料にしている自治体があるかと思います。重症化させずに医療費を総額として抑えるというとりくみとして、私は大切だと思っています。
窓口無料の自治体と、償還払い(いったん病院で支払い、後日役所に届けて返金してもらう)の自治体とでは、割合はどうなりますか? 窓口無料によって減額されている国保会計への国庫負担金はどれくらいですか?」

なんと窓口無料の自治体はないそうです。国保会計が苦しいもとで、国庫負担金まで減額されては…、ということでしょう。
県は、窓口無料にしたときの影響額も計算していました。子ども医療費だけでなく、独自の減免制度をふくめて年間24億円。これは大きい!

高齢者医療費無料については、「自治体のサイズが小さいところでとりくまれている」とのこと。
上からの市町村合併の押し付けに抗している自治体は、住民への社会保障をむしろ前にすすめているのです。

懇談の最後に、県知事からあらためて「子ども医療費無料化をぜひ」と要望されました。
「これだけ自治体に制度が広がっているのですから、これは国でおこなう時期を迎えているのでは」
「お母さんたちの要望が非常に強い。引っ越したら、無料でなくなったなどの声をよく聞く」等々。
これは、運動してきたみなさんに勇気のわくエピソードだと、思わず笑みがこぼれてしまいました。

昼食も懇談しながら。信州サーモンのお刺身がとても美味。
今度、実家に帰省したときはみんなで食べよう!
県の水産研究所で独自に開発した品種だそうです。
長野の名産は、農産物だけではないんだと嬉しくなりました。

午後、バスで松本方面へ。安曇野市の県立こども病院の視察です。
1000gほどで生まれた新生児の集中治療室の中までいれていただきました。
片手の手のひらにのってしまいそうな赤ちゃん。「がんばってね」と小さく声をかけてそばを通りました。

この病院では、看護師も白衣ではなく色柄のついたエプロンをしています。
看護師以外に、保育士さんも24時間常駐。これはすごい!
集中治療室でも、泣き声をあげている赤ちゃんによりそって、やさしくお腹をトントンしてあやしていたのは保育士さんです。
医療的ケアだけではない、乳幼児へのケアが発達には欠かせないからと、病院独自の費用で保育士配置をしているのです。

病棟を視察してからの懇談で、質問しました。
「看護師さんの体制は本当に手厚いと感じました。夜勤は月どれくらいになりますか? 看護師の過重負担で離職者が多いのでは? 看護師確保のために必要だと思われる支援をぜひお聞かせください」

看護師長さんが「よい質問をありがとうございます」と前置きして応えた内容に驚きました。
「夜勤は、月10日〜15日になるかと思います」
1ヶ月の半分が夜勤! これはほとんど家に帰れないままに働いているのと同じです。

若い看護師が多く、妊娠・子育てで夜勤免除となることも一因のようです。
子育てと両立できる体制のためには、国の新たな支援が不可欠だと痛感しました。
病院では、「看護師の育成」に力を入れて、離職を少なくしようと努力しているそうです。研修も看護師・医師・保育士が合同で行なうなど、この病院で働き続けたいという意欲を育てているのです。

「夜勤のとき、保育士がいてくれるだけで、看護師の精神的負担はかなりとりのぞくことができる」とのこと。
人工呼吸器をつけている乳幼児が多いなかで、いわば命を預かる仕事です。
何か変化があったとき、看護師だけでなく、保育士も見守っていることがどれだけ大切か。

そのほか、出産後、子どもが保育器に入り、新生児と接する機会を制限された母親へのケア、心臓病や重度の障害がのこった場合など家庭での生活をどうサポートするか、課題はたくさんあります。
現場から学ぶことのなんと多いことでしょう。

安曇野の山々と、田んぼや畑に囲まれた赤い屋根の病院。
日本の医療制度の質的な向上の一歩を記しているように思えます。
この病院のスタッフの努力にむくいる政策を実現しなければ。