コラム
【10.09.28】山椒魚のすむ里山が壊される?!
稲城市の南山を市民のみなさんと視察
午後3時前、よみうりランドの入口につきました。朝からの豪雨がやみ、雲の切れ間に青空が見える――よかった! 里山の視察で雨に降られたら大変なことです。
東京の稲城市と神奈川の川崎市の境、南山という里山があります。
区画整理事業として大規模にくずされ、谷間や沢が埋められ、ニュータウンに造り変えられようとしているのです。
私も前々から、ぜひ現地視察をしたいと思っていました。
急に決まった日程にもかかわらず、稲城市、川崎市から「一緒に視察をしたい」と、十数人の方々が集まってくださいました。
ウオーキングシューズに雨にぬれても大丈夫そうな服。気合が入っています。
都道からわずか20メートルほど離れただけで、うっそうとした雑木林に囲まれた、小さな川があるのです。
雨あがりで水は茶色くにごっていますが、絶滅危惧種に指定されたトウキョウサンショウウオの生息地だといいます。
そして雑木林には、オオタカの巣もみられたとか。
「オオタカもトウキョウサンショウウオも別の場所に移ることを条件に、東京都は事業を認可したのです」
「移るって、引っ越してくださいとお願いするんですか?」(私)
「オオタカの巣に工事用の照明があたって、耐えかねて引っ越して行ったようです」
それは「追い出し」で、貴重な営巣地を奪ったのと同じです。
もっと驚いたのはトウキョウサンショウウオに対する仕打ちです。
「別の場所にというのは、どこの川に引越しさせたのですか?」(私)
「卵を集めて、人口の小さなプールのような所に移したのです」
「えっ! 川ではないんですか? それで生きることはできるんですか?」
「昨年12月には卵からかえった姿を確認しましたが…」
「今年の猛暑でどうなったかな。水の流れもないから…」
絶句してしまいました。
説明しながら、市民運動に関わってこられた方々もあらためて怒りに駆られたようです。
「こういう水槽です」
携帯カメラで撮影した画像をみせられ、さらにショックをうけました。
大きめの金魚すくいの水槽のような、四角い「いけす」です。
こんなことが許されるのか!
縄文時代の遺跡が次々に発見されたというその場所は、見るも無残な姿に。
ここに府中市と稲城市の共同墓地ができ、稲城市の小学校が建設される予定だと岡田まなぶ市議が説明してくれました。
稲城市はマンション建設などで人口が増え、学校がマンモス化しています。
学校増築は、すぐに街中に必要なのに、長い時間と巨額の費用をかけてわざわざ現在の住宅地から離れた場所に、わざわざ里山を崩して、建設する。
市民から批判の声があがるのは当然です。
視察で歩いた道端にも、カラスウリやアケビが実をつけていました。
喫茶店でコーヒーをいただきながら、みなさんと懇談。
このお店は、道路をはさんで里山をみあげる位置にあります。
マスターは当然、里山を守ってほしいという立場。
お店を貸しきるようになった懇談にも快く協力していただきました。
同じく、目の前の里山が崩されるという位置にあるマンションに住む方。
「大きな事業だから、一体この地域がどうなるのかを説明してほしいと、稲城市に言っても、区画整理事業組合に言っても、説明会をひらいてくれない」
これにも驚きました。区画整理、都道建設(現在のヘアピンカーブの道を整備するといいながら、全く別の構造のループ状の道路を造る)、墓地や小学校の建設と、事業が複雑にからみあい、また反対意見を受け付けたくないとの思惑もからみ、説明会はただの一度も開かれていないようです。
トウキョウサンショウウオの生息する川は、普段は小さい流れですが、過去何度も大雨で里山からの伏流があふれ、大きな水害を起こしています。
そこで国が管理する保安林がつくられ、開発ができないようになっています。
保安林指定の解除を稲城市と区画整理事業組合は求めているとのこと。
保安林の役割がなくなったと言えるのか、水害と隣り合わせの地域住民に一言も説明がないというのは、あまりにも異常です。
生物多様性元年といわれる2010年。
私にもできることがあるはず。
物言えぬ生物・植物・樹木、大いに物を言っている地域住民のみなさん、
双方の代弁者としての仕事を今、真剣に考えています。