日本共産党 田村智子
コラム

【10.11.28】第1回難病・慢性疾患全国フォーラムに参加

医療費の負担さえとりのぞけない政治なんて!

350人が集まった初めての全国フォーラム。
「すべての患者・障害者・高齢者が安心して暮らせる社会を」とのスローガン。
難病への施策を求めるだけでない運動の大きさを感じます。

第2部の「患者・家族の訴え」、第3部の政党シンポジウムに参加しました。

シンポジウムに参加したのは、自民党・菅原一秀代議士、公明党・江田康幸代議士、民主党は谷博之参院議員(遅れたために玉木朝子代議士も発言)、そして私。
駆け出しの議員である私が、難病対策の問題点、社会保障の在り方を話す、緊張しました。
時間の許す限り、現状や問題点を学びました。

治療法がまだみつかっていない疾病、患者のみなさんが何よりも切望しているのは、原因の究明と治療薬の開発です。
国の研究予算は、自民・公明政権時代に、25億円の規模から100億円に一気に拡大しました。患者のみなさんの運動の成果です。
ところが来年度は予算減額のおそれがある、これは許すわけにいきません。
民主党の議員ふくめて、「問題あり」と意見は一致したのですから、結果を出さなければなりません。

薬の開発は、メーカー任せでいいのか、という問題も指摘しました。
患者の方の訴えでも、疾病事例が少ないと、薬品メーカーにとっては利益にならないために開発にとりくむことが困難、という告発がありました。
企業の利益とは別の次元での開発が求められている、国が一歩ふみこんで施策をもつ必要があるのです。

現状で患者のみなさんを苦しめているのは医療費負担。
「3割負担という政策が、多くの方々を限界まで苦しめている」と話すと、大きくうなずく方が何人も。
難病として医療費助成を受けるのは、国が特定疾患として指定し、研究に協力してもらっているから補助する、という制度の枠組み。
これではほとんどの難治性の疾患(5000〜7000といわれています)の圧倒的多数ははじかれます。

「医療保険の枠組みで医療費助成を行うべき」
他党からも同じ趣旨の発言がありました。有言実行だぞ!と胸のうちでは叫んでいました。

問題はやはり財源です。自民党の議員は「ゆくゆくは消費税増税」と主張。
私は「税収を増やす必要があるのはその通り。しかし、現状でも消費税は毎年増え続けている。減っているのは所得税、これはワーキングプアをつくりだし、税の担い手を減らしていることが問題。そして法人税。税率引き下げで1989年と比べても3分の1近くに落ち込んでいる。大企業にふさわしい社会の担い手としての責任を求めたい」
話し終えると拍手の音が聞こえて、おもわずその方向をみて笑顔に。

経済的に相当なご苦労をされておられるみなさんです。
医療費助成が消費税増税で消えてしまいかねないというのが実感ではないでしょうか。

実態を学ぶなかでは、胸がつまるような事件がいくつも起きていることもわかりました。
慢性骨髄性白血病、20歳までは小児特定疾患として医療費助成があります。
ところが20歳になったとたんに助成はなくなってしまうのです。
薬を飲み続ければ延命できる、しかし3か月に一回の処方で20数万円ともいわれる高額薬価を払えない…。
高額医療費への助成制度もあまりにおそまつで、月8万円までは自己負担です。

「大人になるまで生きていたくない」という胸のつぶれるような訴えもあるといいます。
病気とたたかう子どもに「大人になりたくない」と言わせるとは!

ドイツでは医療費の上限を(難病だけでなく)年収の2%と定め、特定慢性疾患については年収の1%としています。
こうした制度から学ぶ時ではないのか。

政党からの発言のあと、ウェルナー症候群の患者さん本人から訴えがありました。
白髪の男性。ふりしぼるような細く高い声で、でも笑顔で話し始めました。
お話を伺っていて、この方が、本当は私と同じくらいの年齢なのではと気がつきました。
遺伝子異常の疾病で、20歳を過ぎてから症状が現れる、早老性を特徴とする疾病。
手足の壊死もすすみ、両脚切断、声帯が委縮し発声も困難に。
淡々と発言される姿に、私の方が感情を抑えるのが難しい。
どれほどの絶望や苦しみとたたかってこられたのか…。

政党のみなさんから最後に一言と言われて、政策で話し足りなかったことを言うつもりでしたが、口をついたのは違う言葉でした。

「医療費負担をどうするかを、話し合わなければならないというのは、なんという政治の貧困なのかと怒りがこみあげています。」

「本当ならば、みなさんの自己実現、就労の支援や教育の支援はどうするか、日々の暮らしも文化的な、明日への希望や生きがいを見いだせるようにどう支援するか、それを話し合わなければならないはず。最低限の責任を果たすために、みなさんと力を合わせてがんばります」

シンポジウムが終わり、何人かの方々とあいさつを交わしていると、「よ!」と懐かしい声。
大学時代のH先輩でした。お会いするのは何年ぶりでしょう。
末端肥大症という難病を発症したことは聞いていました。
顔つきなどが変わってしまう病気だとも。細面だった輪郭は変わっていましたが、まぎれもないHさんの顔。
「会えてよかった!」、手も足も大きくなっていました。その手をしっかり握りました。患者会をつくってがんばっていると聞いていましたから、一緒に運動できることが本当にうれしい!

そして帰路。会場のオリンピックセンターの門に向かう階段で、後方から若い男性2人の会話が聞こえてきました。製薬メーカーの社員のようです。
「政党の人っていうのは、訓練されているのか、話すのがうまいね」
「あの共産党の女の人は初めて見たけど、うまいなぁって思いましたよ」

耳は後方にダンボ状態。振り向かずにそのまま歩きました。
いくつか感想を聞いているうちに財源論に。
「でも、法人税のひきあげは無理なんじゃない?」
「もっと金を出せって言われているみたいだったね…」

う〜ん、時間が短いということもあるけれど、財源論は一筋縄ではいかないと実感。
製薬メーカーの場合、確かに新薬開発との関係もあるから、単純ではないのかもしれないぁと思ったり。
法人税を減税しても、役員報酬と株主への配当金しか増えないんだけどなぁと思ったり。

来年の通常国会では、社会保障の在り方が本当に問われることになります。
財源論、日本の社会の在り方を問うような、国民的な議論を起こさなければなりません。
どうやって…。対話演説もまたやりたい! 赤旗でも伝えてほしい。国会でももっと論戦したい。立場の違う方々と、どんどん語り合わなければ!