コラム
【10.12.04】保育・子育ての願いを政党に届けるシンポ
深刻な実態に国会議員から思わぬ発言も!
蒲田駅から徒歩数分の大田区消費生活センター。大会議室にどれくらい集まっているかと、大いに期待して、同時にちょっと心配しながら向かいました。
「保育園の親と子どもの願いをとどける集い」――全国の保育所の父母会などがゆるやかに実行委員会をつくって、とにかく政党を呼んで、保護者や現場の声を聞いてほしい、これからの保育制度をどうするか政策を聞きたい、そういう集まりだと聞いていました。
参加者は、ネットを通じての呼びかけなので「どれくらい集まるかは、当日になってみないと…」ということもお聞きしていました。
午後2時、用意された椅子はほぼ満席。ゼロ歳の赤ちゃんをだっこしたお母さんの姿も。
70人近い参加者のようです。
政党からの参加は、自民党・丸川珠代参院議員、公明党・高木美智代衆議院、社民党・小林わかばさん(党の政策審議会事務局次長)、そして共産党から私。
残念ながら与党の民主党は出席できないとのこと。議員がいっぱいいるんだから誰かなんとかならないのか、と思ってしまいます。
最初は政党からの発言。民主党から「子ども子育て新システム」の説明があれば、それをめぐる議論にもなったか、あるいは「検討中」ばかりで具体的な話にならないか…。
どんな発言をしようかを昨日から考えていましたが(臨時国会最終日の波乱で、頭の中は相当疲れていましたが…)、民主党の政策の土俵にはのらないことにしました。
私が2人の子どもを足掛け10年、無認可・認証・認可保育所に通わせた経験もふまえて、まず保育所の役割を一言。
「子どもの健やかで豊かな育ちを保障し、親が地域に子育ての絆をつくる場」「子どもにとっては、もう一つのお家があるのと同じ」
お母さんが働いて子どもを見る人がいないから、仕方なく保育所があるのではない!と、実感込めて話しました。
その保育所に入れない待機児童が増え続けているのは、保育所をつくってこなかったから。
保育所の箇所数をみれば、1960年代の10年間は4000箇所以上増設、70年代は8000箇所近い増設、ところが90年代は500箇所以上減少!
増設に本気でとりくまず詰め込んだために起きている深刻な問題。
認可保育所の増設以外に、解決の道はないことを強調しました。
会場からの発言は、保育制度の規制緩和で、どれほど深刻な事態が広がっているかを明らかにするものでした。
利益を目的にした企業や個人が、認可外保育所を経営したために起きた問題。
「保育士がコロコロ変わる」ことが、保護者が「おかしいのでは?」と気づくきっかけのようです。
偽装パスポートによる不法滞在の外国人が「英語で保育」を売りに保育所経営をしていた。
電気施設会社が保育所経営にのりだし、自治体からの補助金を流用。
こうした無責任なやり方は子どもたちに大きな犠牲を強いることになる、生々しい発言は聞いていてつらくなってきます。
行政主導の幼保一元の問題も、現場からの告発でわかりました。
幼稚園と保育園を一つにして定員も増える。ところが、幼稚園の子どものなかにはお弁当の子どももいる、保育園は給食。
食事の管理、帰りの時間の管理だけでも職員の負担がふえ、保育の質が明らかに低下しているという指摘。
3歳児が、幼稚園の子どもたちが3時頃に帰るのをみて「ぼくも早く帰る組になりたい」と笑顔で話す姿に、職員は「3歳から、このように家庭環境の違いを認識させる保育をしていいのか」と真剣に悩む姿。
新宿区のお母さんは、待機児童対策として2年限定でつくられた区立保育所に、やっと子どもを入所させた。
来年4月は、子どもたちが現に通っているのに「期限がきたから」とこの保育所を廃止するという。子どもも保育所に慣れて楽しく通っているのに、なぜ足りない保育所をわざわざつぶすのか。
自民・公明の議員からも「深刻な実態はなんとかしなければ」との発言。
私は、「規制緩和は間違いだった。利益を目的とする企業が参入できないような規制が必要」「公立保育所への運営交付金制度をなくしたことが保育所つぶしの大きな要因になっている」と指摘。
その議論のなかで会場からも「なぜ公立保育所を減らすのか」と厳しい声が起こりました。
自民・公明党からは「国が公立をつぶせと言っているのではない」との発言。
そしてついに「運営交付金を元に戻しましょう」と、なんとその場では参加議員が一致したのです!
これは予想外の展開でした。
事実こそ政治を動かす力だと実感する一こま。もちろん、ここでの発言がそのまま政党の政策になるわけではありませんが、参加者のみなさんが、ある意味「言質をとった」のです。
「子ども子育て新システム」によって何がもたらされるのか、狙いはなにかということも、参加者から積極的な発言が相次ぎました。
来年の通常国会にどんな法案が出されるのか、これから政府のなかで検討が進むことになりますが、その問題点をどんどん現実に照らして明らかにしなければと思っています。
子どもの成長のために国家予算を遣うのは当然のこと。
これは国民的な一致点でしょう。保育の分野で大きな運動や、政治の転換をつくり出すチャンスです。
「新システムって何?」という、保護者の方々とも語り合う機会を持ちたいものです。
企画の最後は、子どもたちから私たち1人ひとりへのプレゼント。
2時から5時過ぎまでの長い時間、保育室で待っていてくれたようです。
かわいいクリスマスツリーとキャンドルに思わず笑みがこぼれました。
さて、超党派で深刻な現場を視察しようという提案(自民党の丸川議員の発言です)まであったのですから、これから何ができるか、実に楽しみになってきました。