日本共産党 田村智子
コラム

【10.12.15】B型肝炎訴訟 超党派で官邸の中へ

原告団に見送られ「年内和解を」と要請

午前10時過ぎ、首相官邸の向かい側にオレンジの人の列ができていました。
予防接種の注射針の遣いまわしによってB型肝炎ウィルスに感染し、国の責任を問う裁判をたたかってきた原告団代表のみなさんです。

冷え込みが厳しくなるなか、「和解の基本合意を年内に」と切なる思いで、何度も何度も国会を訪ね、議員や政党にはたらきかけ、とうとう超党派の行動に道を切り拓きました。

オレンジの列の前には、自民党、公明党、民主党、みんなの党、社民党の国会議員、そして日本共産党の高橋千鶴子衆院議員と私が一列に並びました。
「これから官邸に行って、年内の合意をと要請してきます」と超党派議員。
「よろしくお願いします」と原告のみなさん。

10時40分、みなさんの拍手に送られて、官邸のなかへと向かいました。
本当は、官邸に踏み込みたいのは原告の方々でしょう。それを送り出すのが私たちであるべきでしょう。

官邸のなかにはマスコミのカメラがずらりと並んでいました。
その前を隊列をくむようにして移動し、1階の広い面談室へ。
大きなテーブルの席に一列に議員が座り、向かいにはいすが一脚。やがて古川副官房長官があらわれ席につきました。

12月22日が国と原告団の和解協議の日。
ここで政府がどんな和解案を提示するか、とくに無症候性キャリアのみなさんをどう扱うかが大きな焦点となってきました。

超党派(前述の党に加えて、国民新党、たちあがれ日本も加わっています)の要請文にも、「早急に無症候性キャリアの方も含めた解決が図られるよう、際断言努力することを強く要請する」と記されています。

この超党派行動が実現するまでには、本当に長く粘り強い原告団の運動がありました。
議員会館の会議室では、何度となく院内集会が行われ、和解協議の問題点が明らかにされました。
政党との懇談も、臨時国会以降2度行われ、「ぜひ超党派で力を貸してほしい」と直接に訴えられました。
こうした一つひとつの行動が、議員が個々に支援も意思を表明するだけでなく、党派の違いを超えて一丸となって支援団になる変化をつくりだしたのです。

副官房長官への要請は短時間で、回答もきわめてあいまいなものでした。
しかし最後には「思いは私も同じです」と言わざるをえませんでした。

官邸から外に出ると「議員のみなさんありがとうございます」、向かいから手を振る原告団。
交差点をわたってみなさんと握手をすると、冷え切った手。思わず両手で握ってこすってあたためてしまいます。

夕方4時半、今度は厚生労働大臣への要請です。
今度は少し時間がかかりました。
「除斥期間20年を過ぎているという問題をどうするか…」と細川大臣。
(民事の訴訟では、被害の原因となる行為があってから20年間を過ぎると、その責任が問われないという規定があるのです)

予防接種によるB型肝炎ウィルスの感染は20年以上前で、そのウィルスによる発症がなければ責任は問われない、という考え方を国が示したのは、和解協議が何回か進んでからのことです。
なんという都合のよい解釈かと、あきれてしまいます。

キャリアのみなさんの苦しみをなかったことになってしまう、そんなことが許されるのか!
国は、ウィルス感染の可能性を国民に周知してきませんでした。
多くの被害者は、自分がキャリアであることを知らずに生きてきて、わかった時には「20年過ぎているから、責任はとれません」で終わり、それはあまりにも非人道的です。

厚生労働大臣への要請が終わって、すっかり暗くなった厚生労働省前へ。
「待つ時間が長いのがうれしかった」と、原告団代表の谷口さん。
涙を浮かべている方が何人もいらっしゃる。
この切羽詰った思いが、どうか政府に届きますように…。

この日、超党派議員は3度にわたって集まりました(メンバーの入れ違いはありましたが)。
その3度目は、厚生労働省内の記者クラブ。今日の行動を記者会見で知らせるためです。

記者からは「超党派での要請にいたった経緯は?」「22日の和解協議以降は、どのような動きになるのか?」などの質問。
今後の動きについての高橋千鶴子さんの応答には、これまでの運動の経緯がはっきり示されました。
「政府案を原告のみなさんがどう受け止めるかが第一です。私たちは原告が納得のいく基本合意をと要請したわけで、あくまで主人公は原告団。納得いかない内容であれば、その後の行動を検討することになるでしょう」

これから22日まで、原告団のみなさんは祈るような気持ちで時が過ぎるのを待つことになるでしょう。
もちろん、じっとしているわけではありません。
原告団から渡されたペーパーには、宣伝計画がびっしり。
最後までできることは何でもやりぬく、病気を抱えながらのこのパワー。
私たちも行動を起こした以上、このみなさんとともに歩まなければなりません。