コラム
【09.03.29】ドヤの簡易宿泊所に行きました
現場を目で見ることが相談活動の力
台東区で一日行動しました。
桜が満開になるはずだった週末、訪問した先でも花見の話題がちらほら。
寒さの中、隅田川沿いも上野公園も、大変な人だかりだったとか。
「桜はどうでした?」「さあ…」――花よりなんとやら、でしょうか。
私の方は、地域の党支部のみなさんと花見とは無縁の訪問活動。
それでも沿道の桜や花カイドウ、ユキヤナギが、目を楽しませてくれました。
下町は、庭といえばお寺さんの立派な庭。
民家では、軒先の鉢植えがところ狭しと並んでいます。
ガーデニングというより園芸。この庶民感覚が私好みです。
町をまわっているうちに、「ビジネスホテル」「旅館」の看板が並ぶ地域へ。
いわゆる「ドヤ街」です。
「ドヤ」という言葉は、今年に入ってから何度も耳にし、また口にしています。
街頭相談で出会った、仕事を失い住む場所を失った方々が仮の住まいとしているからです。
「そういえばH君は、この辺の宿泊所にいるでしょう」と区議の杉山光男さん。
最近、相談活動のことで情報をやりとりしている一人です。
H君、私のHPで何度か登場している「ネット難民」です。
彼は、何度ものやりとりのなかで、生活保護を一人で(同席なしで)申請。
社会福祉事務所からは、ホームレス支援の緊急宿泊施設に入ることを何度もすすめられながら、「今も働いているのに、働くことを許さない施設には入れない」という主張を貫いている真っ最中なのです。
この間の相談活動で、住まいを失った人がすぐにアパートに入居することがとても困難だとわかってきました。
その困難をのりこえてみようと、Hさんは挑み続けているのです。
生活保護制度では、残念ながら不正の問題も生じています。
居住費用、転宅費用の持ち逃げが起きてしまうことも。
それを防ぐためなのでしょうか、Hさんに告げられたのは「宿泊証明をとること」。
簡易宿泊所というのは特別な「旅館」です。
居住地として住民票登録ができるし、宿泊証明という公的な文書を出すこともできるのです。
突然でしたが、Hさんの部屋を訪ねることに。
玄関は昔の小さな旅館風(民宿のイメージでしょうか)。
階段を上がったところで、ちょうど廊下にいたHさんと目が会いました。
「今さっき起きたところなんです」とHさん。
「突然ごめんなさい。たまたま通りかかって」と私。
あわてて部屋を片付けたHさんが、私の社会勉強のために部屋に通してくれました。
杉山さんと二人、恐縮しながら中をみせてもらいました。
4畳半、押入れや洋服ダンスが置いてあり、あとは布団。
「2年ぶりに布団で寝ました」
熟睡したのも2年ぶりくらいなのかもしれません。
「ダニとか出ていない?」「ええ、大丈夫なようです」
角部屋なので窓も二箇所。窓の外枠には避難用の縄もありました。
ダニに悩まされる劣悪な宿泊所もあると聞いていただけに、ほっとしました。
これまで7駅のコインロッカーに分散させていた自分の荷物を全部ひきあげてきたそうです。
「コインロッカー代だけで一日2100円でしたから」
「ここの宿泊代と同じだね」と杉山さん。
数分の訪問でしたが、久しぶりに会ったHさんの表情はおだやかでした。
それにしても宿代をとりながらダニが出るような施設をそのままにしていていいのか、
訪問の前後で杉山さんと話題になりました。
「旅館という扱いだから、保健所を動かせるかな」
閉鎖ということにならないように、しかし、最低限の衛生上の問題は解決できるように、どうしたらいいか。
現場を訪ねれば知恵がわきます。
3月で「派遣切り」に合う人が大変な規模に達するといわれているだけに、
「仕事を奪わせない」ことと「人間らしい寝食を保障する」ことが、本気で政治に求められています。