日本共産党 田村智子
コラム

【10.10.05】資生堂の鎌倉工場を視察

ものづくりの現場で率直な意見交換も

 
子どもの頃、母親がつかっていた化粧品は資生堂。その影響でしょうか、私も初めて買った基礎化粧品、ベーシックなメイク用品は資生堂だったと記憶しています。
大学1年生の12月、早稲田大学混声合唱団の定期演奏会のため、お店で使い方まで教えてもらっての買い物でした。

そんなことを思い出しながら、資生堂の工場に足を踏み入れました。
この視察と意見交換を申し入れたのは、高橋千鶴子衆院議員です。
資生堂鎌倉工場の口紅製造ラインで働いていた、請負会社アンフィニの社員が雇い止めになった問題を国会でとりあげた経過もありました。

説明を受けたうえで白い上着、白い帽子、靴にもカバーという「工場見学」グッズに身を包み、製造現場をガラス越しに見てまわりました。
私たちの関心の的は、資生堂の直接雇用の労働者と、請負会社の労働者の仕事がどう違うのか、ということです。

基礎化粧品の製造ライン。広いフロアに8本のラインがあったでしょうか。
それぞれのラインが異なる商品を製造しているとのこと。
働いている人の服装は同じに見えますが、このなかに請け負い会社の製造ラインがあるというのです。
「どれが請負のラインですか?」「ライン番号の掲示のところに、会社の名前が書いてあるところです」
目をこらしてよくみると、ラインの責任者の名前を掲示するホワイトボードに会社名が書いてあるところがありました。

資生堂のなかに違う会社が入って、資生堂からの発注を受けて独自の仕事をしている、というのです。
それ自体が不可解ですが、日本の大手製造企業では当たり前の光景になっているのです。

全く別の会社が、独自の経営方針や製造計画に基づいて、発注された仕事をしているというのが建前です。
高橋議員が質問。「電気代はどうしているのですか?」
「按分で負担しています」という説明。どうやって按分するんだ?、素朴な疑問がわいてきます。

「一日にどれだけ、何を製造するか、請負会社が決めているのですか?」
次々に商品が流れていく様子をみながら私も質問。
「1週間でこれだけの製品をつくれますか、と相談して発注します。一日にどれだけを製造するかは、請負会社の判断です」

この鎌倉工場だけで2382品種の化粧品が製造されているといいます。
ラインは62ラインですから、一つのラインで機械や原材料を切り替えて、何種類もの製品がつくられているのです。一日5回くらい製品切り替えを行うのも日常のこと。
請負会社の労働者が自分の判断で切り替えをしているというのです。

視察のあとの意見交換では、アンフィニの労働者については裁判で係争中なので触れることはできないという前提でのやりとりになりました。
不況のもとで売り上げが落ちているという説明に、同行した大森猛前衆院議員(党国会議員団南関東ブロック所長)が「それでも経常利益は増えていますよね」と鋭い指摘。
売り上げ減も一つの理由に、直接雇用の労働者は3年前より100人以上減っています。

「同じ工場のフロアで、別の会社の人が働いているというのは、いろいろと面倒なこと、複雑なことが生じるのではないのか。コスト削減という以外に、ラインを業務委託することに利点があるのか。あるなら率直に教えてほしい」
この際と、率直に質問をぶつけてみました。「いろいろ利点はあります。新しい技術を受け入れることにもなる」との説明でしたが、一方で、「請負会社には簡単な作業のラインを委託している」と言うのですから、なんだか矛盾します。

高橋議員もまた、「資生堂は就職希望ベスト3に、毎年のように入っている企業。魅力ある企業にふさわしく、雇用の責任も果たしてほしい」と率直な意見を伝えました。
ものづくりの現場で、私たちの質問に丁寧に、数字も隠さずに示してくれた、その誠意は伝わりました。
同じ誠実さをもって、現場で働く方々に向き合ってほしい、切にそう思いました。