コラム
【09.07.24】特別養護老人ホームを一人で見学
介護の現場をもっと知りたい
Wさんと知り合ったのは4月のはじめだったでしょうか。
街頭演説を聞いていた彼女に声かけると、パワハラ・解雇にあって、精神的にずたずたになっていることがわかり、その場で30分以上、彼女の話を聞いたことが始まりでした。
彼女の労働相談は事態が複雑になっていて、解決の糸口がみえないものでした。
それでも「誰も私の話を聞いてくれない」どんづまりの状態だった彼女にとって、
ひたすら話を聞くしかできなかった私が、精神的には「救い」になったのだと言います。
都議選では、葛飾区外から交通費も自分もちで、毎日、街頭宣伝を手伝うためにかけつけてくれました。
日本共産党のことも、政治のことも、まったく無関係だったWさん。
それだけに感覚も新鮮で、私も学ぶことがたくさんありました。
選挙が終わって、そのWさんが自分の友人を紹介してくれました。
通称「やっくん」、脳内出血で倒れて、半身にマヒが残り、障害者自立支援法にもとづいてデイサービスや居宅介護を利用していています。
病気後、自由のきかない身体で自暴自棄になってしまったり、性格が変わったりしたそうです。
デイサービスに行っても、リハビリに気力がわかず、筋肉のこわばりが進行しているのではという危惧もあるそうです。
「一度、リハビリの様子をみてみたいね」とWさんに話すと、すぐ「やっくん」が利用している施設に連絡をいれてくれました。
前置きが長くなりました。そういう次第で、一人で介護施設の「見学」に行ってきたのです。
特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービスを同じ建物で行なっている施設。
所在地の番地をたよりに、少し迷いながらたどりつきました。
障害者のみなさんのリハビリ、大小のゴムボールを投げるゲームを通じて、身体を動かそうというメニューのようでした。
10人ほどの利用者さんのなかに「やっくん」の後姿をみつけました。
「声をかけていいですか?」
「それは遠慮してください」
残念。しばらく様子をうかがっていましたが、そこに一緒にいるけれど、積極的に参加はしていないことがわかります。
医療としてのリハビリを半年でうちきってしまう、この医療改悪がどれだけ罪深いものか。
医療のリハビリは、個々の患者さんに、ほぼマンツーマンで機能回復訓練を行なうけれど、
デイサービスでは職員の人数も限られていて、個々人にあったやり方で、個々人のペースでというわけにはいかないのでしょう。
機能回復のためのメニュー・計画は個々人のものをつくる、そして3ヶ月ごとに到達を記入する、実務は山のようにあるそうです。
「計画どおりにはなかなかいかない、そうすると、何が足りないのか分析が必要」
国の方針が、どれだけ現実にあっていないか、説明を聞きながら痛感させられます。
特養ホームの階も見学しました。
認知症の方の食事を介助する職員さん。私を案内してくれた職員さんが、利用者のお一人に声をかけました。
「体の調子はどうですか? お食事はおいしいですか?」
返事はありません。それでも話しかけたことで視線があいました。
「もっと声をかけながら、食事をすすめるといいのですが、一人で何人もの方の食事を一度に担当すると、誤嚥(ごえん)がないようにするので精一杯なんです」
後から、そんな説明もうけました。
認知症の方で入所希望者はもっといるそうです。
しかし、重度の方だけ受け入れていたのでは施設はもたない。
違う階では、ご自分で食事ができる方々が入居しているのです。
施設内をまわったあとで最後に「利用料はどれくらい必要なのですか?」と聞いてみました。
「収入によって異なるのですが、それでも、月10万円ぐらいの年金があって、家族の方の仕送りがいくらかなければ入居は難しいですね」とのこと。
ため息がでます。
これまでも介護施設を「視察」したことは何度かありました。
今回、一人で、個人として見学したことで、発見もありました。
職員の方がフランクに案内してくれたこともそうです。
また、この施設の存在が地域の方にあまり知られていないこともわかって驚きました。
最寄の駅から数分の位置ですが、駅周辺の人に聞いても施設の名前を知らないし、場所も知らないのです。
いざ自分が、家族が利用するときでないと存在に気づかないのでしょう。
介護施設を本気で地域のなかに位置づけていない、今日の行政の実態を見る思いです。
私ももっと現場のことをありのままに知っていきたい。
それを政治につなげたい。
多くのことを考えさせられた見学でした。